一日目~後編~・平凡な一日
いつも通り、桜は通学路を一人で歩く。ふと、なんとなくたちどまって空を見上げてみると、桜の心の中の天気とは正反対にすがすがしい晴れの青空が広がっていた。
「相変わらずきれーだなあ。」
思わずふとつぶやいてしまった。あ、、と思い誰かに見られていなかっただろうか、と後や前をきょろきょろと確認する。
(よかった。。誰にも見られていなくて。)
誰かに見られていたら、独り言をつぶやく変な人だと思われていただろう、とほっとしながら心の中でつぶやく。
空はどうしてあんなにもきれいなんだろう、と再び桜は意味のないことを考える。桜がどんなに頑張って描いても、写真を撮ってもあの空の迫力は、美しさはそのまんまは映らない。ほんと、なんでなんだろうなー、と再び空を見上げたところで、電柱と電柱の間に蜘蛛の巣が張ってあることに気付き、急いで身をかがめてよけて通った。
(危なっ、、危うく蜘蛛の巣壊すところだった。)
『ぐちゅ』
足元で嫌な音がする。おそるおそる足をあげてみるとそこには、踏まれてつぶれたミミズの姿があった。
「うえっ、、、最悪、、、。靴買ったばっかだったのに。。。」
と、独り言をつぶやいて足をアスファルトにこすりつけるようにしてミミズの汁をふき取った気になってまた再び地面を眺めながら歩きだす。
ところどころにどんぐりの踏まれた跡や、見たことはあるけど名前がわからない虫などの障害物をよけながら障害物競走をしているような気持になって歩いていると、目の前から白い雪のようなふわふわした虫がぶつかってきた。
「うわっ、、、この虫っ、、、よけてくれればいいのにどうして私にぶつかってくるのよ、、、。」
そううめきながら、くっついてきた虫を振り払うと、再び歩き出す。。。といったようなことを繰り返していると、気が付いたら学校についていた。
「おはようございます。」
校門の前で校長が挨拶をしている。毎朝毎朝ご苦労なことだ。
「おはようございまーす。」
無視してはいけないと思い慌てて挨拶を返して通り過ぎる。
そこへ、
「桜ー!おはよー!」
後ろから肩をたたかれて、驚いて振り向くと、
「あ、樹里。おはよ。」
そこには友達の樹里がいた。
「ねえねえ、朝何食べたー?」
「え、、あ、なんも食べてないわ。」
今朝は寝坊していて、朝ご飯を食べていないことに今、気づいた。
そういえばおなかすいたなあ。。。給食までごはんなしかー。
「樹里は何食べたのー?」
「あー、私はねー、フレンチトースト食べてきた。」
相変わらずかわいい顔で少しマウントを取りたそうなドヤ顔(?)でそう言ってきた。
「へー、フレンチトーストかー、ユウガダネ。ウラヤマシイナ。。」
と、私が全く気持ちを込めていないような声で言うと、
「あはは。そんな棒読みな声でかえさないでよ。」
と、笑いながらかえされた。
そんな雑談をしながら二人で歩いていると、あっという間に教室についた。
「じゃあねー。」
樹里と私は違うクラスなので、手を振って別れてから、教室に入った。
担任の先生が教室に入ってきたので、急いで席に着くと、その瞬間にチャイムが鳴った。
(ふー。ギリギリセーフ!遅刻しなくてよかった。。)
そのあとは一日、ほとんど平凡だった。
しいて言うなら今日は学校の帰り道に会った犬にほえられなかったことかな。』
私はそこまで書き終えるとその日記を棚の中ににしまった。
余命九日の少女 藍無 @270
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。余命九日の少女の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます