第26話 ぼっち回避計画

 「今までのあらすじ」

 ここは地球の日本。川原知人(かずひと)は、40代の大学教授で哲学の研究をしている。川原の中の人は、鈴木愛衣(あい)という名前の大学生で、科学技術が発達した別の宇宙の惑星に住んでいた人である。愛衣の心は、地球の川原知人という名前の胎児の中に送りこまれ、今は川原知人として生活している。愛衣は昔の記憶はほとんど覚えていなくて、最初から川原として生まれたと思っている。

 これは川原が高校の時の話である。


 「第26話 ぼっち回避計画」

 私(川原)は高校に進学した。進学した高校は中学校までの知り合いが全然いないところだった。人と話すのがわりと苦手でぼっちになる可能性があった。高校の入学式の前に入念にぼっちにならない方法をずっと考えていた。

 ぼっちにならないように自分から最低1人は話かけるという計画を立てて、とりあえず、隣の人に話しかる事を目標にしたのだった。


 入学式の時、体育館に1年生は集められ隣に座っていたのは、わりと可愛い女の子だった。頑張って自分から話しかけようと思い、相手の方を向き声をかけようとした。「は・・・・じめ・・」ずっと黙っていたからなのか緊張していたからなのかうまく声が出なかった。出たのは、かすれた声だった。相手は一瞬、こちらを見たが、それ以上何も言ってこなかったので、気まずそうに顔を校長先生の方に向けてしまった。今から新入生に向けて校長先生の話が始まるようだ。

 その後、校長先生のありがたい話があったのかもしれないけど、うわの空で話が全然入ってこなかった。


 その後、教室に戻り担任の先生の話などがあった。

 教室での隣の人に話しかけなければ、いよいよぼっちになる可能性が非常に高くなってしまう。それだけは、絶対に避けなければいけない。今のところ、周りの学生との会話は全くなかった。

 隣の学生は幸い、話しかけやすそうな気さくな雰囲気の男の子だった。今度こそ、こちらから話かけられそうだ。入学式前までにどんな会話をするか事前に考えてメモにまとめていた。そのメモを再び確認して話しかけたのだった。


 「あ・・・、あの。はじめまして。川原です・・・。」今度は、途中つっかえたが、最後まで文章が言えた。

 「川原君か。自分の名前は田中だよ」田中は元気に答えてくれた。良い人そうだ。

 「君が今日、はじめて話しかけてくれた人だよ。誰も話しかけてくれないから困っていたから助かったよ」田中は意外な事を言った。田中は見た目と違い、しゃべるのが苦手なのだろうか。いや、でも今、めっちゃスムーズにしゃべっているし、そんな事もなさそうだなと思った。

 「そうなんですね。自分も周りに友達がいなくて、ぼっちになるのが心配だったんですよ」私はそう答えた。わりと話しやすい感じの人だなと思い、安心した。

 「これから、仲良くしていきましょうね」田中はそう言った。私はめっちゃ、良い人だと確信したのだった。


 入学式の会話をきっかけに私と田中は友達になった。田中は予想通り、気さくで愛想が良く友達をたくさん作っていった。私も田中の友達というポジションで自然に友達っぽい人が増えていった。田中と友達になれて運が良かった。もし、入学式の時に隣に座っていた人が、愛想が悪い人で、友達作りも下手な人だったら、今頃、私はぼっちになっていたかもしれない。隣にいたのが田中で良かったと、今、あらためて思ったのだった。


 高校1年生の1月頃から文系か理系かどちらかの選択をする時期になった。高校2年生から文系、理系で習う内容が変わってくるからだ。自分は哲学が好きだし、文系が良いかなと考えたが文系は就職が難しいときくし、やっぱり理系かな。星とか見るのが好きだし、悪くないかもと考えた。

 文系、理系はこれからの人生の決める大事な選択になるのかもしれない。ここは慎重に選択しないといけない。どうしようか私はしばらく考える事にしたのだった。

(続く)

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