小悪党2

 「えっと・・・とりあえずあなたは中でお粥のお代わりしててください。ここは俺に任せて」


 これはあれか!?フラグか!?ここは任せて先に行け!ではないけどやられてしまうのか!?


 「おい!臭い男!最初は普通に聞く。2回目は右手を潰す。3回目は左足を潰す」


 「ふん。女連れに遅れを取るようなーー」


 ジャキィィーーーーンッ!!!ポトッ


 「暁様に軽口叩いて五体満足で帰れると思って?あなたはそこに直りなさい」


 「いっ、いってぇ〜!!!!俺の右腕がぁぁぁぁ・・・・・」


 いやそこは待ってほしかったな?俺が斬ろうとしてたのに小雪は沸点が低すぎるよ!?


 「まあそういう事だ。遅れたが俺は大橋兵部少輔暁。織田家家臣だ。あんたの殿が誰かは知らんけどここは林秀貞様が治めてる所だろう?知ってるのか?」


 「はっ、ま、ま、まさか・・・夢幻兵器と噂の・・・勘弁してください!!!」


 「おーい!お前いつまで待たせる・・・己ら!!!我らが誰か分かって・・・・お、大橋様!?大橋様が何故ここに!?」


 「うん?初めて見た顔だが俺の事知ってんの?」


 「そ、そりゃもう存じ上げておりますです!」


 「へぇ〜?意外にも知ってる人居るんだな?で、あんた誰?」


 「お、俺は・・・・・」


 「うん?その次は?早く言わないと今、猛烈にむしゃくしゃしてんだけど?」


 ジャラァーーン


 「持ち合わせがこれだけですが戻れば更にお渡し致します。今後もお渡し致します!どうか勘弁してください!」


 こんな小銭渡して来てマジで舐めてんな。


 「ふざけてんのか?俺は岐阜制定時間10分でこれくらい稼いでしまうぞ?こんな銭渡すよりお前は早くにお前の殿の名前を出す方が身の為だぞ?素直に言えば殺さずにしておいてやる。仮にここでお前を殺しても俺は許されるだろう。漁村のみんなが保証人だ」


 「「「そうだ!そうだ!」」」


 いつのまにかギャラリーが増えている。みんなはお粥食ってればいいのに・・・。


 「そ、そもそもお前等が悪いのだ!あの背の低いやけに脚の速いじいさんがここら一帯の大きい漁村から纏めて魚を買い上げ俺達には売られなくなってしまい・・・」


 勘助の事か?まあ俺達が大きい漁村からは買い上げしてるからな。しかも通常の倍の金を出して。それでも銭が増えるんだからな。


 「それはお前達が買い叩いてたからだろ?俺達と同等な金を出すのは難しいだろう。ならばもっと頭を使い俺達に話にくればよかっただろう。お前の殿はオツムが弱いのだな。で、誰だ?」


 「クッ・・・林・・・」


 嘘!?!?林さんがこんな事してんの!?


 「林貞継様だ」


 「林貞継・・・って誰だ?」


 「暁様?林様の遠い親戚筋の方です」


 「お、おう。そうか。すまん!じゃあお前達はこの場で待て。あぁ!ロープで縛らせてもらう。織田様に報告だな」


 せっかく大和ちゃんにでも乗ろうと思ったのに興醒めだ。人の良い気分を台無しにしやがって!


 「千代女さん?ちょっとこの場で待っててくれる?」


 「了解致しました」


 「かなりキツくあいつら縛ってくれて構わないから!あぁ、一応アカチン渡しておくから止血くらいはしてあげてね?」


 

 それから俺は大急ぎで岐阜に戻り、事の次第を信長さんに言った。


 「ぐぬぬ・・・誰ぞある!!小雲雀と大般若長光を持て!我が領土にそんな不届者が未だに居ようとは・・・一族郎党全て根斬りぞ!林も呼べ!!!筆頭家老だろうがなんだろうが事の次第によっては・・・」


 やっべー・・・怒髪天衝く程の怒りのようだ・・・。普通に怖い・・・


 「大橋!案内致せ!!!」


 「は、はい!!」


 

 そのまま那古屋にとんぼ返りだ。時刻は既に夕方の4時・・・少し雪も降り始めてきた。


 俺、小雪、信長さん、前田利家さん、佐々成政さんで疾走した。


 "コナユキ?何回もすまないな"


 "わっちは走るの好きだからいいよ!"


 みんなの神妙な顔を見てコナユキですら普通に答えてくる。


 現場に到着すると知らない男の偉そうな雰囲気の人達が既に来ていた。その中には林秀貞さんも居る。


 まず信長さんは港に驚いていた。そりゃそうだよな。急にこんなのが出来上がってるんだから。


 「大橋!この事は後でまた聞く!細かく教えろ!林ッッ!!!!!」


 「お館様!どうか・・・平に・・・」


 「貴様が小銭稼ぎのような事する奴とは思っておらぬが貴様の親戚筋の仕業らしいではないか!其奴はどこに居る!ワシ自らが成敗してくれよう!」


 「勘弁してください!貞継は従兄弟の息子にございますれば・・・」


 「ならぬ!筆頭家老の関係筋だろうがこればかりは許さぬ!!ワシの1番嫌いな事じゃ!家臣一致団結せねばならぬ時にこのようなつまらぬ事をしおって!!」


 まあ林さんが真面目すぎる故にかな?悪く言えばケチ。良く言えば倹約家だから城詰めか何か分からないけど青タン作ってる貞継って人が小銭稼ぎしたのか。まあ俺のせいでもあるが。実行犯は許さないけど林さんに助け船出すか。


 「織田様?差し出がましくも・・・。そこの素浪人は如何様にも。ただ林様の関係筋には寛大なる処罰を。元を言えば俺のせいでもあるらしいです」


 「ほう?言うてみろ!」


 俺は魚の買い取りの事などを言った。簡単にだが分かってくれるはず・・・


 「そうだ!元はポッと出の夢幻兵器の持ち主だかなんだか知らぬお前のせいで那古屋はーー」


 ゴツンッ!!!


 「貴様!!この期に及んで何を言っておるのか分かっておるのかッッ!!!!」


 普段温厚そうな林秀貞がキレた。貞継って人は助けようと思ったが前言撤回。許さん。


 「織田様?さっきの言葉撤回致します。早い話、俺のせいならば言ってくればよかったのに。買い取りにそんなに値は出せん。とか新しく何か事業をしないか?とか言えば今と違う未来が見えただろうに」


 「何故那古屋の利をお前に渡すようにしなくてはならないのだ!?」


 「は!?那古屋の利!?そりゃ城運営、町の運営には銭は掛かるだろう。だがそもそも織田様あっての那古屋だろ!?私利私欲のために何言ってんの!?給金とかも貰ってんだろ?」


 「織田様?暁様?これを・・・」


 「小雪?なんじゃ?ほうほう。これは確かぴくちゃーなる物だったな?」


 いやだから何故写真じゃなく英語なんだ!?


 「いえ、それは映像なのでムービーの方です」


 「ほうほう。むーびーであったか。すまぬ。これをどうしろと?」


 「ポチっとな」


 いや小雪は真面目な雰囲気の中何言ってんだ!?


 その映像は柄の悪そうな男達が映っていた。


 『そうなんでさ。貞継様に関してはツケで飲み食いしてもらってますがいい加減払っていただかないと我らも商売上がったりでして』


 「ふ〜ん。あなた達は健全な店なのね?」


 『そりゃ、もう!しがない飲み屋で少しばかりの賭博場をでしてはい・・・姉御様が払ってくれるので?』


 「いくらかしら?」


 『かれこれ10貫文程・・・いえ失礼致しました。150万円でしたかね!?このくらいでして・・・』


 「分かった。払ってあげるわ?あなた達?もしあなた達が天地神明に誓い健全な運営をするって言うなら暁様に口聞きし、岐阜に店を構えさせてあげるわ。みんなと相談しなさい?岐阜の変わった形の家に誰かしらいるからその気になれば来なさい?」


 『へぇ〜!!』


 「最後の事はこの件とは関係ありませんがいかがでしょう?」


 いやいやなに営業も普通にしてんだよ!?どうせ飲み屋街に併設する気だろ!?


 「そ、その箱から声がしておるのはなんだ!?」


 「黙れ!秀貞?分かるな?」


 「些細問題ありません。最早庇う事すら恥ずかしく思います。必要ならば某も・・」


 「いや良い。この場で更に庇うような事があればとは思うておったが決断できるならば耄碌したわけではない。励め」


 「秀貞さま!?お助けください!お願いします!」


 「カァァァァァーーーーーー!!!」


 ズシャン!!!!  ポトン・・・・・


 「これにて終いと相成りましょうや。この地に関しては大橋殿にお任せ致す。漁村にまで手が回らなかったの某の落ち度」


 「うむ。秀貞よう言った!これにて落着!次は何故このような見た事ない物が溢れているかだ!大橋!説明致せ!」


 あぁ〜・・・次は俺が怒られる番か・・・。

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