第24話 1番古い記憶
「今までのあらすじ」
ここは地球。
川原知人(かずひと)は大学で哲学を教えている40代の大学教授である。
川原知人の「中の人」は、別の宇宙の惑星に住んでいる鈴木愛衣(あい)という名前の大学生である。
「第24話 1番古い記憶」
川原知人の1番古い記憶はいつの頃になるだろうか。
幼稚園に通っていた時の記憶は、わずかにある気がする。自分の通っていた幼稚園を見て、そう言えば、昔ここに通っていたなと思うのだ。
幼稚園の頃の記憶と言えば、大人が読むような小説を読んでいた事だ。文字を読む事は3歳になる頃には、一通りできるようになっていた。文字をスラスラ読むなんて誰でもできる事だと思っていたが、周りは、そうではないらしかった。
なぜ、こんなに文字が読めるのか最近になるまで、よく分からなかった。当時は、親から聞いた話で覚えていないのだが、生まれてすぐに両親が絵本を読み聞かせてくれたらしく、その影響だと考えていた。あと思い当たるのは、ひらがなとカタカナが書かれた大きなレゴでみたいな物で遊んでいたからだと思う。そのレゴは、「り」と書いてあるレゴの裏に「りんごの絵」と「りんご」という文字が書かれていた。それで物の名前を覚えるきっかけになったようだ。
物の名前等はカードやレゴでたぶん覚えたような気がする。動物の絵がかかれたカードで動物の名前を覚えて、魚の絵がかかれたカードで魚の名前を覚えたのだろう。
私は母国語の言語をどのように覚えたのだろうか。誰でもそうだと思うが自分自身の事だが全く覚えていない。普通は両親とか周りの人間の話す言葉の「頻度」で覚えたと考えるのだろうが、名詞ならそれで覚える事ができそうな気もする。
例えば、りんごを見て、これはりんごだと分かる、それくらいならできそうだ。しかし、文章はどのように覚えるのだろうか。文法すら分かっていない状態で生まれた人間が文章を読んだり、書いたりする事ができるようになるとは、到底、思えないのだ。文法が国によってかなり違う事を考えれば、文章を文法を知らない状態で生まれた人間が理解できる訳はないように思われる。
文法は生まれる前から人間は知っていると考えた方が良さそうだ。それなら、主語となる言葉と、動詞となる言葉を覚えれば、文章をしゃべれるようになりそうだ。しかし、それなら国によって文法が違うのは、なぜなのだろうか。国によって言語の文法は違う。主語と動詞の順番が逆になっている言語もある。
語順が世界共通であっても良さそうだ。しかし、そういう事にはなっていないのだ。不思議な事である。何も知らない人間が言語を覚えるのは、かなり無理ゲーな気がするのだった。
こういう言語に対する興味は昔からあった。こういう事に対する興味が哲学者になったきっかけだったのかもしれない。
(続く)
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