わたしの思うところの、ベーシックインカム

本編

ベーシックインカム（以下BI）は、すべての国民に対して無条件に一定の金額を定期的に支給する制度です。たとえば、毎月10万円が支給され、これを基礎に生活を支えることができます。それを超える収入や出費に関しては、働いたり、別の手段で稼いだりすることで補う必要があります。BIの基本的なコンセプトは、「最低限の生活は保証されるべきだ」というもので、生活に必要な最低限の収入を国が保証することで、誰もが安心して生きられる社会を目指しています。

この制度は、既にいくつかの国で議論され、一部では試験的に導入されたり、実験的に実施されたりしています。しかし、日本ではまだ議論が十分に進んでおらず、実現への道のりは遠いと感じています。BIが現実のものになるには、社会全体の合意と、財源をどのように確保するかという非常に大きな課題があります。

ベーシックインカムと社会保障の兼ね合い

BIの実現が難しい理由の一つに、既存の社会保障制度との兼ね合いがあります。現在の日本の社会保障制度は、医療保険や年金、失業保険、生活保護など、多くの種類があり、各種保障が整備されています。しかし、これらの制度を維持するためには多額の費用がかかっており、それが国家財政を圧迫しています。BIが導入されることで、これらの社会保障制度の一部が不要になる可能性がある一方で、必要不可欠な保障もあります。

例えば、医療費の控除や生活保護は、社会のセーフティーネットとして重要な役割を果たしています。これらを削ることは、社会的弱者に対する保障を取り去り、社会全体の不安定化を招きかねません。特に医療費に関しては、現状の日本では高齢化が進んでおり、医療にかかる費用が増大しています。したがって、BIが導入されたとしても、医療保障のような不可欠な分野については、しっかりとしたサポートが必要だと思います。

財源の問題と無駄の削減

BIを実現するためには、当然ながら財源の確保が必要です。BIの支給額が毎月10万円と仮定した場合、全人口に支給するための莫大な資金が必要となります。そのため、税収の増加や他の無駄な支出を削減することが不可欠です。

一方で、日本の社会には削れる無駄な部分も多く存在していると考えています。例えば、必要以上に行われている道路工事や、時代に合わない書類の手続き、ハンコ文化の廃止など、さまざまな部分で効率化を図ることができるはずです。これらの無駄を削ることで、BIの財源を確保できる可能性が高まると考えます。また、既存の社会保障のうち、重複している部分や、時代にそぐわないものを見直すことも重要です。

たとえば、労働市場に関する社会保障制度においても、現代の多様化した働き方に対応できていない部分があります。正規雇用を前提とした保障制度が多い中、フリーランスや非正規労働者が増えている現代では、それらの人々に対する保障の見直しも必要です。BIが導入されることで、こうした働き方に対する保障の不公平感を軽減し、すべての人々が平等に最低限の生活を送れるようになる可能性があります。

ベーシックインカムのメリット

BIには多くのメリットがあります。まず、国民全員に一定の金額が支給されることで、経済的な不安が減少し、生活の安定が図られる点です。特に、現在のような経済的な不安定さが増す時代には、BIが大きな救済となるでしょう。労働市場が不安定である中で、最低限の収入が保証されることで、人々はリスクを恐れずに新しい挑戦に踏み出すことができるようになります。起業や新しいスキルの習得に時間を使うことができ、結果的に社会全体の活力が高まる可能性があります。

また、BIによって労働の自由度が増すことで、過剰な労働から解放され、個人のライフスタイルに合った働き方ができるようになるとも考えられます。現在の労働市場では、働き過ぎによる過労死や精神的な健康の問題が深刻化していますが、BIが導入されることで、働かなくても生活できるという安心感が生まれ、無理に働く必要がなくなるかもしれません。これにより、労働環境の改善や労働時間の短縮が実現する可能性もあります。

議論の停滞と未来への提言

BIの導入には多くの課題があるものの、私が最も懸念しているのは、議論が進んでいないことです。難しい問題だからこそ、目を背けずに真剣に議論を重ね、国全体で合意を形成する必要があります。経済的な問題や社会保障の見直しなど、多くの複雑な要素が絡んでいるため、すぐに解決することは難しいでしょう。しかし、社会が抱える不安や不満を解消するためには、今こそBIの可能性について真剣に向き合うべきだと思います。

BIは、うまく運用されれば、国民全員の生活を守る素晴らしい制度となるでしょう。財源の確保や制度の見直し、社会保障との調整など、数々の課題に対処しながらも、将来の日本のためにBIの導入を検討することは非常に重要です。経済的な安定と社会的な公正を実現するための一つの手段として、BIは真剣に考えるべき制度であり、これからの日本にとって大きな可能性を秘めています。

結論として、ベーシックインカムは国民の生活を守り、社会全体の安定と成長を支える重要な制度になる可能性があります。課題は多いですが、今後の議論と制度の整備次第で、その実現は十分に可能だと私は信じています。