第8話 いざ、街へ
「は……!」
なにかの鳥の鳴き声で起こされるなんて初めてだ。それにいつも以上に体が軽い。お腹が空いた。喉も渇いている。そして、ひさしくならなかった筋肉痛になっている。
自身の手を見ているから他人からそうだと言われたらそうなのだが、本当に子供になっているのだな。大人の時とは違い回復が早い。
「おはよう。ぐっすり眠ってたね」
「怪我は?」
「大丈夫だよ。大した怪我じゃなかったみたい。手首を捻っただけ」
手首には何も治療を施していないが、平気なのだろうか?
アレシアが片腕にキノコを抱えて持っている。あれは食べられるやつなのか? 取ってきたから大丈夫なやつだと思うが、世の中には食べられそうで毒をもっているキノコもある。
「それ食べられるものなのか?」
「たぶん……?」
「今すぐ捨てろ」
「でもおいしそうだよ」
「いいから捨てろ」
首を傾げているアレシアに近づき、すべてのキノコを森の中に勢いよく投げ捨てた。「ああ……」なんて悲しそうな声が聞こえてきたが、分からないものを口にするほどの挑戦心はない。寝て回復したとは言っても、完全に回復したわけではないこの体で怪しいキノコを食べて死んだら元も子もない。
「食事はあの街でも出来るのだろう? あの場所についてからだ」
「う、うん」
「それと、お金が稼げるようになるまでの間だが、よろしく頼む」
それまでの間にこの世界の常識と稼ぎ方を知らなくては。それに子供の姿になっているならそれを最大限使う。当然話し方や行動もだ。
「それで、教えてくれないか。この国について」
「ここはギイマ王国という場所で、あの街はエペンプールというところだよ。ここはダンジョンとかが多くて冒険者が集うだけじゃなく、商人もいっぱいいるの」
「商人が何故いる?」
「ダンジョンから出た宝物を買い取ってくれたりするの。それだけじゃなくて魔物の皮とかを服とかに変える職人さんもいるよ」
「これもそうなんだよー!」と自分の服をつまみながらえっへんと胸を張っている。
エペンプールというのはおそらく地名のことだろう。しかし、
「冒険者というのは?」
「冒険者は魔物とかを倒してお金を稼いだり、困っている人がいたりしたら助ける人たちのことだよ」
そして、旅をしながらこの呪いについて調べる。これが一番重要だ。子供のままでは出来ないことの方が多い。
「アレシアは、冒険者というやつなのか?」
「そうだよ。まだFランクだけどね」
「ランク?」
「うん。冒険者はランクっていう制度で順位が決められてるの」
アレシアが言うには一番上がSランクだという。そして依頼というものをこなして順位を上げていくのだとか。だが、上にいけばいくほど依頼の難易度も上がっていって死ぬ確率も高くなる、と。
ある程度生活出来るお金が手に入れば上位である必要はない。情報を得るのに上位であることが必須ならばとらないといけないが、今は目指さない。
「いつか上位ランクになってお母さんたちを楽させたいんだ」
「そうか、頑張れよ」
「うん。あ、もう少しで街に着くよ」
あれほど遠くに見えた街が目に見える範囲まで近づいてきた。石をレンガ積みにした壁が立っており、その間に門あり、そこに向かって長蛇の列が出来ている。中に入るまではもう少しかかりそうだ。
「あ……」
「どうした?」
「アーロ君の入国料どうしよう。足りるかな」
入国料か。英国から出たことがないから分からんが、国に入るのにお金がかかるのか。だが、アレシアはどうするんだ。
「ギルド証の提示を。子供は銅貨10枚だ」
「あ、はい」
「よし、通っていいぞ」
少しずつ前に進んでき、門の前まで来た。並んでいる時は槍を持った門兵が2人いたのは見えていたが、その間にも人は居たんだな。少しずつしか進んでいなかったのはここで確認するためだったのか。門兵の1人に言われ、アレシアが腰に付けてあったポーチから小さい麻袋を取り出し、渡している。銅貨がこの世界のお金になるのか。
「感謝する。この恩はいつかどこかで返す」
「いいんだよ、気にしないで」
涙声になりながら、すっからかんになった財布をポーチに直している。取り出したとき微かに金属が擦れた音がしていたが、今ので全てなくなってしまったようだ。
「ようこそ、エペンプールへ」
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