ボディーガードとオムライス!
崔 梨遙(再)
1話完結:1200字
僕は神崎蓮。僕の仕事はボディーガード、今、大好きな歌手、レ〇ナさんのボディーガードをしている。過激派のファン達からレ〇ナさんを守るためだ。いや、ファンではないのかもしれない。レ〇ナさんは何度か複数の男に襲撃されていた。いずれも襲撃は未遂に終わり犯人は逃走、犯人をまだ1人も捕まえることが出来ていなかった。そして、襲撃ではなく誘拐未遂だったのでは? とも言われていた。
僕はボディーガードの仕事をやっていて良かったと思っていた。大好きな女性を守るボディーガードは最高の仕事だ。やりがいがある。好きな女性を守るなんて、こんなにやりがいのある仕事は無い! そして、勤務時間が終わると僕は内緒でサインをもらい、一緒に写メを撮らせてもらう。部屋の中に、僕の宝物が増える。勿論、CD、DVD、フォトブックは揃っている。
或る日、レ〇ナさんを襲撃する一味の一人をようやく捕まえた。警棒を振り回してきたが、護身術の心得のある僕が取り押さえたのだ。その男の供述によって、事件の真相が明らかになった。
或る組織があるのだが、その組織の首領がレ〇ナさんに恋をして、自分の妻にしようとしているらしいのだ。やっぱり、一味の目的はレ〇ナさんの誘拐だった。大スターを誘拐して強引に妻にするなど、決して許されないことだ。僕は、闘志を燃やした。僕は必ず彼女を守ってみせる!
或る日、レ〇ナさんから言われた。
「事件が収まったら、神崎さんに何かお礼がしたいです」
「気を遣わなくていいですよ、仕事ですから」
「じゃあ、手料理でも作ります。何がいいですか?」
「手料理ですか? それは魅力的な提案ですね。そうですね……オムライスがいいですね」
「わかりました、楽しみにしてください!」
「はい!」
それから数日後、移動中、白昼堂々怪しい黒ずくめの男達に取り囲まれた。僕ともう1人のボディーガードは、レ〇ナさんを庇うように黒ずくめの男達の前に立ち塞がった。だが、黒ずくめ(覆面付)は十名以上。ピンチだ!
ピンチなのだが、僕はうろたえることは無かった。何を隠そう、僕は忍者の子孫なのだ。多少の忍術なら身に着けている。これだけ大勢の敵を相手にするなら、この技だろう! 僕は両手を広げ、スケートの選手のようにその場で回転を始めた。
「風遁の術!」
40歳の僕だからこそ出来る術だ。僕の加齢臭と煙草臭が毒ガスのように周囲を汚染する。黒ずくめの男達は次々と倒れていった。通りすがりの見物人も倒れた。
振り返ると、レ〇ナさんも気絶していた。
「レ〇ナさん、大丈夫ですか? しっかりしてください!」
「神崎さん……」
「何ですか?」
「オムライスの約束は無かったことにしてください」
レ〇ナさんは、お怒りのようだった。
ボディーガードとオムライス! 崔 梨遙(再) @sairiyousai
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