第9話

「あー、俺行くのやめたんだわ同期会」


「そうなんだ…。永瀬くん忙しいから…」



営業成績が高い永瀬くんは任せられる仕事も多いし、取引先だって殆どが大口だ。



会社に戻ってきたってことは、何か資料をまとめにきたのだろう。



幸い、私の仕事は終わる目処がついたので、残りは月曜にやっても問題ない。



「私もう終わったの。できることがあれば、お手伝いするよ?」


「え?」



永瀬くんは一瞬キョトンとした顔をして、すぐ笑顔になった。



「俺も急ぎの仕事はないよ。ちょっと荷物置きにきただけ。ありがとな」


「あ、そ、そうなんだ…全然…」



勘違いしたことが恥ずかしく、デスクを片付けるフリして顔を逸らすと、永瀬くんがこちらに歩いてくるのが視野で見えた。



「春田はもう帰る?」


「あ、うん」


「じゃあ、2人で食べに行かねぇ?」


「…ご飯?」


「それ以外に何があんの?」



私の返しに笑い出した永瀬くんは、デスクに置いていた私のバッグをさらっていく。

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