始まった謹賀の儀
さっそく大広間に案内されたが、俺達が部屋に案内されると既に名のある武将達は到着していたようだ。そしてすぐに謹賀の儀に入るみたいだ。
名前を置いてある場所に行く。信長が気を利かせてくれたのか隣には竹中半兵衛だ。いや、呑兵衛か。
「ほほほ!おめでとう。奥方殿もおめでとう。いやはや隣になるとは!!大橋殿の配下の飯でしょう?楽しみにしておりますぞ!!」
「あけましておめでとうございます。ってか、竹中さんは飲みたいだけでしょ!?まあ飯の方はセバスチャンも監督してるから期待していいと思いますよ」
「ほほほ!それと・・・知らぬ人も居るでしょう?恐らく大橋殿は本日は飲まされてしまうと覚悟しておいた方がよろしいですぞ?松永殿辺りなんかはこの機会に夢幻兵器の事を、探るやも」
「分かりました。警戒は怠らないようにしておきます」
オレは言葉には出さなかったが小雪の方を向き軽く頷いた。多分俺の意図を分かってくれるだろう。
カンッ カンッ
「お館様のおな〜り〜!!」
木と木を合わせて叩く、時代劇でよく聞いたような音から信長さんは登場する。
「皆の者よう参った!パアデレ達も来ておるがお主等の中で奴らを嫌いな者も居よう。よって、奴らは別室に居る。気にせずいつも通りにしてくれ」
まあ確かにこの時代は異国の人ってだけで嫌われたりするのかな?俺は気にならないけど。
出てきた飯は、おせちとは程遠いし、和食でもなかった。むしろこの時代では本来ならば絶対にない食い物だ。
「これじゃ!うむ!倉屋!ようやった!」
「は、は、はいっ!!」
いきなりの褒め言葉に倉屋さんはビックリしているな。しかも数々の武将の前だしな。そして、メニューなんだが俺は事前に聞いている。
「大殿様が好む物だけで今生見た事ない物を作れと言われていまして、セバスチャン様から『暁ちゃんは気にしないで?』との事です」
「まあ分かったよ。頑張って作ってください」
とこのようなやり取りがあったのだ。
「お館様ッッ!!これはうどんに似た物ですがうどんじゃない!?なんですか!?」
「美味いだろう?それはらーめんだ!!汁がなんとも言えぬであろう?」
「さ、さすがお館様!初めて食べまする」
「こ、こっちの黒い汁がかかっている物はなんですか!?」
「そっちは、はんばーぐだ!獣肉を粉々にしてパオンの粉を混ぜた物だ!ワシの好物の一つだ!」
「パ、パオンの粉ですか!?」
「ははは!さすが我らの殿!パオンがお館様に知り得たのも束の間、既にパオンを使った料理に応用しておるのですな!?」
「ふん。松永やめろ!お主は京に程近い故にこのような田舎飯を謹賀に食うのは抵抗あるだろう?無理に食わなくて良いぞ?」
「まさか!?あんな形式に囚われた飯なんぞ美味くない!断然こっちの方が良いですぞ!」
「ふん。まぁ良い。好きに食え!皆の者も質問ばかりでは食えぬであろう?好きに食え!そして、今回の謹賀の儀の饗応役の大橋兵部から一言」
いや、一言って!?なんも聞いてないぞ!?
「えぇ〜・・・あけましておめでとうございます」
「がはは!夢幻兵器の持ち主がそのような口上でどうする!?もっと腹から声出せい!」
クッ・・・柴田勝家は酒が入り更に大口を叩き出したな!?
「とにかく!!料理は全て見た事ない物でしょう。私の配下が考案した物です。古い形式に囚われず自由な物を食べるという柔軟な考えも必要かと。お帰りの際にも土産を用意しております。各々の家に帰っても食べれる物を説明書と共に入れて用意しております。では本日はお楽しみください」
「うむ。覇気は足りぬが土産を用意するとは気が利く。皆の者!本日は飲んで食べて英気を養え!」
「「「「おぉーーーー!!!」」」」
「(クスッ)暁様?カッコよかったですよ!!」
「暁さまぁ!?カッコよかったですよぉ!?」
チッ!竹中呑兵衛めが!小雪の真似しやがって!!
「小雪?酒は各種出しているんだろう?竹中さんに特別に90度近くの例の酒を出してあげなさい?ストレートでだ!!」
「(クスッ)畏まりました!」
飲んでのたうち回れ!!俺をおちょくるなんぞ100年早いぞ!
それから竹中さんに例の酒を飲ませ、大声で『効くぅ〜!!』と言ったもんだからみんなが飲んでみたいと言い酒大会みたいになっている。しかもみんな普通に飲めている。
「おかしいな!?こんな筈ではないんだけど!?」
「案外昔の人の方が肝臓は強いのかもしれませんね。興味深いデータですね」
「そうなのかな?信長さんは相変わらずサイダー飲んでるけどね?」
「大橋殿!?この風味と強い酒はどうやって!?」
「そうそう。中々に強い今生味わった事がない酒である!」
「それは酒を沸騰しない程度に熱して、蓋についた酒の水滴を更に熱してって感じだったかと。詳しくなくすいません。知りたければ私の配下のセバスチャンにお聞きください」
「なんと!?そのような作り方とは!?では是非に作り方を教わりたい!」
あれ!?確か酒は信長さんが勝手に作るな!って言ってたような気がするけど・・・まあいいっか。酒くらい広まってもいいだろう。それにもっと美味しい酒が生まれるかもしれないしな。
「いやぁ大橋殿は人気者ですな?羨ましいですな!」
「いやいや知らない事を聞いてきてるだけですよ。ってか竹中さん飲み過ぎじゃないですか!?」
「なんの!なんの!沢山飲んでも先日いただいたウコンなる物を飲めばたちまち酔いが醒めるのですよ!」
ウコンは二日酔いに効くと言われるアイテムだ。そもそもゲームで二日酔いになるとゲーム時間で8時間の間はパラメーターが下がるのだがこれを飲めばたちまち治るのだ。
一応今日の席にも各1人1つずつ置いてある。みんなと話していると信長さんから声が掛かる。
「ついて来い」
ザビエル・・・じゃなくフロイスさんのところかな?
ついて行き、通された場所はやはりフロイスさんの所だった。
「おう。邪魔するぞ!饗応役の大橋兵部少輔暁だ!」
「Feliz Ano Novo!animador Meu nome é Ohashi(あけましておめでとうございます!饗応役の大橋と申します)」
「え!?ポルトガル語ですか!?」
いやいやバリバリ日本語ですやん!?しかもめっちゃ上手ですやん!?
久しぶりに見た外国人に思わず関西弁で内心ツッコンでしまう。
「少し・・・挨拶程度知っているだけです」
「Feliz Ano Novo! Muita prosperidade, saúde e paz.(新年明けましておめでとうございます。たくさんの繁栄、健康、平和が訪れますように)」
うん。返されたけどまったく分からん!後で、世界100ヵ国の言語に精通している小雪に聞こう。
「Se você falar em seu idioma nativo, eles ficarão desconfiados, então, por favor, fale em japonês.(あなたの母国語で話していると怪しまれる為日本語でお願い致します)」
「ははは!御二人様ともポルトガルの言葉が上手ですね?あぁ、今のは私達が私の国の言葉で話していると織田様に怪しまれるため日の本の言葉で話しましょうって意味ですよ」
想像でしかなかったが、物腰柔らかい人に見える。なんていうんだろう?オーラかな?優しいだけではなくもっと大きな感じがする。俺はこの人事嫌いじゃない。
「なんぞワシが知らぬ事を話すなんぞ許さぬぞ?大橋!お前は此奴の国の言葉を話せるとは知らなんだぞ?」
「すいません、挨拶程度しか知りませんですが」
「ふん。まあ良い!して、此奴が言いたい事があるそうだ。酒の話相手程度に聞いてやれ」
なんだろう?初めて会うのに話したい事?
ドガシャーーーーーーンッ!!!
「こんな不味い飯が食えるか!!美味い飯を出せ!細川!細川はどこぞ!?」
「将軍!細川様は見当たりません!」
「はぁ〜・・・折角岐阜から流れてくる酒を楽しみにしていたのにまさか将軍が織田様と仲違いしてしまうとは・・・」
「お前もその考えか・・・。ワシはちょこれいとなる物を期待しておったのに・・・しかも、お節と言えるか分からん見た目だけの飯だな。将軍の土産の方が高く付いた」
「うむ。細川様の噂は案外本当やもしれぬ」
「チッ!己れ等の土産はなんじゃ!?武家の覇者たる麿が特別に商人如き貴様等が参列する事を許してやったのじゃぞ!土産がただの酒とは麿を馬鹿にしておるのか!?」
「し、将軍!それは灘の酒でしてーー」
「黙れ!灘の酒なぞ古い!岐阜にびーるなる物やういすきーなる物があるだろう!何故それを土産に持ってこぬのじゃ!」
「あ、あれに関しては岐阜の民や織田様に許しを得た商人ではないと買えなく、大橋兵部様に直接取り次いで貰いたいと文を送っても返答もなく・・・」
「えぇい!もう!良い!その酒を置いて去れ!欲しい物も届けられぬ商人なんぞ要らぬ!」
「俺は・・・俺はもう京に足を伸ばす事は辞める」
「奇遇だな?ワシもだ。あんな将軍のために物を運ぶなんぞ御免だ。だがお前は確か・・・」
「あぁ。茜屋は和泉国から消え失せる。全財産を使って唐物の茶器を買い岐阜に走る。時代は織田よ!網干屋?お主も見切りを付けた方が良い。俺はお主と違い茶器の目利きは良くないのでな」
「ふん。昔の誼だ。ワシの茶器をお主に譲ろう。家族と銭を持ち岐阜に共に参らないか?それに実は・・・」
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