第25話 夢
「ダンジョンはランダム構成なんだよね?」
「そうよ。入り口でランダムになるよう魔法がかけられていて、ダンジョンが発生してから今までずっとそうやってきているの」
「ボスは一緒だったりする?」
「そうね。皆ボス部屋にはオークがいるって言っていたわ」
オークは2本脚のブタだったか? それが共通の敵。だったはずなんだが、何故か私が入ったところだけ今までいなかった敵と遭遇した、と。何故こんなことが起きているんだ。
「調査隊を送り、調べてみるわ」
さきほどまで私たちが言っていたことを紙に記し、誰かに渡していた。あれが誰かにわたり、調査隊とやらが動くのか。
「……信じてくれるの? もしかしたら嘘かもしれないのに」
「嘘だったらこれが知らせてくれますよ」
そう言うと、ユルリカがカウンターから自分の年齢などを知る時に使っていた水晶を出してきた。手をかざすときにだけ動くものかと思っていたが、それ以外にも用途があるとは。ただ、ここには数多の冒険者がいる。それにすべて反応などしていたら壊れるのでは?
そう問いかけてみれば、対面で報告してきた人にだけ発動していると答えが返ってきた。
「水晶ってすごいね」
「ええ。だから普段は大事に保管されているの」
それはそうだ。そんな大事なものが盗まれてでもしたら
そういえば、ここに来る前と来た後の体力が戻っているような気がする。些細なことなんだがな。
聞いてみるか
「このギルドには魔法がかけられているの。アーロ君にはまだ分からないかもしれないけれど、冒険者の方々がここに返ってくると疲れが少しだけ取れるのよ」
「そうなんだ」
明らかに変わったと分かる日がいつか来るのだろう。
「アレシアお姉ちゃん、大丈夫?」
「……うん」
ふと横を見ればアレシアが明らかに落ち込んでいる。人が死んでいく声を聞いたのだ。直接見ていたら、彼女は気を病んでいたかもしれんな。
「ユルリカお姉ちゃん、明日僕のお仕事ってある?」
「明日は何もないわ」
「アレシアお姉ちゃん、今日はお金がある分だけご飯いっぱい食べて寝よう! 僕ミードですぐ酔っちゃうけど、飲もうよ」
食べて飲んで寝る。それが回復になる。それは異世界だろうとどこだろうと共通だ。
「アーロ君は怖くないの?」
「うん、僕は故郷でいっぱい見て来たからもう慣れちゃった」
殺す側の立場だったが、常に人や怪物の死を間近で見て来たのだ。慣れる物だ。いつかはな。
「すごいね。私は慣れないや」
「そっか。……とりあえず、ご飯食べよ? お腹が空いたままじゃ元気も出ないよ?」
もうすでに夕方になりかけている。ギルドの近くの宿はもう取られているかもしれないが、1部屋なら開いているかもしれない。
「お姉ちゃん、行こう!」
アレシアの手を握り、ギルドのドアを開ける。しっかりとユルリカにも手を振って挨拶してな。
アレシアは手を引っ張られてよろけながらもついてきている。
「なぁ、アレシア。お前に夢はあるか?」
「夢?」
「ああ。私はな、平穏な日常を夢見ているんだ」
向こうの世界にいる想い人と私の上司とともに静かな場所で生活をすること。誰かから殺してこいなんて言われることもない日常。
「平和に日常がいるんだったらなんで冒険者になろうって思ったの?」
「お金と知識がいるんだ」
「知識?」
「ああ。お金は生活の為、知識は怪物を殺すために必要だ」
私を小さくする呪いをかけ、武器も力も奪ったやつを殺す。その為には知識が必要だ。それだけではない。ここにいる怪物たちを殺すのにもいる。知識は自身の力となる。だから必要なんだ。
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