T湖 【七特獄】
僕が謎に
次の心霊スポット……T湖に着くまではさっきのSトンネルまでの移動時間と同じように、僕のお勉強の時間だ。
『奈良県と京都府というのは、いわゆる【
という環ちゃんの言葉に、僕はふぅむと
出雲は
言われてみれば、納得はいく。
まぁ……僕が訊きたいのは圧倒的にその部分ではなかったけどさ。
「……」
『……』
気まずい……大変気まずい。
沈黙が、まだまだ明ける気配のない夜の
何から訊いて良いのかわからない僕と、これ以上何から話せば良いのかわからない環ちゃんで……お互いに相手の出方を伺っているのだ。
はいそこ〜!!
「何だそれは……早く訊けよ。黙ってるとは信じられないくらいに
環ちゃんが言うには、現在地からT湖まで歩きで約三十分くらいあるんだから……少しくらいゆっくりしてても良いんだよ!!
それに……。
【しちとくごく】なるものがどうとか、席がどうとか……。
理解出来ない事がありすぎるんだよ……。
むしろ、歩きながらここまでの思考を出来ている事を褒めて欲しい。
すごくない?
十分すごくない?
……残念ながらそれを褒めてくれるような人も霊もいないらしいので、諦めて一つずつ訊いていく。
「……特級獄卒ってさ、七人しかいないの?」
『うん。そもそも今って、地獄には日本の人口より少し少ないくらいの獄卒がいるんだけど……その中に現在七人しかいない事から、特級獄卒は【
日本の人口って……約一億二千三百七十九万人だっけ?
それの中七人ってマジかよ……もはやキモいレベルで強っ!!
「第何席……とかいう話も、その【七特獄】に関係するやつだったりする?」
あまりの強さにもはや恐る恐るという態度で訊けば、環ちゃんは簡単に頷いた。
……一瞬ビビったけど、猫の姿だとどれだけ強いと知ってもなんか和むな。
今度抱っこさせてもらえるか訊いてみよ。
モフりたい。
『そうだね。特級獄卒には
自由に動けないとか、上三人誰なんだよ。
というか……。
「環ちゃん以上に強いってさ、もうその人達だけでやれば良くない? 今その人達がやってる事を、環ちゃんとかがやれば良いじゃん。そしたら危なさも減るでしょ?」
強い人が危険な事をやって、そうじゃない人を守る方が絶対良いでしょ? という僕の疑問に、環ちゃんは首を横に振った……何でだよ!!
『
……お嬢さん。
今、なんておっしゃいました?
神羅さんが、何ですって……?
……あのリア充代表イケメン、出世もしてやがったのか!?
何がボッチだ……クソ……。
多分地獄で二番目くらいの地位じゃねぇかよ……クソボケが……。
今度会ったら、ダル絡みしてやろう……。
「……ん? 閻魔様が第弐席? 第壱席の人は?」
一人で勝手に凹む僕に首を傾げる環ちゃんは、僕がそう訊くと歩くスピードを更に落として僕に寄り添いつつ話した。
『あの人は閻魔庁から独立している観測係の創設者で、私の唯一の上司だけどさ……本気を出したら一瞬で現世を
まぁた出たよ、環ちゃんのさらっとすごい事言う悪い癖。
現世を一瞬で焦土にですって?
ははははは〜。
流石に冗談きついって〜。
そんなことある訳……え? あるの?
「もうその人だけで良いじゃねぇかよ……禁止せずに活かす方法を探れよ……」
僕がもう疲れた……というような心情で呟くと、環ちゃんは少し黙ってから一つ僕に質問を投げかけた。
『盾くんはさ……例えば、象が
……?
「無理じゃない?」
首を傾げた僕に、環ちゃんは
『盾くんが今言ったのは、つまりそういう事。
あの人から見たら、人も悪霊も
あの人は、それでも蟻を踏み潰したくないんだ。蟻の生き様に心を寄せて、
ふぅん……なんか優しくて良い人っぽい事は、十分伝わったよ。
後は知らん!!
人の噂って、割と脚色されたりするから……自分で会ってから判断しよう。
一通り説明を聞いて、僕がある程度納得した事がわかったのか……環ちゃんはいつものスピードに戻って僕を少し急かしながら話を変える。
『さて……じゃあそろそろ、T湖について説明しようか』
という環ちゃんの言葉に目を光らせて、
「おお!! やった!! 早速聞かせてっ!!」
などという声を思わず上げた僕を、心なしか僕を
『まずはいわくからかな?』
と尻尾を振りながら話す環ちゃんに、僕は高速で相槌を打つのだった。
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