第9話 冒険者ギルドへ
ダンジョンというのが、未だどういうものかわからないが、街が栄えているというのは確かなようだ。大きい刃物を持っている者がいたり、大通りに店がそこかしらに構えられている。賑やかすぎで耳が痛くなる。これほど賑やかな場所には初めだ。初めてすぎてめまいがする。人混みにも酔いそうだ。
「とりあえずギルドに行かなきゃ」
「ギルド?」
「うん。さっき説明してた冒険者達が集まる場所のことだよ。一緒に行って見てみた方が分かりやすいよ」
私の手を掴んでそそくさと歩いていく。恥ずかしさで顔が熱くなっているが、こんな何も知らないところで迷子になるよりかはいい。
早く大きくなりたい。
「ここが冒険者ギルドだよ」
白い石で積み上げられた建物が目の前にドンと構えていた。そして左右にも小さいが似たような物が建てられている。屋根は木材だろうか?色が黒色に塗られているからどの木を使っているかはわからない。
まぁ、そんなことはどうでもいい。
アレシアが木製のドアを押し開けて中に入っていく。外もうるさかったが、ここは余計にうるさい。いや、騒々しいと言ったほうが正しいのかもしれない。
それはそうなのだろう。冒険者達が円形の机を囲みながら飲み食いしているからだ。あれは酒なのだろうか?
「依頼完了しました」
「はい。では確認しますね」
周りを見ながら歩いているといつの間にかカウンターらしき場所に付いていた。カウンターの奥には、目の前の女性と同じような服を着た人たちが忙しそうに動いている。
「依頼受けてたの? 知らなかった」
アレシアが目を丸くさせて私の方を見ている。急に話し方を変えたから驚いたのだろう。この体であの話し方をすると違和感を覚えさせてしまう。この世界に馴染んで生活しないといけないのだ。当然話し方も変わってくる。
「あ、アーロ君、その話し方は……」
「何言ってるの? 僕いつもこんな話し方でしょ?」
首を傾げながらアレシアの服を掴み、彼女の顔を自身に近づけさせた。
「ここではこの話し方で通すつもりだ。最初は慣れないだろうが、上手く対応してくれ」
「で、でも」
「頼む」
「わ、わかった」
向かい側の女性に聞こえないように、小さい声でアレシアに語り掛けた。よっぽどの地獄耳でなければ聞こえはしないだろう。
「どうされました?」
「ううん、なんでもないよ、お姉ちゃん」
とびっきりの笑顔は作れないが、口角を緩く上げ、いつもより少しだけ目を大きく開けながら相手を見つめ、ゆっくりと首を横に傾ける。これをすることで
目の前の女性が何歳かは分からないが、『お姉ちゃん』呼びすれば女性は嬉しく思ったりする。まぁ、全員ではないが大概の女性は。
実際とろけたかのような笑顔をこちらに向けている。
「あ、あのー」
「は! すみません! 依頼の確認ですね」
そういえばアレシアの依頼とやらを見てもらっているんだったな。邪魔をしてはいけない。
アレシアが鞄から草を出して、それを目の前の女性に渡している。あれは何になるものなのだろうか。すり潰したやつを傷口に当てるようか、それともあのマズイ飲み物か。
「ライクル草の採取50、依頼完了です。こちら報酬の銀貨5枚です」
机の上に銀色に輝く硬貨が置かれた。これは先程門をくぐった時に見たものとは違うものか。
なるほど、こうやってお金を稼ぐのか。自分もこの依頼というものを出来るだろうか。聞いてみるのが一番だな。
「ねぇお姉ちゃん。僕でもこの依頼って受けられるの?」
「僕が何歳かにもよるかな? 13歳以上だとギルドに登録は出来るけど、薬草採取がほとんどになるよ」
年齢か。声変わりする前だということはわかってはいるが、今の自分が何歳かは分かっていない。手を見ても年齢なんてわかりはしないだろうな。
「……あのね、僕、年齢わからないんだ」
「たまにそんな子もいるわ。じゃあ、手を出してみて」
カウンターの下から水晶を取り出してきた。あれでわかるものなのか? 少し怪しいが、言われた通り手を差し出すと、私の手首を掴み、水晶の上まで持っていく。掴まれたときに少しだけ驚いてしまったが、それに気づいた女性が微笑みながら「大丈夫だよ」と励ましてきた。
「少し待ってね。今映し出されるから」
【 名 前 】 アーロ・ガルシア
【 年 齢 】 11
【 体 力 】 50
【 魔 力 】 なし?
【 スキル 】 コンバット・ランス・ガン・ハンティング
だと言われた。コンバットは近接戦闘のCQCのことだろう。ランスは槍だが、スキルと言われるほど熟練されているわけではない。そのほかだってそうだ。
生き残るために必死に相手の技を見て覚えたようなもの。師範がいたわけでもないからな。
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