第10話

拒否は受け付けないからなー、と言って先を行く永瀬くんを慌てて追いかける。



永瀬くんとの付き合いは長いけど、2人でご飯なんて行ったことがない。…というか、男の人と2人でということ自体初めてでなんだか緊張する。



「今からご飯行くなら、永瀬くん、同期会は行かなくていいの…?」


「なに、春田は同期会行きたいの?」


「ち、違うよ、私じゃなくて」


「俺も行かないの。今日はいつものお礼と思って俺に付き合えよな」



いつも助けてるだろ?と意地悪く笑う永瀬くんにハッとして、コクリと頷いた。



「す、好きなもの食べてね!」


「奢ってくれるつもりなの?」


「うんっ!お礼…」


「ははっ。真面目か。春田に奢られるほど落ちぶれてないから、俺」



あまりにもニヤニヤするから言い方酷い…と軽く睨んだのにスルーされ、会社を出てタクシーを拾った永瀬くんは、この町で一番大きい繁華街の場所を運転手に告げた。



そこは、私があまり立ち寄らない人の多い場所だ。



キラキラと輝くネオンの中には、美味しいと評判の居酒屋やお洒落なBARもあれば、前を通るのが少し怖いよくわからないお店だってある。



昼間は学生も居るけど、夜は雰囲気が変わるので私にとっては少し足を踏み入れにくい。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る