第13話 ギルドマスターとの会話
「それにしても
ギルドマスターと呼ばれる男が私を見ている。
「体格差があるにも関わらず、よく対応した」
「え! すごいね、アーロ君」
「そうでもないよ」
私を褒めているが、そもそも酔っ払い大男は恐怖の対象にはなっていない。実際ここに来る前は5メートルほどの怪物を相手したことだってある。それよりもだ。
「ねぇ、アレシアお姉ちゃん。ご飯食べ終わったら受付に行くんじゃなかったの?」
「あ、そうだった! 失礼します、ギルドマスター」
ギルドマスターと呼ばれる男にアレシアが頭を下げ、小走りで受付に向かっていく彼女を追いかけた。ギルドマスターの視線を背に受けながら。
「あの、先程のお話を」
「はい、お待ちしておりました。それと、怪我の方は大丈夫ですか?」
「全然平気です」
「それならばよかったです。では、詳しくお聞きしてもよろしいでしょうか?」
トキシン・ブルと対峙していた時のことをアレシアが説明していた。ときおり私が補足説明することはあったが、それ以外はほとんどアレシアに任せている。
どうやって倒したのか、その後どうしたのかなど。その後にさりげなく処理の仕方を教えて貰おうとしたが、秘密にされてしまった。門外不出だと。全てなのかと思ったのだが、特殊な怪物以外は本や講習を受ければ
となると、トキシン・ブルは特殊な怪物ということになるのか。考えてみればフグなんかもそうだな。あれを
「もし、今度見つけたとしても対応しないように。速やかに逃げてください」
「わかりました」
処理の仕方は覚えられなかったが、ここで抗議はしなかった。なるべく目立たないように暮らしながら呪いを解く方法を探さなくてはならない。それのためには必要なことだ。
「今日はもう夜遅いのでギルド併設の宿へ止まってください。アーロ君は明日来たらここに来るようにね」
「分かった」
明日から仕事が始まる。何をするかは分からないが、生きる為には必要だ。
ギルドから出ようとしたところずっと見ていたギルドマスターに呼び止められた。その手には羊皮紙を持っている。アレシアと私ではなく私自身が呼ばれている。いったい何の用だ。
「すぐ終わる。立っているのもなんだ、座って話そう」
さきほど食事をしていた円形の机の椅子に座っている。アレシアもと言ったが2人だけで話したいと言われてしまった。ミードとはいえ少量のお酒を飲んだせいもあってすでに眠気が限界に近い。
「すまんな」
「なに?」
「鑑定をした結果を見たんだが、坊主、どえらいものを習得しているな」
そう言って紙を見せてきたが、この世界で書かれている文字はまだ読めない。そのことを伝えると、一瞬驚いた顔をしたが、何のことを言っているのか説明してくれた。
「スキルのことだ。ガンってのが良く分からんが、その他が中距離・近接向きだ。どこかで習っていたのか?」
ここはどう言うべきだろうか。嘘を
「……僕がいた国で
「なるほど。それであの動きってわけか」
ギルドマスターが腕を組んで頷いている。あの場面を見られていたのか。見られたところでって感じではあるが。本来の動きとはまだまだ程遠い上に、我流も混じっている。それに、こことは異なる世界の武術だ。怪しまれることもない。
「坊主のいる国は危険で、お前さん1人逃げて来たということか」
「うん。僕の国はないから」
私の言っていることの半分は本当で半分は嘘だ。この世界に英国はなく、私がいた場所は危険である。それが本当。相手にとって私の『ない』が嘘ということになる。人を信じ込ませるにはこの話し方が1番いい。
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