第21話

私が好んで読む小説は基本的にファンタジーなものが多い。不思議の国で!とか、魔法を使って!という内容のものは、大人になってからはなかなか趣味の合う人がいなかった。




「ファンタジー系、好きなんですか?」


「……興味はあるよ。お勧めの本があれば貸して欲しいなって」


「え!わ、私で良ければっ」




ニコリと笑う彼に、嬉しくなった私は何度も頷いた。




「明日楽しみにしてる」


「は、はい…」




軽く手を振り席を立った彼はカウンターに座る友達に声をかけ、奥山さんと4人で少し会話をしてすぐお店を後にした。



あれ、お会計は?と一瞬思ったけど、知り合いっぽい感じだったので席で済ませたのだろうと考え、私の頭の中はすぐに切り替わる。




明日はなんの本を持ってこようかなと、頭の中はそれでいっぱい。



興味があるって言い方だったから、きっと彼はまだファンタジー小説を読んだことがないのかな?



もし気に入ってもらえれば趣味を共有する人ができる。その事実が嬉しくて頬が緩む。





「綾ちゃん、」




少し浮かれてケーキを口にしていると、ぎこちなく笑った奥山さんが私を呼んだ。

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