第14話 藍沢瑠璃②

 七海クンに偽彼氏を提案してみたが、残念ながら断られてしまった。


 意外だったのが、七海クンは私が思っていたよりもかなりしっかりと自分の恋愛観を持っていたことだ。


 飄々としているところもあるのに恋人を作っていないのは不思議に思っていたが、彼と会話することでその理由が垣間見えた気がする。


 彼の言っていたことは恋愛経験のない私には難しい話だった。


 たしかに正論であるような内容だったのだが、実を言うと私の中であまり腑に落ちておらず、感情的に理解するほどまでには至らなかった。


 しかし彼はこれまで恋愛経験がないというのは噂で聞いていたのだが、彼はあんな価値観をどこでどうやって育んだのか、というのは不思議ではあったが。


 いずれにせよ七海クンに偽彼氏を断られてしまっては、他に頼めそうな男子はいない。


 だからしばらくは現状維持で、告白されたらそのまま断るような姿勢でいようと思った。


 ——のだが。


「藍沢、やっぱりおれ、お前のこと諦めきれないわ。どうしたらおれと付き合ってもらえる?」


 以前交際を断った男子から、しつこく迫られるようになってしまったのだ。


 相手のことを考えずに迫ってくるような姿勢がそもそも無理だし、どうあっても付き合えないと伝えても、それでも折れてくれない。


 しかも悪いことに、こんな感じで再度迫ってくる男子は一人ではなかった。


 教室でしつこく話しかけてきたり、メッセージで頻繁に連絡してきたり、放課後に待ち伏せされていたり。


 どうやら男子たちの間で、誰が私を攻略するかなどと勝手に盛り上がっているらしい。これから受験勉強が本格化するということで、時期的にラストチャンスだと考えられているのかもしれない。


 これにはさすがの私も参ってしまった。


 生徒会長という立場がある関係上、強引に断ってしまった場合のダメージがあると思うと、なかなかそのような手段に踏み切れずにいる。


 私一人で済む話ならいいのだが、他の生徒会メンバーにまで悪影響が出てしまっては困る。


 大人たちに相談する手もあっただろうが、そうするには現時点では大袈裟に思えたし、何よりこのような恋愛沙汰なんぞで事を大きくしたくない。


 生徒会の仕事や勉強などならしっかりできる自信はあるのに、恋愛のことになるとどうにも弱い。


 男子たちの対応に追われてストレスがどんどん溜まっていく。


 この時にはもう、七海クンに言われたことなど完全に失念してしまっていた。


 だから私は、友人たちにまた相談してみることにしたのだ。


「——というわけなんだ。私はどうすればいいだろうか……」


「あー、偽彼氏断られちゃったんだねー」


「じゃあもう他の人に偽彼氏頼むしかなくない?」


「いや、私の中で頼めそうな人がもういなくて……」


「それならテキトーに告ってきたヤツの中から偽彼氏見繕うとか?」


「相手に好意があってしまっては偽彼氏にはなりえないだろう。だから困ってるんだ……」


「なるほどー。それはたしかにね」


「じゃあ逆に、全く関わりの無い人にお願いすれば?それなら瑠璃に好意なんて持ってないだろうし」


「なるほど、それは一理あるが……そんな都合のいい人いるだろうか?」


「——あ、一人いるじゃん。隣のクラスに」


「あー、あいつ?」


「ん?誰のことだ?」


「あれだよ、隣のクラスの陰キャくん。ほら、誰とも関わらずに休み時間中はずっとラノベとか読んでるやつ」


「あぁ、彼のことか。一応顔は知ってるが、私も話したことは無いな」


「あいつって恋愛にも疎そうだしさ、友達も少ないから周りに言いふらすこともなさそうじゃん。マジで偽彼氏にうってつけじゃない?」


「えー?でも瑠璃があんなヤツと付き合ってたらそれこそ不自然でしょ?」


「いやいや、それが逆にいいのよ。あんなヤツと付き合うからこそ、今まで他の男子たちの告白を断ってきたことに説得力出るし」


「なるほど?そういう考え方もできる……のか?」


「付き合う理由なんて『オタクみたいな人が好きだから』みたいに言っとけばいいじゃん。それなら他のヤツらも諦めてくれるでしょ」


 その話を聞いて、その場の会話の雰囲気や日々の疲れなども相まって、これまたとても魅力的な案に思えてきてしまった。


 だから私はその提案に乗ることにしたのだ。


 友人たちが言っていた彼を呼び出し、偽彼氏のお願いをしてみたところ、意外にもあっさりと了承してもらえた。


 七海クンの時とは違って彼には何の得もない提案のように思えたのだが、彼にその真意を聞いてみたところ「三次元には興味がないし、偽彼女が居たほうが都合がいいから」とのことらしい。私には意味がよくわからなかったのだが、それでも受け入れてもらえるのなら問題はない。


 具体的にどのような付き合い方をするのか、というのも話し合いもその場で行った。


 デートなど恋人らしいことは無し、連絡先は交換するけどメッセージのやりとりなども無し、当然だが肉体的な接触もなし。たまに校内で認知させるために一緒に下校するといった感じだ。


 そうして私は偽彼氏クンと表面上は付き合うことになり、その事実を校内に広めていった。


 この偽彼氏作戦は私が思っていたよりも効果絶大で、様々な影響を及ぼすことになった。


 まず私の当初の目論見通り、告白されることが全く無くなった。


 ただし、偽彼氏クンを見て「趣味悪っ」と吐き捨てるように言ってる男子もいたようで、私に対する多少のイメージダウンはあったようだが。


 しかしそんなことを何とも思っていない男から言われても何も感じなかったし、そんな私にも偽彼氏クンにも失礼なことを言うような人とは付き合わなくて正解だったとしか思えないので、特に気にすることはなかった。


 そして私に彼氏ができたという事実はものすごいスピードで学校中を駆け巡っていった。


 特にその相手がこれまで注目されていなかったような男子ということもあって、数日でもはや知らない生徒はいないというほどになったらしい。


 しかし友人たちが懸念していた通り、私と偽彼氏クンは傍目には釣り合っていないようで、人によってはかなり不自然に映ってしまったようだ。


 なので度々「なんであんなやつと?」と問い詰められたりしたが、事前に言われていた通り「オタクのような人がタイプだったから」で乗り切っていった。


 それでもあまり納得してくれない人もいたが、それも時間が経てば落ち着くだろうし、そうなれば受験にもきっと集中できるだろう。


 ——なんて考えていたのだが。


 ある日、偽彼氏クンからメッセージで連絡があった。


「周りの男子たちから関係を疑われているから、デートに行ってその様子を見せつけて納得させたい」と。


 私たちの関係を疑っている人たちはまだまだ多いようだったので、こんなことは起こり得るんじゃないかとは思っていた。


 正直、好きでもない男性とデートに行くのはかなり気が引けたのだが、私から偽彼氏をお願いしている以上この誘いを断るわけにはいかない。


 なので私は了承のメッセージを返信し、偽彼氏クンとデートに行くことになった。




 ◆◇




 そしてデート当日。


 嘘のデートとはいえ、私自身異性とのデートというのは人生初だし、他の男子たちの目をごまかす必要もあるということで、ある程度おめかしはして来た。


 待ち合わせの時間10分前に約束の場所に行ったら、偽彼氏クンは既に到着していた。


 偽彼氏クンもデートということで気合いを入れて来てくれたらしく、彼なりのオシャレをしていたようだ。


 しかし、全ての服が新品のようで陳列時の折り目が残っていたり、ズボンの裾上げが間に合わなかったのか裾がかなり余っていたり、前髪までワックスでベタついてたり、不慣れ感はどうしても拭えていなかった。


 生徒会長として他人の身だしなみをチェックすることも多いので、こういった部分はどうしても目についてしまう。


 とはいえ彼なりに今回のデートのために頑張ってきてくれたのだから、わざわざ指摘をすることもしない。


 そして今回のデートは、他の男子が遠くから見ているという算段になっているらしい。


 だから私達は普段通りという体でデートをしていくつもりだ。


 デートコースとしては特に奇をてらうことなく、ショッピングモールへ。


 フードコートで食事をして、ウィンドウショッピングをして、その後は映画館。事前に打ち合わせしていた通りの予定を淡々とこなしていく。


 しかしこのデート中、私はずっと焦ることになってしまった。


 ——とにかく会話が盛り上がらないのだ。


 そもそも私は彼のことを全く知らないし、ラノベ?などの知識も全く持っておらず、共通の話題が全く無い。


 なんとか頑張って会話を持たせようと先日の体育祭の話を振ってみても彼は積極的に参加していなかったようで反応が薄く、元々彼も言葉数が少ないから、すぐに会話が終わってしまった。


 それでも他の男子たちが見ているからと、彼らの目を誤魔化すためにとにかく思いつく限りの話題を出し続けて、仲がいいカップルに見られるよう努力し続けた。


 かなり苦痛な時間だったが、映画を見ることになって会話する必要がなくなったので、私はようやく落ち着ける時間を得られた。


 ——しかしそれも束の間。


 映画後半の盛り上がるシーンで、偽彼氏クンがそっと私の手に彼の手を重ねてきたのだ。


 思わず「ヒッ」と小さな悲鳴を上げてしまったが、あくまで表面上は彼氏なので、その手を振りほどくわけにもいかない。


 映画を見終わってから開放されたかと思ったが、その後も彼は私の手を黙って握ってきて、そのままの状態でデートを続行することになってしまった。


 正直、かなりキツい……


 好意を持っていない男子の肉体的接触に背中がゾワゾワするような不快感を覚えてしまったが、偽彼氏をお願いしたのは私なんだからと、変な汗をかきながらも我慢し続けた。


 そしてようやく最後の予定、駅近くの公園を散歩することに。


 夕日が照らしてムーディーで会話をしなくても良さそうな雰囲気だったので、黙ってブラブラと二人で歩く。ただし手は繋いだままだが。


 そして噴水のある広場に着き、ベンチに座る。


 しかし、私から出せる話題は全て尽きてしまったので、沈黙の時間が訪れた。


 もう男子たちにも私たちのデート姿は十分見せつけられただろうし、一刻も早く解散したかったので、どう切り出そうか迷っていたところ。


「——瑠璃さん!」


 偽彼氏クンが大声で突然私の下の名前を呼んだかと思ったら、ガシッと私の肩を両腕で掴んだ。


「あいつら見てるから、そのまま動かないで」


 そう言ったかと思うと、あろうことか彼は唇を突き出しながら私に顔を近づけてきた。


 ——ぇ、え?もしかして、キス、される?


 それはしない約束のはずじゃ……なんて思っていたら、彼の背後の奥の方に、学校の男子らしき生徒たちが複数いるのが見えた。


 ……こ、ここで拒否したら偽彼氏だってバレる。それに偽彼氏をお願いしたのは私。だ、だけど……


 近づいてくる彼の顔を間近で見た瞬間、距離がある位置からでは分からなかったものが全て見えてしまったのだ。


 鼻の穴に密集するように生えている鼻毛、

 ニキビ痕でブツブツの肌とガサガサの唇、

 手入れされておらず左右が微妙につながった眉毛、

 半開きの口と鼻から漏れ出る吐息の臭いがキツい。


 ——ぜ、絶対無理……!


 どれも生理的な現象なので仕方ないものではあるのだが、近くで見たときの破壊力と嫌悪感がすごくて、さすがに私も限界で、思わず彼を力任せに突き放してしまった。


「しまった」と思った瞬間には、もう時既に遅し。


 私は完全にパニックになってしまって、その場から走って逃げ出してしまったのだ。


 帰宅してから冷静になって、謝罪するために偽彼氏クンに電話をかけたのだが繋がらず。


 メッセージを送ってみても既読にもならずどうしようもなかったので、後日学校で謝罪することにした。




 ◆◇




 そして週明け、登校してみると教室が大きな騒ぎになっていた。


 何事かと思っていたら、偽彼氏クンが私とは付き合ったフリでしかなかったことを周りにバラしてしまったらしい。


 その経緯を整理するとこうだ。


 偽彼氏クンは三次元に興味はなかったが、美少女生徒会長と付き合ったフリをするというラノベみたいなシチュエーションに舞い上がった。

 何も感じない相手にそんなことを依頼するはずがないから、ラノベのように偽彼氏を演じている間に私を落とせるんじゃないかと考えた。

 デートで手を握ったりキスをしたりして気持ちを傾けさせようとした。

 しかし皆の前でキスを拒まれて恥をかいてしまい、その腹いせに私を陥れようと偽彼氏だったことを周りに吹聴してまわった。


 ただ、それによって偽彼氏クンは無理やりキスを迫ったということもわかり、周りから強く批判されてしまったらしい。


 元々は私が偽彼氏などというものをお願いしてしまったのが原因だったので、それに関しては全て私が悪いことを周囲に説明しながら謝罪した。


 偽彼氏クン本人にも言葉の限り謝罪をしたが、ツンとした態度の取り付く島もないといった様子で、受け入れてもらえたのかどうかはわからない。


 そして私自身も、偽彼氏などというものを作っていたということが白日の元に晒され、糾弾されてしまった。


 男子たちからは「そんなに俺達のことが嫌だったのか」「人の好意を踏みにじりやがって」と、女子からは「やっぱ裏があると思ってた」「美人だからって調子乗り過ぎ」と。


 偽彼氏を作るような女ということで舐められるようになってしまったのか、これまで告白してこなかったような男子たちも告白するようになってきた。それもこれまでのような丁寧なものじゃなく、下心を隠さない下卑た言葉で。


 生徒会メンバーも直接何も言ってはこないが、雰囲気がギクシャクするようになった。水澪クンを始め心配して声を掛けてくれたメンバーもいたが。


 そして偽彼氏クンのことを教えてくれた友人は、「自分の好きだった人が瑠璃のことを好きで、嫉妬心からテキトーな男とくっつくよう誘導してしまった。でもまさかこんな大事になるなんて思ってなかった」と涙ながらに謝罪された。


 とてもやるせない気持ちになったが、それを呑んでしまったのは私自身なので、その謝罪は受け入れて水に流すことにした。


 これまで私が築きあげてきた信頼などが一気に崩れ去ったようで、受験などに集中するための偽彼氏だったのに、完全に逆効果になってしまった。


 学校生活の居心地も悪くなってしまい、トボトボと校内を歩いていると。


「——あ、藍沢先輩。お疲れ様です」


 以前、偽彼氏をお願いして断られてしまった七海クンが声を掛けてきてくれた。


「……七海クン」


「あ、あれ?藍沢先輩、なんか元気ないですね。大丈夫ですか?」


 以前と全く変わらない態度で、こんな私を心配するかのような言葉を与えてくれて。


 完全に弱っていた私は、その優しさに甘えるように、七海クンに話を聞いてもらうことにした。




 ◆◇




 以前二人で話をした空き教室に場所を変えて、これまで起きたことの事情を全て伝えた。


「な、なるほど……そんなことがあったんですね……」


「あぁ……全て七海クンの言う通りだったよ。恋愛は本物や偽物で割り切れないし、人間関係や感情というのが本当に複雑なものだということを、身を以て知った。事前に言われていたことだったのに、こんなことになってしまって……本当にすまない」


「……いえ、俺も説明下手だったと思うし、俺に謝ることなんて無いですよ。たしかに先輩がやってしまったことは沢山の人を傷つけたし褒められたものじゃないかもですけど、きっとそれは先輩自身がもう分かってることですよね。それに複数の男たちに付け狙われるとか女性からしたら本当に怖いでしょうし、周りを頼りにくかった気持ちもなんとなく分かります」


「……ありがとう、そう言ってもらえると救われるよ」


「正直今回は、巡り合わせ的なものも大きかったと思いますけどね。相手をちゃんと選ばなかったのはアレですけど、まさかキスをいきなり迫ってくるような人だったなんて交通事故みたいなものでしょう」


「しかし、偽彼氏なんて自分勝手なお願いをしたのは私なんだ。それで彼は悪評を立てられているし、どう償えばいいものか……」


「うーん、あくまで俺の意見なんですけど、別に偽彼氏さんに償う必要はないと思いますよ?」


「え、どうしてだ?」


「たしかに偽彼氏ってのは良くないんですけど、元々の約束を反故にしてキスなんて迫ってきた挙げ句周りに関係をバラしたのは相手なんですし、言葉で謝罪してるならそれでおあいこで良い気がしました」


「し、しかし……」


「それに、償うってどうやって?って話ですよね。なんか今の藍沢先輩だと『キスさせろ』なんて言われても、その通りにしちゃいそうですし」


「……たしかに、お願いされたらやってしまうかもしれない」


「それは絶対ダメですよ、自分を大事にしなきゃ。贖罪と自暴自棄は全くの別物だと思います。たぶん今の藍沢先輩は罪悪感で視野が狭くなっちゃってる気がしました」


「……そうか、言われてみるとそれもそう、なのかもな」


「やらかしたことは無くならないですけど、それはもう生徒会の仕事とか普段の生活態度とかで示していくしかないんじゃないでしょうか。あんまり開き直りすぎるのもアレですけど、今みたいに猫背になって自分を責めすぎるのもダメなんで、『付き纏ってきたお前らが悪いんだ!』くらいの気持ちをほんのちょっとは持ってもいいと思います」


「ああ……そうやって考えてたら少し気持ちが晴れてきたよ」


「そう言ってもらえて良かったです。……あとはそうですね、藍沢先輩が全力で恋してる姿を見せるのも効果的かもしれませんね」


「ぜ、全力で恋?」


「えぇ。知り合いに一人、そういうヤツがいてですね……悪い評判なんて吹き飛ぶくらい、全身全霊で好きになれる人を藍沢先輩が見つければ、今みたいに変な告白をしてくる人もいなくなるんじゃないかなーって。……まぁ恋愛をしたことない俺が言っても説得力ないですし、冗談みたいなもんなんで軽く受け取ってもらえれば」


「……いや、一つの意見として参考にさせてもらおう」


「あ、あとあれじゃないですか?以前言ってた生徒会長の強権使うとか。それで全員ねじ伏せちゃいましょうよ」


「あはは、そんなのがあれば本当に良かったな。……いや、今日は話を聞いてもらえてよかった。心が軽くなったよ」


「いえいえ、このくらい。俺で良ければこんな相談いつでも乗るんで、また何かあったらいつでも言ってください」


「あぁ、本当にありがとう」


 彼に改めて感謝の意を告げて、そこで解散した


 七海クンに話を聞いてもらったことで、ずっと抱えていたモヤモヤが嘘のように、心が晴れきってじんわりとした暖かさに溢れていた。


 ……私は今まで、恋愛感情なんて持ったことがないと思い込んでいた。


 でもあのとき、最初から偽彼氏だと説明せずに「恋人になってほしい」と告げたのはなぜ?彼に断られそうな雰囲気を出されたところで初めて偽彼氏のことを切り出したのはなぜ?


 ——そうか、私は既に知っていたんだな。


 気付くのが遅すぎるし、もう取り返しのつかないことまでしてしまった。


 ただ、それでも。


 そんな私でも、『全力の恋』をしてみてもいいと、君が言うのなら。


 これから、全身全霊でその態度を示しながら、頑張ってみようと思えた。


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