六角義賢の渾身のギャグ

 その後30日・・・まあ一ヶ月程は俺は内政に励んだ。新しくできた春町は最初こそ全然人が来なかったり身分が怪しい人が来たりしたが毅然とした態度で弥次郎さんが応待している。


 その区画にある居酒屋は大盛況だ。三河からの行商人や通行止めしていたらしい近江商人なんかの出入りも緩和したらしく飲み食いして帰っている。しっかり古い銭で両替してからだ。


 「多分行商人達は裏でほくそ笑んでいるだろうな」


 「でしょうね。けどそこまでしか考えれない商人は大商人にはなれないでしょうね。現に堺の商人なんかは通行禁止にしていないのにこちらに来ませんからね?」


 「まあこの円が出回ればお金の価値は俺達が決めてるようなもんだからな。堺の商人連合や納屋衆なんかは面白くないだろうな。今や堺程は物は溢れてはいないかもしれないけど質が全然違うし、俺達以外では作れない物ばかりだからな」


 「暁様?今月の春町の収支表です」


 「うん。さきさん?問題なさそう?難しいところはない?」


 「はい!大丈夫です!楽しく私もお勉強しながら頑張っています!」


 「分からない事があればちゃんと聞いてよ?」


 それから俺は頑張って収支報告書書いたであろう、拙い現代の文字でさきさんが書いた紙を見る。健気な子だと思う。この子も俺はちゃんと幸せにしないといけないと思う。


 「へぇ〜!?居酒屋だけで23日の営業だけで50万も売り上げがあるんだ!?」


 「はい。何でも近江商人?って方達が今後も頼むって事で両替したお金を殆ど使っているみたいです」


 「ふ〜ん。一応、1文150円で両替してるけど鐚銭なんかも一律にしてたよね?やはり鐚銭持ってきてる人が多い感じ?」


 「はい。中には鐚銭しか両替で出さない人も居ました。逆に良銭しか出さない人も居ます。何でも相手に失礼があっては今後気持ち良い商いが出来ないと言ってたそうです」


 「さきさん?今度、両替所の河尻様と連携して良銭だけを出した商人を歓待してあげてくれる?多分その時、俺達は三河に居ると思うから」


 「え!?私だけでですか!?」


 「うん。俺はさきさんを信用している。それに勘助もセバスチャンにも言っておくから。そんな礼儀を重んじる商人は今後是非お抱えになってもらいたいからね」


 商人の考えとしては両替所のルールを決めていない鐚銭の両替は受け付けないと言ってないから鐚銭で両替するのは当たり前である。


 損得勘定のできる商人ならばまだまだ他国で使える質の良い寛永通宝や宋銭は持っておきたいだろう。だが俺は気分的にも礼儀を重んじる商人にはちゃんと礼を以て答えてあげたい。


 今後まだまだ増えるであろう開発品なんかの専売権なんかを優先的に渡してあげようと思っている。まずはお近づきにならなくてはいけないけど、そろそろ俺達も準備しないといけないからこの件はさきさんに任す事にした。


 そしてこの日俺は黒夜叉隊全員を多目的ルームに呼んだ。


 「今すぐではないけど武田と上杉の同盟が成った。予想・・・いや確実に徳川様の三河の道から京を目指すようだ」


 「な、な、なんですと!?」


 「あなた達は戦いにくいでしょう?暁様と話し合ったの。参加したくない方は今回に関しては遠慮しても構わないわよ?」


 確かに元主君だろうからな。こんな生温い事本来ならば許さないだろうが俺は余裕があるから小雪と話し合い本人達に選ばせてあげる事にした。


 例え全員が行かないと言ってもそれはそれで受け取り今後も態度は変えるつもりはない。やはり感情があるからどうしてもやりづらい相手だろうと思う俺の優しさだ。


 「クックックッ・・・やっと積年の恨みを返す時が来たわッッッ!!!!!忘れもせん!天文12年・・・長窪城での事だ・・・」


 いやいや望月さんどうしたの!?佐助みたいになってるぞ!?


 「我らは誰も退きません。むしろ喜んで武田を滅しましょう」


 「よかったわ?もしあなた達が芋引くように辞退すればどう作戦を立てようかと思ってたのよ?望月様?あなたは長窪城にて奥さんを?」


 「小雪様。そうです。ワシは・・・グッ・・・」


 そうか。奥さんが亡くなったんだな。そりゃ内心、腑煮えくり返ってるよな。


 「ちなみに自分の手で決着をつけたい人は居ます?」


 「馬場美濃守でございます!」


 「え!?馬場信房の事!?」


 「ご存知でしたか!?」


 「いやまあ・・・それなりに猛将ですよね!?引っ捕えれるかな・・・」


 「いえ、奴の死が見れれば結構でございます」


 「分かったわ。私があなたの前に馬場美濃守を連れてきましょう。その手で首を刎ね、決着をつけると良いわ」


 「小雪様ありがとうございまする」


 「千代女嬢?あなたは今回、信雅さんに離れずにいなさい?暴走しそうならば必ず止めなさい」


 「はっ、はい!」


 「小雪様?某はそんな童と違いますぞ!?」


 「おや?亡くなった奥様の事を思えば今も涙流せる良い男の人が目の前に仇が現れても平常心で居られると?」


 「「「「はははは!」」」」


 「よっ!!望月頭領!!」


 「失礼致します。ぜばすちやんさま?から軍議を開いていると聞きました」


 「あぁ!六角さん!セバスチャンですよ。わざとに声を掛けなかったのですよ。六角さん達は慣れてもらわないといけないから俺達だけで構いませんよ?」


 「ワシは不要と・・・・」


 「いやいや違いますって!!来たいなら来ます?相手は武田と上杉同盟軍ですよ。ちなみに徳川様に救援です」


 「さっ!早く帰って畑仕事でもしましょうか!!」


 いやいやこんな冗談言う人だっけ!?


 「義賢様は面白い事言うのね?」


 「いや意外に皆が笑ってくれなんで内心焦っておった・・・」


 いやあんな真顔で言うからマジなのかと思ったんだが!?

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