豊後の暴挙
「話したい事があるのは分かりました。まあカトリックが酒を飲むかは分かりませんが・・・ワインでもどうぞ」
「ワイン・・・」
「あ、それとあなたに特別な飯も用意してあります。間違いがあるかもしれませんし、言葉が汚く聞こえるかもしれませんが確かワインとはキリストの血と言われ神聖な飲み物でしたよね?」
「な、何故そこまで詳しく知っておいでなのですか!?」
うん。未来から来たから!と言いたい。言えないけど。その特別なメニューはこの世界に来る前に読んだとあるシェフが戦国時代にタイムスリップした漫画に出てきたメニューと同じ物を出すようにセバスチャンにお願いした物だ。
その名もバカリャウ。干し鱈の料理でポルトガルのソウルフードだ。まあポルトガルに行った事はないけど。
確か漫画では泣きながらバカヤリャウ・・・とフロイスさんが言ってバカヤロウと聞き間違えたんだよな!?
「それは何でしょう?ちなみにお出ししたワインは赤葡萄のブルゴーニュのワインですよ。それと特別なあなただけの飯・・・バカリャウです」
ちなみにだがワインもハズレガチャの副産物だ。NPCに贈り物として渡し、親密度を上げるだけの物だったが今はかなり重要な物だ。
「まさか!?バカリャウ・・・いただきましょう・・・美味い・・・(グスンッ)」
「なに!?馬鹿野郎だと!?」
いや信長さんは漫画と似たような反応になるのかよ!?
「織田様!?これはバカリャウって名前の食べ物で発音が似ているだけでございます!!!!」
ってか本当に泣くのかよ!?まんま漫画と同じじゃないか!?
「(グスンッ)リスボンから遠く離れ中々帰る事のできない地にてデウスの教えを広めて参りました・・・これ程故郷を近く感じる事ができるとは・・・」
例の漫画の料理人・・・ケンに感謝しないといけないな。まんま同じ事言ってるよ・・・。
「まあ、その・・・大変だとは存じます。まずはワインを飲んで落ち着いてください」
このフロイスって方は純粋に布教してるだけでしょうね。ただ本国はそんな事はないでしょう。それは暁様も知ってるはず。
今はどれくらい数を増やしているのでしょうか?まあ史実でも植民地化はされませんでしたが良い印象はありませんね。暁様はこんな人が嫌いではないようですが。
「実は・・・豊後に居る私と同じ宣教師の事を言いたくて・・・」
「フランシスコカブラル司祭の事でしょうか?」
「やはりご存じでしたか・・・」
まあさっきも言った未来から来たから知ってるだけだけどフロイスさんが言ったのはこのカブラルの暴虐の事だ。
俺が居た世界の未来でも日本人嫌い、差別を行っているらしくなんとかゴアに更迭させたいのだと。もう1人このフロイスさんの盟友アレッサンドロ・ヴァリニャーノ司祭と共に連名で要求しているがそう簡単にもいかないらしい。それは何故か・・・
「実はヴァリニャーノ氏はまだ日本には来た事もない方なのですが彼はその地その地の現地の民の目線に落とし、日の本の言葉で言えば郷に入れば郷に従えの考えを実践される方なのです」
いやヴァリニャーノの事も少し知ってるけど確かかなり日本好きな人だったよな?ってかまだ来てないんだ?もう来てるかと思ったよ。
「まあヴァリニャーノさんの事は分かりましたがそのカブラル氏を更迭したい理由とは?」
「本国や経由地にて人身売買を行い、日本人の事をかなりその・・・下に見まして・・・言葉も覚えさせようとしない、デウスの教えを広めようともせず・・・ただ本国に銀などはかなり送っているらしく中々更迭されなく・・・」
バンッ!!!
思わず俺は畳を殴ってしまった。俺の嫌いな人身売買だ。しかも日本人をだ!!ってか生臭坊主と変わらないじゃないか!
「フロイス?それは間違いないのか?豊後と言えばーー」
「織田様。大友って方が豊後を治めています」
「大橋?貴様が人道に反する事を嫌うのは知っておるが事を構える事はできぬぞ?」
「大友宗麟は今は筑後国の龍造寺氏と敵対関係にあるかと。筑後に勝つならば何でも手を尽くしましょう。その一つとして農奴や身寄りのない女子供を外国に売り、種子島などの鉄砲を調達しているかと」
「小雪?筑後や豊後とはどれ程の距離だ?」
「暁様の乗り物で数時間でございます」
「すぐには、無理だがワシがどうにかする」
「実は大友氏とは幼少の頃会った事がありその時は聡明叡智の人と見えたのですが・・・」
「それはフロイスの間違いだな」
まあ落ち着いて考えてみれば九州にも手を出すのは現実的に無理だ。まずは早くに信長さんに畿内を掌握してもらわないとな。
「すいません。取り乱しました。まずはこのまま織田様に畿内を掌握してもらいます。フロイスさん?豊後の件やカブラル氏の行いの件はその後でも?それと辛口で言うわけではありませんが、信者を増やすのは結構。本国ポルトガルは植民地化して領土を増やしてますね?あなたは違うだろうと思いますがもし・・・」
「そ、それはマカオの事を!?」
「マカオはまだ準備段階でしょう?もう手中に治めてましたか?まあ外国はどうでもいいけど。もし、日本を・・・この日の本をポルトガルの植民地化する先兵を送ってくるなら俺はあなた達を敵と見做し排除するでしょう。私はあなたを好意的に捉えている。その事を忘れずに」
この方は危険だ・・・。本国がそのような考えをしているのは知っている。けど私はそのような野蛮な行いをしたくない。この国には四季があり綺麗な国だ。
そもそも国が大きくなる事は良いとは思うが、必ずしも国に俗国化しなくはならないとは違う。だがこればかりは国の方針にてどうする事もできない。
「お主もそう考えておったのか?ワシは敢えて目を瞑っていたのだがな?フロイス?そういう事だ。純粋に布教するならば構わん。だが権力を持とうとする動きを見せれば・・・後は分かるな?」
「は、はい」
「うむ。今日は謹賀じゃ。難しい話はここまで。ゆるりと過ごされよ」
フロイスさんとの謁見も終わりオレは信長さんと小雪3人で話す事になる。
「お主という奴は本当に苛烈だな」
「日本人が奴隷にされるなんか許せないです。ですが現実的にどうしようもないですからね。すいません」
「ふん。南蛮の考えで言うならば悪魔だったか?に魂を売るような暴挙だな。その大友何某は為政者ではない!」
「もし畿内を掌握すれば必ず九州にお願い致します」
「うむ。約束致す。それとワシの草によれば将軍は今にでも挙兵しそうな感じらしいぞ!」
「草・・・忍者ですか?」
「ほう?未来では忍者と言うのか。うむ。その忍者に電話なる物を持たせて潜伏させておる。今しがた連絡があった。ほんに、これは素晴らしい物だ!敵の情報がすぐに分かる!」
「ははは!まだありますので欲しい時には言ってください!それで将軍に何かしたのですか?」
信長さんが言ったのは単純明快、俺が出した酒や食い物や砂糖などを京に出回らないようにしたとの事。今や将軍の御節は寂しい物だろうと。
「愉快じゃ!己の力で将軍になったわけでもない御飾りの神輿が吠えよるわ。少し早く動くやもしれぬな。ワシの見立てでは一月じゃ!2月には将軍は動くであろう。準備しておけ!此度に関してはワシの戦をお主に見せてやろう!」
信長さんが言ったのは俺の装備は使わずに神速の戦!ってのを見せてやるとの事。確かに織田軍は動き出せば速いと有名だったよな。
「織田様?」
「小雪なんじゃ?」
「一計があります。その将軍が挙兵した時わざとに苦戦に見せませんか?そして私達は近くの宇佐山の城にて待機しておきます。さすれば今一度浅井、朝倉、本願寺が攻めてくるやも」
「ほう?ワシに餌になれと?」
「不安ならば護衛に付きましょうか」
「ふん。舐めるな!よかろう!作戦を決め奏上致せ」
凄い事考えたな。そもそも勅命を破り攻めてくるかな?武田と上杉はどうなっているのかな?
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