第21話 二階層へ
倒したゴブリンから緑色に輝く石が落ちている。あれはなんだ?
「みんな魔石取り忘れないようにな」
魔石? 宝石とは違うものなのだろうか? 座り込んでいた他2人がゆっくりと立ち上がり、次々と拾っていく。
「アレシアお姉ちゃん、魔石ってなに?」
「魔物とかが持っている力の源だよ」
「力の源かー」
なるほど。私が今まで倒して来た怪物たちでいうところのコアみたいなものか。あいつらはそのコアをそれぞれ持ち、それがデカければデカいほど魔法を使うことができ、そして、森全体を自身に合った環境に作り替えることが出来る。何度もそれで苦戦してきた。こちらではどうかは分からないが、これから最下層へ進んでいく。その時に分かるだろう。
「よし、次行くぞ」
「ええ」
そのまま洞窟の奥へと進み、次の階へ繋がる階段を見つけた。
次は何が来るのだろうか。
そういえば入る前にあれほど多くいた冒険者を1人も見かけない。1人でここに挑戦しているなら見えないのも分からんでもないが、私たちが入る前に複数の人数が入って行ったのだが、どこかで分かれ道があったのだろうか。だが、歩いてきたところは一本道だった。分岐している所は無かったはずなんだが。
「ねぇ、他にいた冒険者の人たちはどこに行ったの?」
前を歩いている斥候のカリスタに聞いた。今のところこの5人以外の気配はない。
「同じ場所で別の時空にいるよ」
「どういうこと?」
「簡単にいうと、姿は見えないけど同時進行しているっていうことかな」
いまだよく分からないが、似たような空間がいくつもあるということなのだろうか。そして、どこに行くかは入ってみないと分からない。
「他のところも洞窟なの?」
「いや、噂だとどこかの道を摸倣した場所とか」
「そこには何が出るの?」
「Fランクでも倒せるモンスターだね。例えば狼とか」
狼か。装備無しなら苦戦するだろうが、この世界にはそれ以上の怪物がいる。それに装備はしっかりとしている。苦戦することもないだろう。慣れていれば、だがな。
次の階へと進む階段を降り切ったときに視界に広がったのはレンガで作られた道だった。さて、ここには何が出る。
「スライム!」
スライム。粘着質な体を持っている怪物。時に酸を撃つ奴もいる。今は両目とも見えているが、私の右目を溶かしたやつだ。あれには苦戦した。切っても切っても増えていくのだからな。そして、他の怪物たちと同様にコアを壊せばそいつは息絶える。
「アーロ君はその場から離れてしゃがんでて」
「う、うん」
当然下がるさ。
近づいてきたスライムは緑、水色、赤、黄色と色とりどりだった。前、私が見たのは緑色だったが、ここでは多くの種類がいるのだな。スライムと接敵すると、まず先に攻撃したのは緑のスライム。酸を撃ってきたが、全員避けていた。それはそうだ。まともに喰らって自身の装備が溶けたらこの後が大変になる。避けられた酸はレンガの壁に当たり、その場所は溶けた。
が、すぐ元に戻った。ダンジョンというのはすごい所だな。普通なら溶けた場所はそのままになっているはずなのだが、ここでは何事もなかったかのように綺麗になった。
「やぁああ!」
ローリンが緑色のスライムの魔石とやらに剣を突きさしている。魔石が真っ二つに割れ、スライムが溶けた。
「protect!」
一瞬光ったと思えば黄色いスライムが私たちに向けて光を撃ってきたが、マリンダに塞がれた。マリンダの前にうっすらとだが、透明な壁が見える。それに時々バチっとはじける音がしている。あのスライムが撃ったのは雷だったのか。喰らえばひとたまりもない。運がよければ
「マリンダお姉ちゃん、大丈夫?」
「ええ、平気よ。アーロ君は?」
「僕も大丈夫」
透明な壁を張ったまま、マリンダの上に石が出現し、それぞれが鋭くなっていく。それがその場で回転し始めたと思えば、スライムに向かった勢いよく飛んでいった。全てが当たったわけではないが、何個かがスライムの魔石に当たり、溶けていく。
魔石を壊しているから当然だが、その場に残らないんだな。
「これでラスト!」
カリスタがナイフでスライムの魔石を壊した。周りからも粘着質な音は聞こえない。これで次に進めそうだ。
「みんな怪我していない?」
「平気だ」
「私も」
「アレシアお姉ちゃんは?」
「平気!」
ずっと声は聞こえていなかったが、なんとか生き残っていた。良かった。
さて、記録を残しておかなくては。
記録
2階層目
敵 スライム(数多の色)
死傷者 0
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