3話 初めての強敵
先頭に隊長。両サイドに二人がいる陣形で全速力で走り出した。
敵は全く動かず仁王立ちしている。
「ふぅん。なめてるなぁ、俺らの事」
「みたいだな。でも、相手の実力が未知な以上、いきなり突っ込むのはナンセンスだな」
「グラン、お前は慎重すぎ何だよ。俺らにはアスナ隊長が付いてる。心配無用さ」
「あんたたち、喋ってないで集中しなさい。とりあえず私が先に行くからしっかり合わせてよ」
二人の表情が切り替わる。それと同時に隊長がヤツに向かって飛び出し剣を振る。敵はかわすことなく己の剣で弾き返す。すぐさまに別の方向から剣を振るが、やはり止められる。
フィン!
急に自分の剣を真上に放り投げた。それにより一瞬止まった敵の動きを見逃さず、背中に常備してある剣を抜き体に向かい突き刺した。
予想外の行動に敵も何もできず攻撃を食らってしまう。しかし、これも敵の堅い体に致命傷を与えることはできなかった。
「ッチ。硬すぎんだろ」
アスナ隊長は剣の腕前に関してはリアム隊長より優れていて、本人もそれをわかっているので自分ならと、思っていたんだろう。しかし、結局効果はなく、悔しいのだろう。
敵は、剣が弾かれ防御態勢にない隊長に素早く剣を振った。
ヴァン!
「隊長に手は出させない!」
横からチャドがその攻撃を受け止め、そのままの勢いで吹き飛ばした。
その強さは凄まじく、敵は何軒もの家を突き破る。敵が倒れたところに砂ぼこりが立ち居場所が正確にわからなくなる。
俺はやられていることを願ったが、すぐに人のような影が映し出される。
その影が段々近づき、黒く鮮明になってくる。
「まじか……」
一見して相手に大きなダメージを与えたはずだった。それだけの自信があった。だが次の瞬間、敵は平然と現れたのだ。そのあまりの光景に、チャドは息を飲み、呆然と立ち尽くす。
「痛い、痛い。あなたたち卑怯ですね。一人に対して複数だなんて」
ヤツは怒りを込めた口調で言うと、ヤツ手をあげ、指で俺らの方を指してきた。
その瞬間、蜂の群れのようにブーンという音とともに大量の小型ドローンが向かって飛んでくる。
機体についてる銃口がこちらに向き、弾丸の雨が降ってくる。
その場にいた全員が後ろに避ける。弾が地面に突き刺さっていき鈍い音が鳴り響く。
「隊長。どうしますか?このままじゃやられますよ」
「わかってる。ルークお前ら三人は右から、俺は左から行く。建物の間を抜けて、
隊長の合図とともに動き出す。アスナ班も二つに分かれ散っていた。
迷路のように入り組んだ住宅街へ飛びこんだ。合流地点まではまだ距離があり、ドローンの追尾センサーに引っかからないように、迂回していく。
崩れた瓦礫と弾丸を避けるも真後ろまで迫っていた。これ以上逃げきれないと思い、家の窓を割り再び距離を取る。
しかしすぐに追いつかれる。
「おい、まずいぞ。さすがにもう振り切れない。なんか策はねぇのか」
「そんなこと言われても。とりあえず走るしかないでしょ」
「…セレネ。なんか打開策思いつかなか?」
彼女は黙ったままで何も言わない。どうすればいいか思案してた時、
「私、何ができる?」
さっきまで黙っていた彼女が変なことを言い始めた。
「どういう意味だ?なんか思いつたなら教えてくれ。頼む」
「わかったわ。」
そう言うと、フード付きの服を脱ぎ自分の剣に刺した。
そして、ドローンから見えなくなった瞬間それを合流地点とは逆の方向に投げた。
策は見事にはまり、ドローンはその剣を追っていった。
「すげぇ。よく思いついたな」
「うん。でもすぐにばれるわ。だから急ぎましょう」
俺も
目的地が見えてきた。それとともに、一歩、地面を蹴り屋根へと飛び乗る。
風が耳元でうなり、夜の冷たい空気が頬を撫でる。
次々と屋根から屋根へ跳び移りるり、家々の間に広がる隙間も躊躇うことなく踏み切り、宙を舞う。
もう少しだ…!
目的地は目の前。三人とも安堵した。ほんの一瞬、肩の力が抜け、剣を握る手も緊張から解放され、微かに緩んだ。
――その時だった。
背後から、空気を裂くような鋭い気配と重低音。反射的に振り返るが、遅かった。大量のドローンがすぐそこに迫り、絶望感に襲われる。
――やられる。
三人とも死を確信した。
ウィーン、ドン!
ドドドドドドドド……。
巨大なロボットが現れドローンを殲滅させた。
「無事かー?お前たち」
リアム隊長がのんきな口調でやってきた。さすが隊長。一人だったのに怪我無く生還している。ほかにもアスナ班や戦士候補生の時の仲間、多くの戦闘員がいた。
「死ぬかと思いました。セレネがいなきゃ俺たち殺されてました」
「そうかそうか、そりゃよかった。お前ら良い班になりそうだな」
ほんとこの人は楽観的だな。人の話しっかり理解してんのか。
ちょっと前の冷酷な隊長は忘れ、生き残って帰れたことに頭がいっぱいいっぱいになっていた。
「おい、あっちを見ろ」
誰かが言った。
そこにいた全員がそいつが指をさす方を向く。
ビルの屋上。月光に照らされくっきりと見える巨大なシルエット。
ヤツがいた。それはまるで人の命を狩る死神だった。
――再び始まる。命を懸けた戦いが。
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