第24話 ギルドに報告
ベッドから立ち上がり、窓を開ければダンジョンの中へ入って行く冒険者たちが見える。
「ねぇ、アーロ君。あの3人のこと伝えたほうがいいよね」
「そうだな。ただ、どうやって伝えるかだ」
死んだという証拠が手持ちにない。
「アレシア、出た時に門番に言わなかったのか?」
「アーロ君の解毒の方が先だよ……!」
入った時と出た時の人数が違うから、不思議に思った門番が聞いてくるはずだが、確かに解毒の方が先か。
「なら今から報告しにいかないとな」
「私がしてくる」
意気揚々と出ていこうとするアレシア。姿とか名前とか言えるのだろうか。ボス部屋の前で軽くは言ったが、詳しくは話せんだろう
「説明しに行くと言ってもあいつの特徴とか言えるのか?」
「……言えない、かも」
「連れて行ってくれ。まだ、まともに歩けそうにない」
その場に座るくらいならまだ平気だが、歩くとなるとまだふらつくかもしれない。ベッドから降りるだけでも足元がフラフラだ。
「おんぶしようか?」
「いや、いい。この年でおんぶされるのは恥ずかしすぎる」
私に背中を向けてしゃがんだアレシア。する気満々だったな。そして断られて落ち込んでいる。
「おんぶは嫌だが、服は掴ませてくれ」
「うん」
頼られるのが嬉しいのか、始終笑顔だった。アレシアの服を掴み、ゆっくりとだが部屋の外に出る。アレシアも私の体調を気遣って歩幅を合わせてくれていた。
さて、どうやって証明するか。ダンジョンの内部は入った時にランダム構成されていると言っていた。ボス部屋までは行った。そこまでで拾った落し物をアレシアも持っている。それで判断を付けることは出来るかもしれんが、ボス部屋の中までは2人ともいっていない。だから言葉でフレースヴェルグがいたと説明ても証拠がないと言われるだろう。ましてや私は今、子供だ。とても信じてもらえないだろう。最悪おいていったとも思われるかもしれない。
「アーロ君?」
「もうついたのか?」
「うん」
考え事をしていたらいつのまにか街について、ギルドの中にいた。目の前にはユルリカがいる。
……たとえ信じてもらえなくても、嘘偽りなく言うべきだ。
「……ユルリカ姉ちゃん」
「どうしたの? 他の3人は?」
「ダンジョンでボスに……」
「……そっか。怪我は?」
「ないよ。アレシアお姉ちゃんも怪我してない」
「もし、よろしければどのようなことがあったか教えて貰えませんか?」
アレシアにむけてそういうユルリカ。私が子供だから初めて体験した状況に説明が出来ないだろうと思ってアレシアに問いかけたのだろう。
「ダイムサルンダンジョンに行ってきました。そこで1階層はゴブリン。2階層目はスライムと順調に進んでいったんです。そして、中ボスの前まで行って、扉を開けて確認したら中に……」
「リスがいたの。異様に生え出ている歯が生えてた」
紙に私たちが説明したことを書いている。
「リス……ですか? ダイムサルンというとFランクのダンジョンですよね。今までいろんな方が行っていましたが、リスが出たというのは一度も聞いたことがありません」
今まで無かったことが私たちが入った瞬間にダンジョンで発生したというのか。
「ラタトスク。この名前に聞き覚えはある?」
「私自身は聞いたことがないけど、調べてみるわ」
席から立ち、裏へ向かって行った。本を取りに行ったのだろう。
だが、名前を言ってみたが、受付をしているユルリカでさえ聞いたことがないという。
いったい何が起きているんだ。アレシアと会った時もそうだった。冒険者になったばかりの新人がよく行く薬草採取の場所に、普段なら違う森にいるトキシン・ブルとあってしまった、と。
「らたとすく、ですか?」
「うん」
「……この本にも載っていないですね」
分厚い本をカウンターに置き、すべてのページに説明と絵が付いているが、見つけられていない。
「ちなみにボスは何だったか覚えてますか?」
「えっと、確か……」
思い出そうと首をひねっているアレシアの手助けをする。
「フリーズヴェルグ。ハゲワシの姿をしている巨人」
「鳥類ですか? それとも人?」
「あれは鳥だよ。風を使う怪物」
「……それも載ってないみたいです」
私の言葉を参考にユルリカが探しているが、分厚い本には何も載っていなかった。では、何故載っていない怪物が出てきたのだ。しかもFランクのダンジョンで。
まるで、誰かを殺したがっているようだ。
でなければ、トキシン・ブルもラタトスクもフリースヴェルグのことも説明できない。
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