突然ですが、最強転生物理ゴリラの俺に日常をください!!~悪魔による異世界滅亡譚~ ~前世で俺が色々悪いことをしたらしいので、仕方なくごり押しクールちょろい美少女神の言いなりになります。嫌だけど。~

@and8

第1話 神の討伐

「突然のことで申し訳ない。悪いがここでお前を始末させてもらう」

「ようこそカイトさん。ここは神々の世界です。ここではあなたの転生のサポートを、は? いきなり何を、ぼほっ!?」


 俺は神の顔面に一撃を食らわせた。


「おや? この一撃に耐えるとは、なかなかやるじゃないか。さすがは神といったところか」

「き、貴様ァ! この私に手を上げるとは、一体どういうつもりなのだ!?」


 頬を腫らした神は、怒りの表情をこちらに向けていた。


「ん? ああそうか。突然殴られたから、状況が飲み込めないのか。それは失礼した」


 俺は咳払いをし、神に簡潔な説明をすることにした。


 こういうのは得意ではないし、自分の意図がちゃんと伝わるか不安だが、やってみるか。


「えー、実は俺がここに来たのは、クールチョロ……あ、ごほんごほん。とある神に指示されて来たんだよ。その使命とはずばり、お前の討伐だ」

「なっ!? 一体どこの誰がそんな酷いことを」


 その反応を見て、俺は思わず笑みがこぼれてしまった。


 あまりにもおかしなことを言っているな。


「酷いか。確かにあいつは、俺をいきなりこんなところに送った酷いやつだ。だけどお前と比べたら、いや比べるまでもないか。転生者を利用しているお前の方が、遥かに最低だ」

「そ、それは……でっち上げだ!」


 神のその短い反論は、己の動揺を隠すための物なのは明白だった。


「誤魔化しても無駄だぞ? もうこっちは全部わかっているし」


 ここに来る前に、それなりの証拠を見せてもらっているしな。

 言い逃れするんだったら、さっさとしてくれ。


「ぐっ!?」


 神は図星を突かれたのか、動揺した様子であとずさっていく。


 この反応から察するに、どうやら本当のことみたいだな。

 ならさっさと片付けるか。


「で? 一応言い訳は聞いてやる。何か言い残すことはあるか?」


 俺は神に最後の言葉を問いかけた。


 どんな返答が返ってくるのか、純粋に興味があったからだ。  

 もし降参や大人しくするというなら、こちらはこれ以上手を出すつもりはない。


「言い残すことだと?」


 神は俺の問いにそう返すと、少しずつこちらへと歩み寄ってくる。


 どうやら降参ではなく、最後の抵抗を試みるつもりか。


「貴様! 誰に向かって口を利いている! 私は神だ! こんなところで倒れるような器ではない!」


 怒りに満ちた声で神は叫ぶ。


「はいはい、その器はここで終わりだよ」


 俺は冷淡に返答した。


「その減らず口もここまでだほっ!?」


 接近してきた神に対し、俺は迷うことなくその顎にアッパーを入れ、砕く。

 俺からの衝撃を受けた神は、顎を押さえながら苦しそうに悶える。


「はっ……がっ!? これは何の……冗談だ」


 神は苦しみながらも、声を振り絞っていた。


「ん? それは簡単さ。お前がただ弱かっただけだ」

「弱い……?」

「ああ、だから聞いたんだよ。言い残すことはないかとな」


 神にとどめを刺すため、俺の拳は振り下ろされた。


「……終わったな。なんだか味気ないというか、思ったよりも余裕だった?」


 俺は一息つく。


「しかし簡単な使命とはいえ、神の元で転生したばかりの俺が、まさかこんなことをするなんてな。思いもしなかったぜ」


 ふと心に溜まっていた軽い不満を、俺は吐き出す。

 独り言はあまり良くないが、今はこの抑えられない気持ちをどうにかしたかった。


「全く、俺の前世が悪事を働きまくった悪魔らしいからとはいえ、こんな使命を押し付けられるとは。勘弁してほしいわ」


 愚痴をこぼしながら、俺は地面を軽く蹴る。

 

 これでストレスが発散、いや微妙な気持ちが残るなこれ。


「あーもうこんな面倒なことはやめて、普通の生活を送りたいよ。それもこれも、全部あそこで出会ったあいつが」


 手や口だけでは気が晴れないと考えた俺は、脳も動かしてみることに。


 えーと。

 ここに来るほんの少し前。

 自分が転生した時のこと。

 お、思い出してきた。


 俺の脳内に少し前の時間の出来事が蘇る。


 まさか俺が、あんなクールチョロい神と出会うことになるなんて、思ってもみなかったな。


「マジ最悪」


 俺は一言呟くと、その思い出に身を委ねた。

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