今川氏真の覚悟
「それで結局の所・・・必要な物などあれば北条家が融通してくれると?」
「はっ。兵も必要ならば出しますがそこはあまり望んでないように思いますので・・・」
「徳川様?どうされますか?一応この戦の本当の総大将はあなたです」
「うむ。信忠殿をここに」
まあ信忠君をなしに全部話を進めるのは義に反するよな。俺達の殿は信長さんだけど今は信忠君だからな。
「失礼致す。うん?そちらは?」
「信忠殿を歩かせて申し訳ない。こちらは今川氏真殿、北条氏規殿です。それと氏真殿の奥方ーー」
「妾は早川じゃ!よろしく頼む!して、そちは誰じゃ?」
パチンッ!!
「痛ッ!!」
「申し訳ない。後で言い聞かせておきますのでどうか!!どうか許してください」
いや本当にあの早川さんすげーわ。まあ、ある意味表裏がなさそうで分かりやすい。
「お、おう・・・そうであるか・・・。某は織田信忠・・・此度の織田家 遠征軍の総大将である」
「堅苦しいのはなしに致しましょう。信忠殿?この北条殿とは旧知の仲でですね?武田上杉相手に我らに与してくれるとの事で」
「良きに計らってくださいますよう。若輩者故に某は皆の意見に従う」
「畏まりました。では大橋殿?ワシは其方にお任せ致す。酒井は?」
「些細問題なしでございます」
「佐久間殿?平手殿?」
「同じく問題なし」
「うむ。同じく」
俺かよ!?そりゃ今回の作戦は俺が立てたもんだけどよ!?
「では・・・北条様は間に合うか微妙ですが武田上杉に与するように見せてくれませんか?」
「は!?」
「今回はただの小競り合いではなく私達も全力でこの2家を屠ります。中途半端ではなく言葉の意味のまま。信玄や謙信を討てないにしても再起不能になるまで叩く予定です。見事に追い返す事ができれば数日後に甲斐、信濃へ侵攻いたします」
「それで我らが敵に与する意味は?」
「この腕章を北条軍には付けていただきたい。この腕章がある者には攻撃はしません。そして北条軍も武田上杉に味方するとなると敵も慢心が生まれるでしょう。今はここまで。これ以上は作戦の根幹に関わる事なので勘弁してください」
さすがに三方ヶ原で一網打尽にするとは言えないよな。本当に北条が武田上杉に味方するかもしれないしな。信用はできない。
「攻めてくる時期はいつ頃だと?」
「私の見立てでは卯月にはと。越後の雪解けを待っての行動と思います。ただ・・・本来は将軍が号令を発してからの行軍かと思いますが将軍が先に暴発するかと予想しています」
「なに!?それでは我らが賊軍になるのではないのか!?」
「北条様ならもっと視野を広く見えると思います。今の将軍に日の本を纏める力があると思いますか?足利幕府に力があると思いますか?私は将軍と謁見した事ありますが小雪を、権力を翳して奪い取ろうとしたような男です。そもそも直に発するであろう号令に帝は反対するはず」
「大橋殿は朝廷とも?」
「えぇ。関白様と少し。朝廷は8割織田の味方でございますれば。今回の戦で日の本の勢力図が一気に変わります。それを見越して北条様にお聞きします。武田上杉に味方致しますか?」
「・・・・・・」
「氏規殿?某が徳川殿に付いて居ましょう」
「氏真殿?どういう意味か?」
「某は力がない故にこのように義父殿にお世話になっておる。だが氏政殿はどうも某と合わないようで。少しの間世話を願えないか?刀くらいならば塚原卜伝様に新当流を習いました。兵に教えるくらいはできます」
「という事は我らに与すると見ていいですか?」
「義父は・・・北条は武田の味方にはつかん。あれは信用できぬ。そもそも同盟をしておいて駿河侵攻をしてきたのも武田。そこは徳川殿も同じだがなにも徳川殿とは同盟もしておらぬ。弱き者に攻めいるは必定である。そこは良い。だが武田は許せん!」
「個人的には氏真殿に駿河を任せたいとも思うがワシの一存ではな・・・。信忠殿?」
「うむ。此度の働き具合により父、信長様に口添えしましょう」
意外にも氏真さんはみんなから好かれているんだ?見るからに暗愚には感じないし新当流って流派習ってたんだな。
「とりあえず氏真様の駿河返り咲きは先の事ですが織田様の下、もしくは徳川様の下でならば私からも言いましょう。それで北条家は我らに与するということでよろしいですか?」
「はい。問題なしで。人質などは如何様に?」
「本来ならば人質も必要かと思いますが構いません。氏真様と早川様がこちらに居るのでしょう?少しばかりの戦働きはしてもらうかと思いますがとりあえず文に、してもらいたい事を書き記しておきますので氏康様にお見せください」
「はぁ〜い!難しい話はそこまでに。徳川様?お待たせ致しました。すき焼きをお持ち致しました!」
「な、なんだその黒い汁の物は!?いや・・・腹なんか空いてなかったが良い匂いだ!」
「これは徳川様が'特別に'氏規様にお出しするように言われました食べ物でございます」
「小雪殿!すまぬ!先日のより美味そうだ!」
「えぇ。特別な作り方をした物ですよ!あなた早川様でしたね?気にせずお食べなさい?美味しいわよ?」
「くるしゅうない!其方は女武将でありながら下女のような働きをするのか?」
「あら?別に飯炊きや料理人が下女や下男って事はありませんよ?官位も高く、名前も全国に轟くような方がすき焼きを作れますか?作れませんね?身分で勘違いはよくないわよ?」
はぁ〜・・・結局はいつもの小雪だな。
「そうだ!早川!父上もよく鯛を振る舞ってくれるだろう?料理人だからと甘く見るな!日頃の飯を作ってくれる者は大事にせよと言われているではないか!」
「まあまあ!とにかく食べましょうぞ!ささ、氏真殿も奥方殿も氏規殿も遠慮なく食べてほしい。特にこの卵を漬けると更に美味くなるのだ!」
「そう言うのであれば・・・・うっ・・・美味い!?なんだこの味は!?表せない味がしよる!」
「徳川殿?某も食べてよろしいか!?」
「うむ!早く食べてほしい!これより美味い物はそうないと思う」
「美味い!!!おい!早川も食べてみよ!事の他美味い!米によく合う!!」
みんなすき焼きの虜になったな。だが俺は金輪際家康さんにすき焼き作ってやらねーからな!あの恥ずかしさ忘れないぞ!!
「信忠様はいかがですか?」
「うむ。非常に美味と思うが某はバニラアイスの方が好きである」
やっぱまだ現代なら中学生くらいだからな。甘い物の方が好きだよな。
「では後で用意致しますね」
「小雪殿。申し訳ない」
「織田家は珍しい食べ物が多いのですな?」
「えぇ。織田は肉食を推奨しております。国が強くなるには下々の民の食生活の改善からと思っておりますので。そこに関しては信忠様がよく分かっておいでかと」
「うむ。氏規殿だったな?北条家も中々に良い治世と伺っておりますが?」
「いえいえ。このすき焼きなる物がどのような味付けかも分からない。織田家に比べればまだまだかと。徳川殿は早くに織田家と同盟を結び、良いなと思っておりまする」
「ならば帰った折に氏康殿に伝えると良い。織田家とは与した方が良い事が多いと。大橋殿?小雪殿?土産も渡せますか?」
「はっ。何をお渡ししましょう?」
「小田原は・・・海産物が豊富であると聞く。醤油なんかはいかがか?」
「分かりました。醤油、酒、砂糖をお渡ししましょう」
やっぱ信忠君は分かってるわ。いい時に上から目線。だが蔑ろにする言い方でもなくちゃんと相手に敬意を払う土産。
ただこの土産も一度口にすると忘れらない品質だからな。多分、小田原には醤油の原型の塩魚汁(しょっつる)くらいはあるかもしれない。だがセバスチャンが作った物の方が品質が段違いだ。
さて・・・後、1ヶ月強くらいか。日に日に織田徳川の兵の士気は高くなってきている。北条から1000人くらい兵を出して武田上杉の士気が高くなれば、突撃してくる可能性が高いだろう。そう簡単にはいかないかもしれないが敵が撤退しそうな時に北条が帰り道を封鎖してくれれば御の字だな。
さすがに病み上がりの氏康さんは出陣しないだろう。氏政さんが総大将かな?いやこの氏規さんが居た方が話が早いんだけどな。近江、越前、越後は織田で信濃、甲斐は徳川さんと北条さんに割譲が1番良いけど甲斐や信濃なんか貰っても嬉しくないだろうな。しかも風土病もどうにかしないといけないしな。
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