第28話

コトリ、と置かれたブラックコーヒー。



「優。綾ちゃんのことあんまり…」


「奥山」



なにか言いかけた奥山さんを遮る低い声。



聞いた事のないその声音に驚き顔を上げるけど、



「…さん、コーヒーありがと」



さっきの低い声は聞き間違い…?



目の前には笑顔の優くんがいて、チラリと私を見た奥山さんは、どこかぎこちなく微笑んで戻って行ってしまう。




「どうしたの綾ちゃん?飲む?」



苦いブラックコーヒーに口をつけ、にこりと笑う優くんに、私は首を横に振った。



「そうだった、綾ちゃんの味覚はお子様だったね」


「な!ま、また言った…!失礼だよ…」


「はは、ごめんごめん」



カップを置いた優くんはまた頬杖をつく。



「さっきの話の続きだけどさ」


「あ、うん…」


「綾ちゃん男慣れしてないよね?笑ったりしないから、教えて?」

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