謙信との問答
「謙信様!小島様がお戻りになられました!」
「うむ。それは分かっている。土産も持って帰っているだろう。彼奴の事は心配していない」
「謙信様!ただ今戻りました!!!」
「弥太郎!よう戻ってまいった!首尾は?」
「こちらになります。大橋殿入ってくれ。先も言ったように手縄は許してもらいたいが、客人として招くと言った通りに致す。おい!湯の一つを出さぬか!」
「弥太郎様!すいません!すぐにご用意致します!」
この人が上杉謙信か。上杉謙信女性説は否定だな。バリバリ武闘派の顔してるわ。身長は低いな。
「その方が色々な兵器を開発している者か?名を聞こう。いや・・・すまぬ。名前を聞いても良いか?」
「大橋兵部少輔暁。一応兵器開発者です」
「我の陣に来たのは自らの足でだな?足取りを見れば分かる。あわよくば我の首を取りに自ら参ったか?」
この人・・・やりにくい。マジで場数踏んでるわ。馬廻りの人も絶妙な立ち位置だ。飛びかかっても左右の2人に制される。ニンフ剣で飛ぶ斬撃を放てば即座に鬼小島が反応するだろう。
なら腰のワルサーを撃てば・・・いや・・・これは謙信自身が避けそうだ。銃がバレてるからこの距離なんだろう。中々にやりにくい。まずは鬼小島の秘密か。
「正直あなたの首は少し思いましたがここでは無理でしょう。それに損得を考えればここであなたを討っても得策ではない。俺は間違いなく死ぬ。そしてその後、人揃いの上杉、武田軍に織田徳川は蹂躙されるだけでしょう」
「ふぁふぁふぁふぁ!感情に動く者かと思えば存外に状況を見よる!何故この世は乱世だと思う?」
は!?いきなりなに言ってんの!?そりゃ戦国時代だからだろ!?あんたが他国に出稼ぎとか言って攻めるからだろ!?
「言ってる意味が分かりません」
「嘘を申せ。草が調べた事だがお主の配下の偉い脚が丈夫な老人が居るだろう?奴が言ってたぞ?『我が殿程平和を愛す者は居ない。我が殿に世を任せれば皆が裕福になり経済が動き下々の民まで施しがいくだろう』とな」
チッ。勘助か。そんな報告聞いてないぞ!確かに勘助はよくゲームでもここリアルでも同じ事を言っているが・・・。まさか上杉の草がこんな近くまで居るとは思わなかったぜ。
「まあ、無闇に他国に攻め入ったりせずに経済で、銭で世を回せば必然的に戦は減るでしょう。ですがこの政策に反対する家とは弱り切る前に戦になる。あなたなら気づいてたはずでは?」
「ふぁふぁふぁ!この言葉争い嫌いではない。その通り。本来なら今年一年掛け準備し、来年盤石に攻め入る予定だった。だが越後の城下には美濃や尾張の物で溢れかえってきよる。しかも1番大切な食。米だ」
「弥太郎様!お待たせいた・・・し・・・ました・・・」
「おい!お前!状況を見ろ!湯は後にせい!」
あの人は可哀想だな。堀さんに似た立場の人か。
「続けるぞ。あの白い甘い米を鐚銭で売るような真似をして。しかも美濃商人、尾張商人を使わずに他国に売るとはな?武田にも同じようにしているな?」
「まあそういう政策ですからね。戦をせずに相手を弱らせる。変に戦をするより被害も少なく済みますからね?戦をして疲弊するのは民だけではない。荒らされた畑、焼かれた家。壊すのはすぐだが戻すのには時間が掛かる」
「うむ。その通りだ。それを分からん馬鹿が多いのが現実」
うん?この感じはなんだ!?ゲームでは相手が降伏するような物言いだな!?
「その事を1番分かってないのが将軍ですね。私利私欲のために京を戦の中心とし気に食わない事があれば今回のように織田を討つために挙兵を促す。自分が主役じゃなければすぐ癇癪を起こす」
「武の頂点は征夷大将軍。その将軍に言われれば動かざるえないであろう?我が宿敵は織田に取り代わろうと動いているようだがな」
「我が宿敵?武田ですか?」
「うむ。彼奴とは幾度となく鎬を削り合っている。比叡山を焼き討ちだと!?この事は許せぬ!これは我が宿敵と同意見である!」
「あれは坊主共が好き勝手した報いです」
「だとしてもだ!我は義に反する事は嫌いだ!全てを壊すだけで世を乱すとはそれこそ将軍と同じではないか!」
確かに理屈ではその通りだ。だがあれは断じて中立を保たなかった比叡山が悪い。やはりこの人とは相容れない。
「目の前の不条理な事。弱者が強者に食われ、誠に救済が必要な人が虐げられ女子供が男の慰み者にされる事を見てるだけとは到底俺にはできない。その強者がもし神だとしても俺はそれを見れば神でも討つ」
「冒涜だ!謙信様!此奴を斬りましょう!」
「そうだ!そうだ!」「その通りです!」
スッ
謙信はカッコよく手を掲げみんなを黙らせる。いつか俺もやってみたい動作だ。
「それは織田の真意か?」
「織田様は分かりませんが概ね同じだと。俺は個人的に目の前でそんな事が起これば許せないだけです。皆が皆を助ける事はできない。だけど目の前の事ならば助ける。だから織田様には日の本を総てもらい、違法な事をすれば罰するような法律を作り世を変える。そう思っています」
「極論だな。そんな事すれば更に乱世になると思わぬか?」
「ふっ。それこそでしょう?俺はまだ出していない武器が山程ある。なんなら戦う前から殺る武器すらある。それを使わない意味は・・・分からん事ないでしょう?俺は虐殺者ではない。さっき言った通り元に戻す事も考えている」
「見損なったぞ?そんな嘘はーー」
「弥太郎?此奴を見てみろ。嘘ではない。確かに空の鉄を見ておらぬ」
「分かってもらえたようで」
「ふん。だが貴様は今や我の胸先三寸。捕らわれの身だな。客人として迎えたかったがそうもいかぬようだな。その手腕を越後で振るってもらいたかったのだがな。この手の者は靡かぬ」
瞬間的に俺はやばいと察知し、後ろに飛んだ。だがここでも鬼小島。こいつが俺が後ろに逃げないように背中側に回る。やばい!マジで斬られる!
だがその瞬間・・・小雪だ。
「ゴッドセイブザクイーン!!!」
ガキンッ!!!
「何奴だッッッ!?」
「私よ?大橋左衛門尉小雪。暁様の正妻。あなた達こそ暁様を縄手に掛け、なにしようとしてたのかしら?特に・・・お前だよッッ!!!上杉謙信ッッ!!私はお前を許さない!何が義の男だ!!」
「小雪!すまん!助かった!」
「チッ。女か。弥太郎?相手してやれ。2人とも殺せ」
小雪がこんなに怒るところ見るのは初めてだ。こいつの秘密を知りたかったけどもういい。こいつこそ殺さないと危険だ。そのまま謙信・・・お前も殺る!
〜信治が佐久間の陣に入った時〜
「我が軍は完勝ではないか!堀!見てみろ!将軍が挙兵したと言うから、ぎょせんなる物で出向いたが石山城も今堅田城も準備すらできておらぬと見える!肝心の浅井、朝倉の兵も見えぬな?」
「はっ。浅井、朝倉は静観するように思います!」
「御報告ッッ!!!」
「どうした?」
「三方ヶ原にて佐久間様の救援に大橋様が向かい、上杉に大橋様が捕らわれた模様・・・」
「なんだとッ!?佐久間は!?佐久間はどうした!?何故反撃せぬのだ!」
「それが佐久間様が三方ヶ原台地より退いてしまい、信治様がそこに陣取りして佐久間隊はその後方に戻りましたが信治様が『佐久間は信用できん』と申しまして、今宵信治様の兵にて夜襲を仕掛けると電話がありました」
「ぐぬぬぬ!上杉め!やりおるな!勝家!光秀!長秀!頼隆!此奴らにここは任せる!ワシは浜松に出向く!河尻!河尻は居るか!!」
「はっ。お館様!ここに」
「すぐにぎょせんを用意致せ!浜松に向かう!」
「それならば・・・那古屋に戻り、あたごに乗り換えるのがよろしいかと・・・」
「なに!?お前が持っているのか!?確かに大橋が残りの船は収納とか言って消えていたぞ!?」
「それが、もしもの事を考えあたごと呼ばれる船を某に分け与えーー」
「何故それを早く言わんのだ!!大橋だけは殺らせぬ!すぐに集まる者だけで良い!向かうぞ!」
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