上杉謙信の影武者
ガキンッ ガキンッ ガキンッ ガキンッ
スッ スッ スッ スッ
思わず俺は見惚れてしまっている。あの小雪の斬撃を鬼小島弥太郎は避けているのだ。だが小雪はまだ本気ではないのは分かる。小雪の本気の一刀は両手持ちになるからだ。
「女だと思い油断すれば一刀で斬られそうだ」
「あら?そんな余裕があって?私もあなたを調べたわよ?小島弥太郎ッッッ!!!!」
ガキンッ ゴンッ ジリジリジリジリジリ
「俺と力比べか。俺に刀を抜かすとはお前達2人は何者だ?」
「こっちこそ聞きたいわね。あなたこそ何者よ?」
「ふん。その秘密を知りたくば俺を本気にさせてみよ。女ッッ!!」
「弥太郎!言葉争いはよい。始末をつけよ。柿崎!お主は此奴を討ち取れ!」
俺の相手は柿崎景家か。この人も名前だけは知っている。川中島の戦いで武田本陣に迫った猛将だな。本当はこんな筈じゃなかったんだけどな。まあやるか。
スチャ・・・・ガキンッ ガンッ!!
「おいおい!いきなりかよ?名乗りもあげないのか?」
「謙信様の御言葉は絶対。俺は小島のように甘くはないぞ!!抜けッ!!大橋!!」
「随分だな。だが俺が本気を出せばお前は5秒で終わりだぞ?」
「戯言無用!ただ刀で語るがよいッ!!!」
ガキンッ ガキンッ ガキンッ ガキンッ
ゴンッ ゴンッ ゴンッ ゴンッ
俺は柿崎の剣を全て受けている。避ける事も可能だが、この人も鬼小島のような奴かと判断するためだ。だがこの人は普通の人のようだ。あの人間離れした動きではない。
「チッ。俺の剣をそうも簡単に受けるかッッ!!」
「正確な剣筋だから読みやすい。こちとら何度も猛者(廃課金者)から卑怯な攻撃をされ何度も何度も死線を潜り抜けてきたから分かる。お前じゃ俺を倒せない。悪いが貰うぞ?」
俺は瞬間的に謙信の両隣に居る馬廻り2人の意識を謙信以外に向けるため派手な攻撃ができるインベントリーに入っている【雷鳴剣】を取り出した。
この雷鳴剣とはその名の通り。固有技の雷斬りが出せる剣だ。剣から雷を発し、相手を感電させながら斬る剣だ。
一見強そうに見えるが、ゲームでは雷属性の武器防具は所有者が多く、耐性防具も多いためあまり効かなかった。むしろ派手な演出が起こるため漁夫を狙う奴に狙われやすく、この雷鳴剣を使う奴は派手好きの奴しか使用しない武器だ。ちなみに耐性防具で防がれるとただの剣となるだけだ。
西洋武器ガチャで当たったレア星7段階中5の武器で雷属性の武器ではだいたいみんな持っていた剣だ。
「何を小癪な!!その言葉そっくり返ーー」
「雷斬りッ!」
ズバズボッ! ズシャッ
「柿崎ッ!!!?」
掛かった!!今だ!
俺は謙信が身を乗り出した瞬間を見逃さなかった。
すかさず【ゴッドセイブザキング】を取り出し1日1回しかだせない固有技。ゴッドセイブザキングを繰り出した。
「ゴッドセイブザキングッ!!」
ズシャッ!!!
俺は躊躇なく謙信を正中から真っ二つにした。その余波で馬廻り2人は仰け反っているが、小雪と相対している鬼小島弥太郎はどうなっている!?謙信が殺られているのにまったく動じていない。そしてここで俺は一つの疑問を抱く。俺が話していた上杉謙信は影武者説だ。
「小雪!どうなっている!?」
「すいません!すぐに!」
「謙信様は1人に在らず。そして女!貴様の刀はちと危険だ。だんだん刀が重く感じる。何か仕掛けがあるな?」
「あら?やはり影武者だったって事かしらね?」
「さぁな?そろそろ終いとしようか。謙信様が起きられる。あの方が目を覚ませばお前達は終わりだ」
「ふぁふぁふぁふぁ!よくぞ我の影武者を討ったものよ。剛の剣だな?大橋・・・大橋ッッ!!!!」
ズシャッンッ ガンッ
「暁様!?」
「クッ・・・大丈夫だ!如月と模擬演舞してた時の方が重い・・・けどこいつは本物だ・・・一撃が重い・・・」
「受け止めるか。あわよくば貴様の配下一同を根斬りとしたかったが・・・ここで2人を射てば最早織田徳川に警戒する者も居ない」
抜かったか。ここでもう一度ゴッドセイブザキングが放てれば勝てるがこれは無理だ。使い慣れたニンフ剣に持ち替え距離を取る。
謙信はおそらく愛刀だろうと思う、山鳥毛を抜き一見隙だらけのようで隙のない踏み込みで刀を振ってくる。俺は裁く事に精一杯だ。そしてもう一つ・・・謙信から放たれる本物の威圧。真柄も大概だったがあの真柄すらも赤子に思う本物の威圧。これが俺が後手を踏む原因だ。
「もらったッッッ!!!!!!!!」
ズシャリッ
俺は簡単に斬られた。だが1日1度、死んでも即座に蘇る服。【キングベヒーモスーツ】を甲冑の下に着ていたから肩から真っ二つになった身体だが即座に引っ付く。
「暁様!?」
「悪い!さすがに油断した!」
「ほう?斬ったはずだが残像か?面白い!なら幾度となく斬り刻んでやろう。我こそは毘沙門天の化身 越後の上杉謙信ぞ!不足はなかろうよッ!!」
ズシャン
「おい!女!一時休戦だ!ああなっては我らでも中々止めれない!あの男が謙信様の眠りを覚まし呼び起こさせたのだ!あれは止まらんぞ!」
「確かにあれは異常ね。そしてそれはあなたもね。謎が解けたわ。あなたと、本物の謙信の謎もね?」
「強がりだな。だが明日には全ての敵を倒す事になるだろう」
「明日は私の本気を見せましょう。瞬時にあなたは分かるはずよ?この上杉謙信をも凌駕する本物の戦いをね。せいぜい大切に使いなさい?銃を奪ってるのでしょう?明日楽しみにしてるわよ」
「御報告ッ!!敵の夜襲です!暗闇から銃がーー」
「構わん!適当にあしらっておけ!本陣に近づけさせるな!謙信様がお目覚めだ!」
小雪は何か分かったようだが俺はさっぱりだ。越後はこんな化け物の巣窟なのかと思いながらも夜襲の混乱に乗じて小雪がスモークグレーネードを投げてくれ俺達は離脱した。
その小雪に抱えられて逃げている途中に少し聞いた。
「恐らく上杉謙信は先天的なサヴァン症候群。小島弥太郎も同じく。ただ上杉謙信は異常です。後程私の分析をお話しします」
小雪が言ったサヴァン症候群・・・主に自閉症の人に多い特殊能力の一つだがあれは瞬間記憶とかそんな類じゃなかったか!?
※自閉症と出しましたが差別的な意味合いはありません。ご容赦ください。
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