第十一話「女子会」
「そうだね」
「そうですね……」
「ゆきちゃん、私なんかじゃ力になれないかもしれませんが、頑張るです!」
「ありがところねっち……」
ころねちゃんとゆきちゃんも無二の親友同士だった。
「さて……。まとまったところで、難しい話はここまでにして、純粋にお茶を楽しもうじゃないか。最近は色々と忙しくて、こうしてみんなで集まる機会が少なかったからね」
「そうですね。じゃあ、ここからは女子会としますか」
「いいね提案だねゆきちゃん」
「ではボクは下がっていますので、御用があればお声かけください」
「なに言ってるんです春兄さん。春兄さんも女の子みたいなもんじゃないですか。だって春兄さん含めて学園の五大美人なんですよ?」
下がろうとするボクをゆきちゃんが止めた。
「ゆきちゃん、女子会に男のボクが参加するのはおかしいでしょ? そもそもその五大美人っていうのだって変だよね。ボクはいれないで四大美女でいいよね?」
「そうは言っても、学園のみんなが言ってるから仕方ないよね……?」
「諦めろ春太郎」
「ほら、ゆのはさんも春児さんもこう言ってますし」
「…………かしこまりました」
それでも女子会の邪魔をするような野暮な真似はしたくないと、ボクは用があれば連絡をくださいと言い残してガゼボを後にし、屋敷へ戻った。
――
――――
――――――
「それにしても春兄さんは年々美人になっていきますね……」
去っていく春太郎を見つめながらゆきがそう洩らした。
「だよね……。普通逆だと思うけど、お化粧もなにもしないであんなに可愛いんだから……もしかしたら、私たちの中で一番可愛いの春太郎くんなんじゃないのかな……?」
「否定はできないです……」
「うん。春太郎は常春島一番の美少年だからね。顔だけじゃなく心根も清く美しい。私も鼻が高いよ」
春太郎が去った後、女子会が始まった――
もちろん話題の中心は誠のことだったが、誠の話があらかた終わると、次に話題を振られたのはころねだった。
「ころねっちは春兄さんが好きなんでしょ?」
「ぶふぅっ――!?」
ゆきの言葉に紅茶を盛大に吹き出すころね。
「なんだころね、まだゆきにも話してなかったのかい?」
「そうなのころねちゃん?」
「げほっげほっ……! そっ、そもそも、ゆきちゃんどころか、姉さんにも春児さんにも言った覚えはないんですけどっ?!」
「なにを言ってるんだいころね? そんなのころねを見てれば一目瞭然だよ」
「そうだよころねちゃん。隠せてると思ってたの?」
「なっなななっ……そっ、それじゃ春太郎さんや……学園のみんなにも……っ?」
「それは大丈夫だよころねっち。少なくとも、春兄さんや学園のみんなには気付かれてないよ。ただ、私たち幼馴染の目は誤魔化せないってだけで」
「むぅ……」
「ほら、いい加減認めたらどうだい?」
「これを機にさ、ころねっち」
「そうだよころねちゃん。私たちの話を聞いていたなら、自分だけ隠してるのはずるっこだよ」
「姉さんまで……」
三人に言われたころねは大きくため息を吐くと――
「はい、そうです……。私は、春太郎さんが好きですよ……」
「「「おおー」」」
囃していたくせに三人は恥ずかしそうに声をあげた。
「言わせておいてその反応はなんなんですっ?!」
「いやぁ、あのころねっちがこんな素直に認めるなんて……ねぇ?」
「うん……私も少しびっくりしたかも」
「そうだね……ころねは、春太郎に告白はしないのかい?」
「振られると分かっていて告白する気にはなれないですよ……」
ころねの言うとおり春太郎には意中の人、想い人がいるらしいが、それが誰なのか誰も知らず分からず並木学園七不思議の一つに数えられているほどだった。
「この私でも分からないんだ。春太郎の思い人はいったい誰なんだろう?」
不思議そうに声をあげる春児にゆのはやゆきやころねも首をかしげた。
「うーん……。昔は春児さんなんじゃないかと思ってたんですけど……。今は違うんじゃないかと思うんですよね」
「私もゆきちゃんと同意見だよ」
「私もです……。ただ、その相手が私じゃないことは確かです……」
「私も無理やり聞き出す趣味はないからね」
「いくら春児ちゃんの言葉でも春太郎くんは口を割らないと思うよ」
「そうですね」
「ですね」
春太郎はその可愛いらしい容姿に反して頑固な一面があり、一度やり通すと決めたのなら、たとえ春児でも青治でもその考えを変えさせることはできなかった。
「流石は並木学園七不思議の一つにされているだけあるね……」
「誠くんも謎だけど、好きな人がいるってワケじゃないと思う」
並木学園七不思議の二つは目は誠が恋人を作らない理由だった。
「だから私たちが本気で惚れさせてやろう、というわけですよね?」
「だね」
「そうだね」
「ま……がんばってくださいです」
その日は誠や春太郎の想い人は誰かなどと盛り上がって夕方に解散となった。
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