Episode2 情報と方針①

 このまま途方に暮れていても仕方ないので、ボクは軽く頬を叩いて気持ちを入れ替えると今後の方針とこの世界でどうやって生き残るかの対策を検討することにする。


(まず、こういったので基本となるのは鑑定スキルとかサバイバルに役立つスキルを手に入れることだけど……いろんなスキルの横に獲得時消費SPって表記があるってことはSPを消費すれば新しいスキルが手に入るってことよね? だったら、今迄のパターンから考えると—―)


 直後、私の考えを裏付けるように『習得可能スキルを表示しますか?』と言う声が頭の中に響いたので、今度は声に出さず頭の中で(お願い)と返事を返してみると、先程【天地創造ジ・クリエイション】を発動した時と同じように頭の中にいくつもの候補が浮かび上がる。


(うーん……スキルが多すぎてどれを取ればいいかわからんなぁ。とりあえず、ボクのSPは80だから獲得に81以上のSPが必要なやつは非表示にしてくれる?)


 頭の中でそう尋ねてみるとすぐに要望通り習得不可能なスキルが一気に表示されなくなり、それだけで随分と見やすくなる。


(それでもまだ結構多いなぁ……。それじゃあ、アイテムとか植物、食料なんかの鑑定ができるスキルってある?)


 その問いかけに答えるように脳裏へスキルが浮かんでくるが、困ったことに該当する能力は1つだけでなく複数表示されていた。


(順当に考えればこの【鑑定士】ってスキルだけど……必要なSPは50かぁ。それに、【採取名人】とか【錬金術師】とか【料理人】って選択肢も出とるし、これってもしかするとそれぞれの専門知識に応じて取得できる情報が変わる、ってパターンかなぁ)


 そうなると、それぞれのスキルを獲得するのに最低でも50以上のSPが必要なので安易に【鑑定士】を取得して必要な知識を得ることができなければ目も当てられない。


(もしかして、非表示にしてる獲得不可能なスキルに鑑定スキルの上位版とかあったりするのかなぁ。ひとまず、一度見てみようかな)


 そう考えたボクはいったん非表示にしていたスキルを戻すようお願いすると、案の定SP200で習得可能なスキルに【知の賢者】とかいうそれらしいスキルの名前を見つける。


(うん。これは鑑定系のスキルを取ってもSPの無駄遣いになる可能性が高かね。そうなると、次に考えられるパターンは鑑定用のアイテムを【天地創造ジ・クリエイション】で作れるか、だけど……)


 そうやって意識を向けると、ボクの脳裏にいくつもの選択肢が浮かび上がる。

 だが、案の定一番消費MPの少ない毒の有無を調べる使い捨てのアイテムでも500のMPが必要であり、413しかMPが無いボクではこの方法で鑑定を行うのは不可能そうだった。

 しかし、全ての可能性が断たれたと諦めるのはまだ早いだろう。


(そう言えば最初に使ったMPもまだ全部は回復しとらんけど、こうやって思考を続けとるとほとんど回復せんとにさっき途方に暮れとった時にはちょっとだけ回復速度が速かった気がする。てことは、ちゃんと休めばそれなりの速度でMPは回復する? そうなると、ここでMPを増やすようなスキルを取っとくとこの問題も解決するんじゃなかかな?)


 そう結論付けたボクは、今度は意識をスキルに集中してMPを増加させる効果を持ったスキルで習得可能な物に絞って検索を掛ける。

 すると、予想外に表示されたスキルはたったの2つだった。


(【基礎MP向上】と【MP上昇(小)】かぁ……。名前だけで考えると【MP上昇(小)】の方は習得後に(中)が出てきそうな感じよね。でも、この(基礎能力向上系)と(ステータス補正値向上系)っていったいどう違うとかな?)


 流石にそこまで親切に教えてはくれないだろうなと半ば諦め混じりの問い掛けだったのだが、予想外に謎の声は『(基礎能力)と(補正値)に関するヘルプを参照します』と返事を返してくれ、それと同時にボクの脳内に必要な知識が流れ込んでくる。


(……要するに、ボクのステータスは(基礎能力)×(補正値)×(レベル)で決まっとるから例えば(基礎能力)が5、(補正値)が1、(レベル)が1だとそのステータスは5になって、(基礎能力)を1上げても合計値は1しか上がらんけど(補正値)を1上げればステータスが10になるけん最初は(補正値)を上げた方がよかってことよね。それに【基礎MP向上】の獲得に必要なSPは10だけど、【MP上昇(小)】は5だけんこっちの方がお得よね)


 正直、この考えは絶対に正しいと言い切れない部分もある。

 そもそも、現時点でボクの(基礎能力)がいくつで(補正値)がいくつなのか分からないので、実際蓋を開けてみれば(基礎能力)が1で(補正値)が5のパターンもあり得るので本当は(基礎能力)を上げるのが正解のパターンもあり得る。

 だが、どちらにせよ今後ステータスを伸ばすうえで(補正値)が高いに越したことは無いので上げて損をするということは無いだろうし、そもそも現時点では【基礎MP向上】と【MP上昇(小)】がどれだけ数値が伸びるのか分からない上に、明らかに続きのスキルがありそうな【MP上昇(小)】と違って【基礎MP向上】に次があるかがはっきりとしない以上優先すべきは【MP上昇(小)】の方だろう。

 それに、もし【MP上昇(小)】で増加する数値が予想以上に少ない場合は次に【基礎MP向上】を取って上昇値を比べてみればいいのだ。


(よし! さしよりまずは【MP上昇(小)】を習得で!)


 そう頭の中で告げた直後、頭の中に『【MP上昇(小)】を獲得しました』と言う言葉が響いて今迄最大値に表示されていた413と言う数値が419へ変化した。


(たったの6、かぁ。つまり、ボクは(基礎能力)よりも(補正値)が高いタイプとかな? それとも、思った通りSP消費10で(中)が取れるようになっとるけん(小)の(補正値)上昇が少なかとか……。それじゃあ、次は【基礎MP向上】を習得で!)


 続いて『【基礎MP向上】がLV1になりました』と言う声が聞こえ、表示されていたMPの最大値が426に上がる。


(今度は7……。若干(基礎能力)を上げた方が上昇率が良い? いや、まだ判断を下すのは早かね。てことで、続いて【MP上昇(中)】を獲得!)


 そう告げると三度頭の中に声が響き、最大MPは438まで上昇した。


(おお! 次は12も上昇した! と言うことはもしかして、次の(大)を獲得すると24とか上がったりするとかな?)


 テンションが上がったボクは一瞬だけ15もSPを消費する(大)を獲得するか迷いはしたものの、そのままの勢いで【MP上昇(大)】も獲得する。

 すると今度は思ったほどの上昇はしなかったもののMPは17上昇して最大値が455となり、SPを20消費して獲得できる【MP上昇(極)】が出現した。


(とりあえずこれで最後かな? この上昇幅だと500は無理そうだけど、キリが良いしここまで獲得して20は残しとこうかな。それじゃあ【MP上昇(極)】を獲得!)


 もはや聞きなれた声と同時に最大MPは478まで上昇したもののやはり目標とする500には届かず、ダメもとで【基礎MP向上】のスキルレベルを上げるか(どうやらSPを10消費すると次のレベルに上がるらしい)を迷ったが、ひとまず本当にMPの(ステータス補正値向上系)スキルがさっきのやつで最後なのか確認してみることにする。

 すると、予想外にもSP30で獲得できる【賢者】と言うスキルが追加されており、ボクはひとまずレベルを上げてどれだけSPを獲得できるのか確認してからでも遅くはないだろうとスキルレベルを上げるのは思いとどまることにした。

 それに、単純に考えればレベルが2に上がればMPも倍になって956になるはずなのでそれほど焦る必要もないはずだ。


(と言うことで、次に考えんといかんのはレベルを上げる方法、よね)


 そう結論付けたボクは、再び自身のステータスに目を向けながら避けては通れないだろう戦闘についてに思考を向けるのだった。

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