第13話 レベル10
──タァーン!
銃声で覚醒致しました。おはようございます。隣で寝ていたノーナ様が居ません。わたくしは蛍丸を取り出すと、リビングへ走り出しました。
「ソーリー! うるさかったよね!? ごめんなさい! 斬らないで!!」
「……斬りませんよ。何をしているんですか?」
「レ、レベル上げ……」
「せめて私が起きてからにしませんか? あと下も服を着ないと風邪を引きますよ」
なぜか上は上着まで着ているのに、下はパンツだけのノーナ様が、ベランダから外のゾンビを撃っていたようです。そういえばノーナ様のレベルは9でしたか。予想では10になったらインベントリの1列が……つまり12個広がるのでは、というお話でした。
「ごめんね? 目が覚めちゃったけど、やることなくってさ……。レベルが気になっちゃって」
「やることないのはわかりますが、わたくしはもう少し寝ていたかったですね」
「ごめんってホマレ! だから刀を仕舞って!」
時刻は午前5時です。まだ日も昇り切らぬ時間ですのに、ノーナ様は勤勉な方なようですね。
「でしたら念のため後ろで見ながら準備をしていますね。それってゾンビは寄って来ないんですか?」
「ありがとう、ホマレ! ゾンビたちは……下に集まって来てるかも。これから掃除するよ」
「弾は大丈夫なんですか?」
「あと300発と少しだね。横須賀に着くまでに100発くらい残しておけばいいと思うんだけど」
「危なそうでしたら、わたくしがお掃除しますね」
銃声をBGMにわたくしは出発の準備をします。洗面器に水をためて顔を洗い、髪を梳いて、いつもの服を着ます。
朝ごはんはどうしましょうか……。粉末スープの素なんかもあったのですが、お湯が沸かせません。わたくしたちに早急に必要なのはカセットコンロですね。
「オゥ!? やった! やったよ、ホマレ!」
銃声を聴きながら乾パンをかじっていると、ベランダでノーナ様が歓喜の声を上げました。ライフルを肩にかけたまま室内に入ってきて、踊って喜ぶノーナ様はやはり愉快な方です。でもフライトジャケットにパンツはやはりおかしいと思います。
「どうでした?」
「予想通りインベントリが1列増えたよ。それと『リロード』って言うスキルを覚えたんだ!」
「おめでとうございます。『リロード』……ですか?」
「ホマレにわかりやすく言うと、弾や燃料を一瞬で満タンにしてくれるスキルだね!」
「それは……便利ですね?」
「緊急時ほど役に立つスキルだね。ガソリンも入れられるなら楽でいいね。『リロード』!」
ノーナ様がそう口に出すと、カシャンとライフルから音がしました。それからレバーを引いてライフルの中を覗きます。弾をこめるところから確認するんですね。
「ワオ! できてるできてる!」
「すごいですね。おめでとうございます」
「……空飛べる人に言われても素直に喜べないね。それにインベントリから弾が減ってる。流石に生成されたりはしないか……」
「わたくしは空を飛べるわけではありませんよ。あれは走っているんです」
その後、わたくしたちは準備と荷物整理をして出発することにしました。もうこの家にも帰って来ないでしょう。鍋や消耗品などは詰め込めるだけインベントリに詰め込んでおきました。
「それでは行きますか」
「準備オッケーだよ! また裏口から出て、バイクで移動でいいかい?」
「はい。それで行きましょう。ルートはどうしますか?」
「まずはコンビニに行かない? 乾パンはもう嫌だよ!」
「それには同感です」
◇────────────────◇
わたくしたちは、近くのコンビニまでゾンビの方たちを神の御許へ送りながら移動しました。コンビニの中に居たゾンビが少し暴れていたようで、中は少し荒れていましたが、その方を神の御許へ送ったあと、わたくしたちは保存の利きそうな食品をいただくことにしました。カップラーメンやレトルト食品、賞味期限の長いお菓子類です。水も補充しておきましょう。
「代金はどうしましょうか?」
「もういいんじゃないかい? 誰も回収しないだろうし、そもそも貨幣に価値があるのかな?」
「そう言われてみると……」
「気になるなら現金を置いていってもいいと思うけど……」
「……ごめんなさい。わたくしクレジットカードしかありませんでした」
「アハハ! ホマレらしいね!」
文化的な食事を手に入れたわたくしたちは、再びスクーターに二人乗りをすると、横須賀に向かって出発しました。
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