第22話

店内を見渡すと、今は私以外にお客さんはいないみたいで、見上げた奥山さんは少しいいかな?と首を傾げている。




「どうしました…?」


「いや…。綾ちゃんは、さっき話してた奴が誰か知ってるのかな?」



伺うような視線。


きっと自分の知り合いと私が会話してたことが不思議なんだ。



「優くん、ですよね」


「うん。そう。そうなんだけど…。苗字は聞いた?」


「あ、伴城って」



私がそう告げれば、奥山さんは目を見開いて固まってしまった。あいつ本名を…なんて独り言が小さく聞こえた気がする。



「え、待って。綾ちゃんそれ聞いて…」



うわっ、と口元を押さえた奥山さんはいつもと様子が違う。



「いや、いいんだ。知らないならその方が」


「え?え?」



ひとりでに進んでいく話の意味がわからなくて声をかけようとした時に、新しいお客さんが入ってきて、じゃあ、と奥山さんはそちらへ行ってしまった。



「あ、奥……」



なんの事だったのか聞きたいけど、やや強引に会話を打ち切られたので、もう一度その話を聞きにいく勇気はない。

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