小悪党

 俺はインベントリーを探す。病気かもしれないし、栄養失調かもしれない。とにかくなにかを・・・・


とりあえず怪我はないように思うが完全回復スプレーをかける。これで見えない怪我があったとしても治るはずだ。


 後は・・・超超超高価だった【エリクサー】だ!!


 このエリクサーとはゲームをした事がある人なら誰でも知ってる最高の薬だ。俺がやっていたゲームでは空腹や病気などで動けなかった人がたちまちに治る薬だ。


 正直見た感じ怪我はなかったため、完全回復スプレーは要らなかったと思うが焦ってしまったな。


 「ご婦人!!今から薬を口に入れます!少しでもいいので飲んでください!!娘様が待ってますよ!!」


 そういうと反応はなかったが少しだけ呼吸が大きくなったように見えた。


 俺は優しく少しずつ干からびた口にエリクサーを垂らす。非常にゆっくりだが飲んでくれている。


 「ゲームではすぐに効果が現れるはずだが・・・」


 するとゲームと同じ、効果が現れる前兆の金色に発光する現象が起きた。


 「え!?暁様!?どうしたのですか!?」


 「あぁ。千代女さん?お母さんは弱ってはいたけどギリギリと言えば失礼だけど生きていた。俺が持っている最高の薬を与えたんだ」


 「暁様?もしや!?エリクサーを使ったのですか!?」


 「小雪?あの子の事、以前に見たんだろう?知らなかったのか?」


 「すいません。マグロの事に夢中でした」


 「う〜ん。まあ小雪が知っていれば助けたはずだろうから小雪に八つ当たりするのは間違いだな。悪い」


 「すいません。私がもっと確認しておけば良かったです。以後気をつけます」


 「おっかあ!?何で光ってるの!?おにいちゃん!?おっかあが光ってるよ!!」


 「あぁ。もう大丈夫だ。後少しでお母さんは元気になるから少し待ちなさい?小雪?この子に何か食べさせてあげよう。お母さんの分も何か作れるか?」


 「お任せください」


 それから数分の間、発光し、光が弱くなりお母さんの体が光から解き放たれると・・・・


 「よし!ゲームと同じだ!!健康な身体に見える!!」


 「おっかあ!!!良かった!!良かった!!ねぇ!起きて!!!」


 「う・・・・ん・・・ハッ!?ここは!?」


 「気が付いたようですね?もう少し遅ければ手遅れになるところでした」


 「あ、あなた様は!?」


 「申し遅れました。私は織田家の大橋兵部と申します。配下の望月千代女、外に後一人居ますがそちらは

私の妻・・・失礼致しました。こちらの女性と外に居る女性は私の妻でございます」


 俺は配下と言った瞬間、千代女さんが悲しい顔になり思わず言い直した。癖って怖いよな。


 「そ、そんなお武家様が何故このような所に・・・それに治していただいたと言われてもお渡しする物が・・・」


 「おっかあ!大丈夫!私が働いておにいちゃんにお金払うよ!!」


 「ははは!構いませんよ。別にお金を取るつもりもないですし善意です。そうですね・・・ただ程怖い事はないと言いますからね?治ったとはいえまだ身体は動かしずらいでしょう?本調子になれば私の元で働きますか?魚の選別くらいならできませんか?」


 「え!?いやそんな・・・」


 グゥーーーーーーーーー


 アニメで聞くようなお腹の音が聞こえた。お母さんは思わず恥ずかしそうにうつ伏せになる。


 「身体は正直ですね!お腹が減るのは正常な事です!ただ今飯の用意させております。まずは食べませんか?」


 「おっ、おい!こっちでなんか光ってたぞ!?」


 「せきさんの所だぞ!?」


 「まさか・・・召されてしまったのか・・・」


 「なんかいい匂いもしているぞ!?」


 誰だ!?近所の人達か!?


 「あっ!小五郎おじさん!!」


 「うん?誰か居るのか?」


 あぁ〜。やっぱ近所の人達だな。そりゃビックリするだろうな。


 「突然に現れ、驚かせてしまい申し訳ありません。私、織田家 家臣 大橋兵部と申します。横に居るのとそこで料理しているのは私の妻で千代女と小雪と申します」


 「な、何しにここに来たのだ!?」


 うん?随分な言われ様だな!?


 「ここに大きな港を作るために視察に来ました。するとこの子に出会い家を案内されお母さんが倒れていた。だから治した。それだけです」


 「それでまた銭も魚も奪って行くのか!?今日という今日は我慢できん!おい!太郎!鍬持ってこい!」


 おいおい!?何で敵対心剥き出しなんだ!?


 「静まりなさい!あなた達は誰かと勘違いしているわ!」


 「何も違わん!お前達は織田だろう!?」


 俺はここで既に分かった事がある。魚を売るか何かして少ししか手に入らないお金をピンハネしてる奴が居るという事だ。それが織田家の誰かって事だろう。この人達はそれが俺達だと思ってるのだろう。


 「小雪?那古屋城は誰が?」


 「林秀貞様です」


 いやあまり会った事ないし喋った事もないけどあのクソ真面目な林さんがこんな信長に隠れて小銭をちょろまかす事はないはずだ。ならもっと下っ端の誰かか・・・。


 「ここに来てる奴の名前教えてもらえます?」


 「知らん!いつも3人くらいの浪人風情が幅を利かせてやってくるんだ!」


 チッ。上杉武田戦を目の前にめんどくさい。


 「いつもいつ頃に来るのか分かります?ちなみに俺達は無関係。そいつらを処罰する立場だから。あなた達には申し訳ない事をしました。代表で謝ります。この事は織田様にお伝えし早急に対策致しましょう」


 「い、いや勘違いだったようだ・・・すまねぇ〜・・・」


 「えっと・・・私は・・・」


 「あぁ〜、とりあえず休んでてください。お名前は?」


 「私は、せき。この子はのりです」


 「せきさんにのりちゃんね?のりちゃんはお腹空いてるかい?」


 「うん!空いてる!!」


 「そうか。なら腹一杯食べると良い」


 「はぁ〜い!お待たせ致しました!病み上がりにはお粥が1番です。どうぞ?申し遅れました。私は暁様の妻、小雪と申します」


 「こ、米が白い・・・」


 「小雪?」


 「万事抜かりなく」


 さすが小雪だ。みんなの分も作ったみたいだな。


 「みんなの分まで作ったのでただの粥ですがどうぞ」


 そこから食べながら思案する。港町にするにしても人手がいるだろう。この人達を使おうか。そして小銭をくすねる小物には制裁をしなくてはいけない。


 「小雪?多分俺の考えてる事分かるだろう?」


 「ここの運営で間違いないですか?」


 「うん。その事を優しく言ってくれるか?間違いなくここは発展すると思う」


 「畏まりました」


 「千代女さん?のりちゃんの相手してくれるかな?」


 「はっ!」


 俺は一人外に出る。港町システムがもう完了しそうだ。いきなり海から防波堤なんかが浮き上がっている。50メートル程離れた砂浜だった所にはスロープになって、ドッグが出来上がっている。道から少し下がった場所が隆起し家々も出来上がっている。我ながら思う。狂ってるなと。


 とりあえず船を出そうか。


 俺はインベントリーから漁船を20隻程出した。これは船ガチャのハズレ景品だからなんとも思わない。そして俺の主力船。


 「おぉ〜!!愛しの大和ちゃん!!!」


 出した瞬間に思わず涙を流しそうになる。あれは如月に、そそのかされ・・・『男なら全ツしてでも当てるよね〜ww』とチャットで話をしている流れで俺はさりげなく大和に乗り如月を迎えに行こうとしたが引けども引けども当たらなかったんだ。終いには如月の方が早くに当てやがった苦い思い出でもある。


 かなり長い防波堤にコレクションかの如く出す。先に言った大和を筆頭に武蔵、長門、操縦する人が居ないが航空母艦の赤城。


 そしてここからは現代艦船だ。もがみ、あたごだ。一応他にも潜水艦おやしお、そうりゅうなんかもあるがこの世界で潜水艦は意味がないだろう。


 後は巡視船擬(もどき)のような船も多数ある。こんなにあっても操船できるのは1隻だけなんだが。


 「おっ!!!!このどでかい鉄の船はなんだ!?急に地形が変わり見に来たがここは我らが治る地だ!!だからこの鉄の船も我らのだ!!」


 人が良い気分でコレクションを眺めて、余韻に浸っている時に・・・


 「時に・・・お前は誰ぞ!?何が『我らのだ!』だ!馬鹿じゃねーの!?」


 「おい!俺が誰か分かって言ってるのか!?」


 「暁様?大丈夫でしょうか?」


 「あぁ。小雪?このなんとかって馬鹿が俺の夏ボー全ツッパしたコレクションを『我らのだ!』とか抜かしてんだよ」


 「あら?あなた?名前は知りませんが早くやり残した事しておいた方ががよろしいわよ?」


 「小雪様!?このお粥にお代わりは・・・あぁー!!あんた!!」


 「おう!いつもの徴収だ!殿が鮭が食べたいと所望しておる!」


 「いやあれはたまたま獲れただけでーー」


 「るっせー!!己れらは言う事聞いておけば良いのだ!」


 「いやこんな時化では沖に出れない・・・」


 「そんなの知るか!はよう行け!!」


 まぁ絵に書いたような愚か者だな。勝手に成敗しても許されそうでもある。ただ・・・背後関係を見ないといけないな。

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