第6話 剣とオーブ

「〈開示オープン〉」


 僕は魔法で自分のステータスウインドウを開く。


 装備品の欄には武器とアクセサリーのアイコンに明かりが点っている。


 順番に確認していく。


 武器として装備しているのは、今も腰に携えられている剣だ。

 これは、ヴァレットを封印していた剣をそのまま使わせてもらっている。

 最初に見た時は錆びついてしまっていたが、それが嘘のように眩い銀光につつまれている。

 その輝きはとても大昔に創られたとは思えないほどだ。


 銘を封剣・夜叉。アイテムランクは伝説級にあたる。


 このアイテムランクは大きく7段階に分かれる。

 神話級、伝説級、超級、上級、中級、下級、初級の7つ。


 初級はごくありふれた物。

 僕の防具は初級冒険者の支給品であり、これに該当する。


 そこから下級、中級、上級と質が上がっていく。

 上級ともなればそこそこの値がつけられるが、まぁ一般人でも手に入るラインだ。


 少し違ってくるのが、超級。

 物にもよるが、数百、数千万の値がつけられることもある。希少なモンスターの素材を使った装備などが相当することが多い。


 そしてさらに上の伝説級。

 封剣・夜叉の該当するランクである。

 人間の創作物で到達できるのが、大体伝説級までと聞いたことがある。

 該当するものは世に2つとない逸品とされている。

 ここまでくると、金銭でやり取りされることは少ない。

 時折、商業国家が主催するオークションで出品されることがあるらしいがほとんどが贋作だという噂だ。


 その伝説級を超えるものが神話級とされる。

 実のところ、それに該当するアイテムはほとんどないと言われる。

 見つかっていないのか、はたまたその存在を隠しているのかは分からない。

 あまりに情報がないことから、その存在すら疑問視している人も少なくない。


 かく言う僕もその1人だったのだが。


 所有しているもう一つの装備アイテム。

 アクセサリー、業魔のオーブ。


 そのランクはまさかの神話級だった。


 説明文にはこうある。

 原初たる魔王の力が秘められし物。

 所有者の魔力を増幅する。一は十に、十は百に。求めしままに魔力を与えるが、大いなる力は資格を試す。汝、魔の隣人たれ。


 効果としては、このオーブを通して魔力を高めると、ブーストされる。

 そのブーストは尋常ではなく、数倍どころか数十倍にも及ぶ。

 人並みの魔力しか持たない僕でも大規模な魔力行使が可能になるのである。


 これのおかげで、僕は〈魔武錬成ポーゼライズ〉を使いこなせている。


 〈魔武錬成ポーゼライズ〉は発動後、常時魔力を消費する。

 本来の僕の魔力なら保って数分。

 だが、オーブによる魔力ブーストの恩恵で長時間の維持が可能になる。


 つまりオーブがなければ、戦闘での使用はままならないという訳だ。

 これをヴァレットは見抜いていたのかどうかは分からないが、大きく助けられているのは間違いない。


 あとは、パートナーでスライムのブルー。

 今はここにおらず、封剣・夜叉の中にいる。


 封剣・夜叉は元々ヴァレット封印のために造られたアイテムだ。

 その背景からか、モンスターを封ずる性質を持ち合わせていた。

 その性質を応用し、パートナーのモンスターを格納できることを最近、発見したのである。


 方法は簡単。

 格納したいモンスターに剣をかざし、念じるだけ。

 出す時も同様である。


 これから先、パートナーが増えてくれば、きっと重宝する能力だ。


 装備はこんなところだ。


 封剣とオーブ以外はギルド支給の初期装備だ。

 こうして改めて見てみると、随分とアンバランスな装備である。

 明らかに封剣が浮いており、若干の気恥ずかしさを感じる。


 とはいえ、そうも言っていられない。

 この装備を手に入れてから、実戦経験はないに等しい。


 いくら武器が強力でも、現実は甘くない。

 下手をすれば、全く活かせないことだってあるかもしれない。

 気を引き締めないと。

 心の中で気合いを入れ直す。


 そんな時。


「あれ? もしかしてディノじゃね?」


 僕の背後から聞き覚えのある声がした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る