#12 桜色の電波に乗せて
5月某日。私達は先輩である桜花サキさんの個人ラジオ番組にゲストとして出演していた。
サキ「『Cafe Saki time』。パーソナリティの
夏樹「はい! 声優事務所ダイヤモンドダスト所属、é4clat(エクラ)の
玲「
日向「
冬羽「
サキ「さてさて。お便りが沢山届いているので、じゃんじゃん紹介していくよ。
常連さんネーム『近所の梅ドロップ』さん。『桜花サキさん、ゲストのé4clatの皆さん、いつもので!」
全員「かしこまりました」
サキ「早速ですが、é4clatはプロジェクトとしては1期生のMele(メレ)さん以来のデビューですね。以前、ラジオで桜花さんは『Meleちゃんは同年デビューだから実質同期』と言っていましたが、だとしたら、2年ぶりの後輩ということで、桜花さんが早く言いたくてウズウズしていた気持ちも分かります。
ここで質問です。桜花さんから見た、é4clatのメンバーそれぞれの第一印象を教えて下さい』ってことで。順に話していこうかな。
まずは、夏樹くん」
夏樹「はい!」
サキ「そもそも今日が初めましてじゃないんだよね。偶然、デビュー前に事務所の廊下で4人一緒にいた所を挨拶してくれてね。
特に夏樹くんは、こう、全身から燃えたぎる情熱がこっちまでビシバシ伝わってきて、真夏の太陽みたいだなって思ったな」
玲「確かに。こいつの取り柄と言えば、情熱だけですから」
夏樹「玲も褒めてくれるのか! ありがとう」
サキ「玲くんのは褒めてるに入るのかな……まぁ、とにかく私には自分の道を真っ直ぐ突き進むー、みたいなことは出来ないから憧れちゃうんだよね」
夏樹「そんなことないです! サキさんは、オレ以上の熱い道を進んだきたじゃないですか。
それにオレがサキさんを初めて知ったのは、オーディション受けた時だったんですけど、輝きの最先端って感じのトップオブトップの人で。オレにとって、サキさんはどんな光にも負けない一番星なんです!」
サキ「うわぁ。お星様なんて、そんなこと言ってもらえるとか、照れちゃうじゃん。夏樹くん、ありがとね。
それじゃあ、次は玲くん。最近、玲くんとは事務所で会ったよね」
玲「はい。挨拶させてもらった数日後に事務所内のスタジオでのレッスンが終わって、帰宅しようとしていた所で、すれ違って。その時に挨拶だけさせてもらいました」
サキ「そうそう。デビュー前だし、また今度ゆっくりお話ししようねー、って。それもあったから、玲くんは、すっごく礼儀正しい真面目ないい子だ、って思ったかな」
玲「ありがとうございます。自分自身でも、そのような点が長所だと考えているので、サキさんのような素晴らしい役者さんに褒めていただけて光栄です」
サキ「え〜〜〜、こちらこそ。そんな風に思ってくれて、ありがとね。
じゃあ、調子に乗って、まだまだ行くよ。続いては日向くん」
日向「やっと僕の番だ。待ってました!」
サキ「ふふっ。日向くんはね、ズバリ。わんちゃんみたい。私のこと見つけた瞬間に駆け寄ってきて、大きな声で『サキちゃん先輩、こんにちは』って言ってくれたんだ。
それで『あ〜、こんなに可愛くて素敵な後輩を持てて、私は幸せだな』って、感じたんだ」
日向「う〜、こんなにも素敵なサキちゃん先輩に可愛いって言ってもらえるなんて夢みたい。すっごく嬉しいです。
だけど、そういうサキちゃん先輩の方が100万倍可愛いですし、事務所に入ってから沢山のお友達が出来て、僕もとっても幸せです」
夏樹「友達、か……サキ先輩」
サキ「ん、どうしたの? 夏樹くん」
夏樹「オレと友達になって下さい!」
玲「おい、お前。何を言い出すかと思ったら、先輩に友達宣言なんて生意気なこと言いやがって。桜花先輩、こいつのことは無視してもらって構わないですよ」
サキ「ハハッ。玲くんは随分と夏樹くんに厳しーね。
でもね。私は友達が増えていった方がハッピーも沢山増えていくと思ってるから、夏樹くんと友達になれたら嬉しいな。っていうか、4人は後輩だけど、サキ的には友達としても仲良くしたいな」
日向「うん。僕もサキちゃん先輩をすっご〜〜〜く、リスペクトしてます」
サキ「ありがとう。日向くんのリスペクトの気持ち、私にもちゃんと伝わってるよ。
後、そういう意味で言うと、冬羽ちゃんからのも伝わってる」
冬羽「え。そうなんですか」
サキ「うん。だって、マネージャーから聞いて、びっくりしたんだよ。冬羽ちゃんがサキきっかけで入ったらしいって。
それで、会った時にそういう話をされると思ってたけど、ならなかったから、冬羽ちゃんは相変わらず凄く謙虚で良い子なんだなって、懐かしくなっちゃったよ」
日向「懐かしいって?」
サキ「あ……あれ、あれだよ? 今まで後輩や先輩に沢山挨拶してきた中で、こういうこともあったよねー、てこと!」
日向「そうなんだ〜」
サキ「おっと、すっかり話が脱線しちゃったね。気を取り直して、最後は冬羽ちゃん」
冬羽「は、はい」
サキ「冬羽ちゃんは名前を聞いた時に、どんな子なのかな〜って想像したんだけど、実際に会ってみると、想像通りの部分も多くて。けど、自分の色? みたいな。違う言い方をすると、周りと比べても見劣りしないような輝きを持ってるって感じたかな」
冬羽「……ありがとうございます。最後に仰っていた輝きのお話、プロデューサーさんからも似たような話をしてもらったので、凄く嬉しいです」
サキ「お。流石、一ノ瀬くん。相変わらず目利きの天才っぷりを見せてるな〜。
あっ。常連さんに説明しておくと、一ノ瀬くんは私がデビューしたての時に担当してくれてたマネージャーでね。今は、私もいる声優×バーチャル複合型プロジェクトProject étoile(プロジェクト エトワール)のプロデューサーをしてて、よく知ってるんだよね」
冬羽「あの、桜花先輩。勝手に名前出してますけど、大丈夫でしょうか」
サキ「大丈夫、大丈夫。インタビューでも、しょっちゅう名前出してるからね。
と。まぁ、皆んなの印象は、こんな感じでいいかな。それじゃあ、次のお便りを紹介していくよ──」
こうして、続々と届くメールに対して、賑やかに談笑していると、あっという間にエンディングの時間が迫ってきた。
最後の告知のコーナーでは、ユニットリーダーである夏樹が代表して、ハキハキと宣伝文章を読み上げる。
夏樹「──ということで、今後もé4clatへの応援、よろしくお願いします」
サキ「ありがとうございました。常連さん、是非とも、Project étoileの今後を暖かく見守ってくださると幸いです。
改めて夏樹くん、玲くん、日向くん、冬羽ちゃん。今日はゲストに来てくれてありがとう」
玲「いえ。こちらこそゲストとして、お呼びいただいて、ありがとうございました」
日向「僕もとっても楽しかったです。また、お話しましょ」
冬羽「桜花先輩と色んな話が出来て、嬉しかったです。ありがとうございました」
夏樹「オレもです、サキさん。今度は、一緒にコラボ配信しませんか!」
サキ「勿論だよ。é4clatの皆んなともだけど、Meleちゃんも含めたプロジェクトメンバー全員で、いつかコラボ配信出来たらいいね。そうと決まったら、作戦会議をしないと。
ということで、本日の営業はこれにて終了です。お送りしたのはパーソナリティの桜花サキとゲストの?」
夏樹「天倉夏樹と」
玲「宮秋玲と」
日向「春風日向と〜」
冬羽「霜月冬羽、でした」
全員「またのご来店をお待ちしています」
一瞬の沈黙の後、スタッフさんの合図で、ラジオ収録ブースには和やかな空気と共に「お疲れ様です」と声が響いた。
「あー、楽しかった。1人で話すのもいいけど、誰かと会話しながらの方が断然、話が盛り上がって楽しいよね。
……と、ごめんね。まだ、お仕事あるから、もう行かなきゃ。またね」
サキさんが扉を開けたと同時に、私達は素早く起立して「お疲れ様でした」と声を揃える。
私も、お辞儀をして顔を上げると、丁度扉が閉まった頃で、ブースの向こう側にいるスタッフさんに軽く挨拶をしながら、立ち去る所であった。
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