俺が隠していた兵器達

 次の日朝、昨夜の小雪との死闘を終えゲッソリ顔で朝を迎える。


 「暁様。おはようございます!」


 「おはよう」


 正直寝足りない感が否めない。が、ここは徳川家。しかも戦の前だからな。


 そして今日は平手さんに任せた戦車部隊の視察だ。まあ喜助や望月さんに聞いてはいるが平手さん自身はもう完璧に操作をマスターしているらしい。


 一応固定砲台として運用するつもりではあるがそれでも動かす事はあるだろうから一通りの運用は教えたと聞いた。


 「平手さんおはようございます。どうですか?」


 「いやぁ〜!これは素晴らしい!無敵とはまさに!」


 「確かにかなり強いですし負ける姿は感じないかもしれませんが油断はだめですよ?運良く敵の火矢が換気口に入れば炎上しますからね?」


 俺が出した戦車は、今まで活躍したオイ車、九五式軽戦車だが今回は俺が持っている戦車をほぼ出している。


 インベントリーの中でもわざわざ別の保護欄に収納していた戦車達だ。アメリカM4中戦車、通称シャーマンだ。ドイツ重戦車ティーガー1。同じくドイツ駆逐戦車ヤークトティガー。ソ連重戦車is7。


 お国はバラバラだが俺のコレクション達だ!一応もう一つ隠し戦車がいる。ドイツの超重戦車マウスだ。これはあまりの巨大戦車だから出していない。オイ車に次ぐ走れば走るほど壊す戦車だからだ。


 「撃てッ!!!」


 ドォォォーーーーンッ!


 「撃てッ!!!」


 ドォォォーーーーンッ!


 確かに普通に操縦はできているな。だがどの戦車も後方に丸に十字紋のペイントがされてある。ここでも島津か!?と聞きたくなる。


 「いやぁ〜でもこのあいえすせぶん戦車は良いですな!椀を伏せたような独特な且つ独創的な外観!それになんと言っても速い!」


 「確かにis7は速いですからね。けど勝手に敵陣に向かっていかないでくださいね?キューポラやら覗き穴なんかは普通にガラスなので槍の一突きで壊れますから」


 「任せてくれ!そんな事はしない!」


 よし。戦車部隊の方は大丈夫だ。次は佐久間さんの鉄砲部隊だ。


 ここで一つ俺は驚いた事がある。信忠君だ。実は信忠君からお願いされていた事があるのだ。まあ喜助を通して言われた事ではあるが。


 「お飾りの大将ほど無駄はない。某も部隊を率いて戦いたく」


 「いやいや、さすがに無理でしょう!?普通総大将は後ろで指揮してるもんでしょう!?」


 「ならば狙撃班と呼ばれる部隊ならば問題ないでしょう!?」


 と珍しく我が儘?を言ったのだ。そりゃ確かに後方も最後方の狙撃班ならば万が一にでも大丈夫だとは思うが、この信忠君はただ者ではなかったのだ。


 マジで元服の儀って実は凄いことしてるのか!?ってくらい、むしろ俺より狙撃能力が高いのだ。信忠君に渡した狙撃銃は俺のコレクションの一つ。ガチャではなく純粋にリアルマネー2万円で売られていた狙撃銃だ。その名も・・・マクミラン TAC-50。


 現実世界では世界一の狙撃銃と呼び名も高い銃だ。むしろ対物ライフルだ。手動回転式ボルトアクション方式、5発箱型弾倉。


 そしてこの狙撃ライフルを持った信忠君。300メートル離れた的くらいなら簡単に当てるのだ。


 ズドンッ!!!


 「命中ッ!!」


 ズドンッ!!!


 「命中ッ!!」


 とこれをリアルタイムで見せられて俺は驚きを隠せなかった。


 「信忠様!さすがにございます!!」


 「いやいやこれはこの、マクミランのおかげ。某は引き金を引いただけでございますれば」


 本当に織田の血を引いているのか!?ってくらい謙虚な子だ。次期当主に相応しいと俺は思う。今回初めての総大将だがこれならお土産もできそうだな。誰か名のある将くらいなら狙撃で仕留められるだろう。まぁこのマクミランが命中すれば肉片になってるだろうけど。


 「喜助?くれぐれも・・・・分かるな?」


 「任せてください!我は信忠様の守護神喜助!」


 喜助に関しては急に性格が変わったように思う。まあ理由は知っている。松姫のお姉さん、菊姫を紹介してもらいたいためと。


 理由は最悪だし女の尻ばかり追いかける喜助と佐助だが仕事はちゃんとしてるし強姦なんかをしてるわけではないから俺は目を瞑っている。意外に一途な信忠君が近くに居るし、大丈夫だろう。


 そして慌ただしく1日が終わったこの日の夜、カップラーメンを食べようとした時に呼び出しをくらう。


 「失礼いたしまする。北条家から使者が参りました。殿が大橋様に御同席を願っておりまする」


 「え!?もう来たの!?いやラーメン食べようとしたんだけど・・・ダメだな。すぐに向かうと伝えてください」


 「その匂いは・・・しーふーどらーめんですか?それ美味いですよね!!あっ!い、いや失礼致しました!今のは聞かなかった事に願います!」


 誰か分からない名前も知らない10歳前後の小姓に見えるけどラーメンを知ってるなら親族が家康さんの近しい人かな?


 「良かったら食べます?まだまだありますので。もちろん内緒にしておきますよ!」


 「本当ですか!?ありがとうございます!!この恩は忘れません!!」


 ふん。良かったな!本当はこんな事許されないけど俺はこれくらいなら許す!名前も知らない子よ!良かったな!


 この名前も知らない家康の小姓。名を井伊万千代。後の井伊直政である。この時初めて暁のとの出会いである。このカップラーメンの出来事が後に徳川家古参の大久保忠世と大立ち回りをする事になる。



 「すいませんお待たせ致しました」


 「うむ。大橋殿すまぬ。こちらが北条氏規殿だ。して、こちらが今川治部殿嫡男、今川氏真殿と・・・」


 「その妻早川である!!先日はどうもじゃ!おかげで父上はすっかりよくなった!兄者はそのせいで何回も父上に怒られておる!」


 こ、この女はなんなんだ!?早川殿だよね!?こんな現代女子高生のような、キャピキャピ系なの!?一応使者だよね!?


 パチンッ!!!


 「痛っ!!!」


 「先日の・・・あの方で間違いないですかな?我が妹が申し訳ない。天真爛漫な奴で怖い者知らず常識知らずにて此度も着いて来てしまった」


 うん。全てを兼ね揃えたスーパー我が儘妹さんって事だな。


 「いや構いませんよ。私の妻も同席願います。織田家では発言力が私並みに強いです」


 「大橋兵部少輔暁の妻、大橋左衛門尉小雪でございます。以後お見知りおきを」


 珍しく小雪にしては丁寧な挨拶だな?


 「申し遅れた。北条氏康が四男、北条氏規である」


 「某は今川刑部大輔氏真である・・・・いや申し訳ない。ただの氏真である」


 この人が今川義元の子供か。未来では可哀想なくらいボロクソに言われている人だよな。しかも言い直したってどういう意味だ?一応、名目上は幕府も刑部大輔じゃなく治部大輔の継承を許したはずだよな!?


 「ははは!まあそう堅くなりなさんな!この大橋夫婦はワシと友であるからな!さっそくだが・・・大橋殿?昨日の例のやつを?」


 いやマジですき焼き出すのか!?別にいいけど余程自慢したいのか!?


 俺は小雪に目配せして作りに行ってもらうようにした。


 「時間がもったいないですからね。返答を先にお聞きしても?」


 「はっ。まずは謝らせていただきたい。兄上が粗相をし転けさせてしまいました事を・・・」


 クッ・・・古傷が・・・せっかくあの恥ずかしい事を忘れようと必死だったのに・・・。むしろ兄上って氏政さんだっけ!?全然気にはしてなかったのに。


 「い、いえ。むしろ忘れていただきたいと存じ上げます」


 「ぷっ!」


 「家康さん?今笑いましたね?想像して笑いましたね!?」


 「い〜や?なんの事ですかな?おや?また雪がチラついてきましたな!?」


 クッ。腹黒たぬきおじさんか!!!いいさ!今後すき焼きは作ってやらないからな!!俺の覚悟を思い知れ!


 「あぁ〜!其方があの臭い男じゃったのか!!気が付かなかったぞ!!あれは傑作じゃった!颯爽と現れ、言いたい事を言い、颯爽と帰ると思いきや妾の夫が作った蹴鞠石に躓きーー」


 パチンッ!!!


 「どうかッ!!どうかッッ!!平に!平に御容赦をッッ!!!」


 「某からもどうかッ!!!我が妻はそれはそれは民に優しく某にも優しく時に厳しく良くできた妻なのです!ですがたまに、本当にごくたまに言い過ぎる事がございます!ですから平に・・・・」


 俺はただ転けただけだがこんなに話が大きくなってしまうのだろうか。しかもこの早川殿には臭いとも言われ・・・いや確かにあれは臭いと思う。


 俺が転けるのが早川殿には傑作なのか!?まあ怒る気にもなれん。なんせ、現代高校生のような感じだからな。なんなら叔母ちゃんの子の従姉妹と性格がかなり似てる気がする。

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