第13話 太陽が2つある星

「今までのあらすじ」

 私の名前は川原知人(かずひと)。大学で哲学を教えている。

 そんな私は夜に夢をみる。

 夢の世界はこの世界より科学技術が遥かに発達していて、船が海の上を飛んだり、空中を歩けたり、語学の同時通訳ができたりするのだ。


 「第13話 太陽が2つある星」

 夢でみた海の見える丘は、どうやらここではなかったようだ。では、いったいあの場所はどこなのだろうか。

 夢の内容を記したノートをみかえすと、「太陽が2つ」という記述が気になった。

 もしかして、夢でみた場所は地球ではないのではないか。地球からは太陽は1つにしかみえない。太陽が2つ。そんな星はあるのだろうか。


 調べてみると、それはどうやらあるようだ。

 はくちょう座の方向に「スター・ウォーズ」に登場する惑星「タトゥイーン」のように、太陽が2つある星がある。 系外惑星「ケプラー16b」というらしい。

 この星は巨大ガス惑星で、生命が住んでいる可能性は低そうだ。どうやら、この星が夢でみた場所ではなさそうだ。じゃあ、どこなのだろうか。わからない。

 もしかしたら、この宇宙には太陽が2つあり、夢でみたような科学技術が発達しているような場所はないのかもしれない。

 宇宙は無数にあるという人がいる。この宇宙以外にはも他の宇宙が数えきれないほどあり、そんな他の宇宙には夢でみたような場所があるのではないか、私は直感的にそんな気がした

 

 もし、仮に他の宇宙の他の星に夢でみたような科学技術が発達したドラえもんの未来の世界みたいな場所があるのだとしても、私はそこに行けないと思った。他の星どころか隣の星にも今のこの世界の科学技術では気軽に行く事はできないのだ。もちろん金さえかければ技術的には月くらいならわりと簡単にいけるのかもしれないけど、他の惑星に海外旅行に行くような感じで行ったりはできないのだ。

 私はそんな現実をあらためて思い出し、少し気分が落ち込んだのだった。


 話は変わるが、私は大学で哲学を教えている。学生の理解度は著しく低く、レポートを書かせてもろくなものが提出されないのだ。もちろん、私の指導能力の低さも原因の一つなのだろうけど、学生の学力が落ちているからという理由が大きいように感じた。哲学なんて高校までにろくに勉強してこなかったような人が多く、そもそもあまり興味がないのかもしれない。レポートも課題として出されたから、興味ないけど嫌々書いたのかもしれない。そんな理由があり、レポートの文章も普段のその学生の能力を遥かに下回るレベルになっているのだ。私は根本的に授業のやり方などを変えないと、お互い不幸になるだけだと思った。私が哲学を教えても、余程のもの好き以外は、何の意味もなさそうだ。

 私はそんな事を常に考えているのでメンタル的にもかなりきつくなってきた。

 

 私は夢の世界に、便利過ぎて自分で考える力がつかなくなるという危険性もあるけど、憧れもあった。語学を勉強せずにアメリカ人などと会話できるのはかなり便利で良いと思ったのだった。

(続く)

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