新たな課金アイテム

 昨日の夜は女の子達に詰められた。さきさんや小雪という美人な嫁をもらいながら女遊びを誘うのかとだ。俺は誘った覚えはないし、なんなら風俗業も勧める事はしないが立派な仕事だと思う。


 それを否定する女の子達だ。でも彩葉ちゃんや市華ちゃんなんかは女遊びを咎めるわけではなく病気を持って帰りそうとの事。それはそれで偏見ではあるがなくはない気はする。


 「少なからず城下の外れた畦道に所々ある小屋がそうなんだろう?」


 「ほ〜ら!暁様は知ってるじゃないですか!行った事あるのでしょう!?」


 「いやだから行った事ないって!!岐阜に来た直後の時になぜ離れた所に住むのか確認したらそういうことだったから知ってるだけだよ!小雪と一緒に確認したから!」


 「某はそのような場所に行った事はないですが確かに夜に素浪人みたいな輩や諸国放浪しているような輩が屯(たむろ)してるのは知っておりましたが中々の盛況ぶりですな?」


 「ちょっと!父上まで!!」


 「これ!やめい!千代女!ワシはお母さんだけしか、あつこの事しか考えておらんから!!!」


 意外にも望月さんは一途なんだな?いやそんな事より・・・。


 「とにかく!意外にもああいう店?ではないけどああいう業種はそれなりに需要はあるし健全な店を作れば問題ないだろ!?正月明けくらいにでも織田様に上奏するから!俺達がちゃんとした店作りをして、身体検査などもして、女の子達を管理して給金も渡せばいいだろ!?」


 なんでいつのまにか風俗業をしようとしてるんだ!?どっからこうなった!?


 「分かりました!暁様が率先するならば安心です!ボロ雑巾のような女は可哀想です!」


 「あぁ〜!もう!!分かった!分かった!小雪!そういう事だから!正月明けは織田様に夜の店の上奏!どうせなら新たに区画を作りそういう店は一つの場所にするように考えよう!分かった!?」


 「(クスッ)はいはい分かりましたよ!気付けばこの世界の実業家になっていますね!」


 確かに武器製造を始め、飲食店、畜産業諸々、なんなら漁業もこれから始めようとしているからな。多角経営な感じだな。しかも持ち出しもなくすぐに仕事に繋がるからな。


 「まあ頑張るよ。将軍がいつ動き出すか分からないけど御供衆だっけ?あんなのに遅れを取るような織田軍じゃないしね。少しは内政に目を向けようか」


 迎えた1月2日。織田家 家臣の大名行列だ。西国の方からは松永久秀を筆頭に志摩からは九鬼嘉隆、東国からは徳川家一門だ。それぞれ自領の小さな城主なども来ている。


 そして珍しく京に詰めている村井貞勝さんらも来ている。将軍を放ったらかしにして構わないのだろうか。


 俺と小雪も礼儀正しく列に並び待っていたが、10分もしない内に小姓の堀さんが走ってやって来た。


 「あぁ〜!堀さん!新年明けましておめーー」


 「大橋様はなにやっておられるのですか!?大橋様は気にせずに城に入れろと言われております!」


 いや何で列に並んでただけなのに怒られるのだ!?理不尽だ!


 堀さんがそう言うと並んでいた人達から一斉に注目を浴びる。


 「あの人が大橋殿か!?」


 「身長が高いな!?」


 「ツレの女は左衛門尉殿では!?」


 「左衛門尉殿も大きいぞ!?」


 「あれなる者が夢幻兵器の持ち主・・・」


 「是非お近づきにならねば・・・」


 おいおい・・・全部聞こえてるよ・・・。そんな俺なんかに構わなくていいのに。


 行列の中顔パスで城に入る事になり、とりあえず信長さんに挨拶する事になった。ちなみに謹賀の料理の件は倉屋さん達が作るのを許され・・・というか『今生味わった事のない謹賀に相応しい飯を用意致せ!』との命令で昨日の夜中くらいから城詰めになっているはずだ。一応、補佐としてセバスチャンも同行させている。


 「失礼致します。大橋兵部少輔暁様及び大橋左衛門尉小雪様参られました!」


 「うむ。入れ!」


 堀さんに口上してもらい入る。


 「明けましておめでとうございます。本年も変わらぬ御活躍御健勝を願います」


 「ふん。柄にもない挨拶をするな!お前は織田一門衆と同等と思え!気にせず城には入って良い!」


 チッ。親しき中にも礼儀ありと思いちゃんと挨拶したのに!


 まあけど色々俺の事優遇してくれているのは嬉しい。しかも一門衆って家族って事だろう?嬉しいな。


 「織田様?明けましておめでとうございます。大した物ではございませぬが、主人、暁様と考えお持ち致しました。お納め下さい」


 「うむ。これじゃ!大橋!貴様に過ぎたる者は小雪ぞ!良く出来た女子じゃ!して、これはなんぞ?空けて良いのか?」


 手土産で持って来た物はこれまたかつてゲームでは課金でしか買えなかった、ゲーム内では領民の幸福度を上げるアイテム【全自動街システム君】だ。


 この全自動街システム君とは片手で持てるくらいの丸い球体なのだがこれを地中に埋めると自動で半径50キロ圏内の下水、汚水などを自動で吸収し濾過し綺麗な地下水脈に流す優れ物だ。


 価格は100円と安かった物だ。何故このような物があるかと言うと先に言った領民の幸福度が上がるアイテムだ。自分の街が汚れ下水、汚水設備を設置していなければ疫病が増えたりインフルエンザやコレラが流行ったりとなるからだ。


 それを放置すると生産性が見る見る減少して防衛するNPCの指揮が下がり、猛者(廃課金者)やはたまた初心者プレイヤーにまで攻撃を仕掛けられるのだ。


 そもそも、下水設備などの施設も課金で買える物ではあったがそこは運営の手腕見事な1000円と買えなくはないが微妙に兵器ではない物にしては高い絶妙な値段設定だったため俺はこの全自動街システム君を多数購入し、定期的に配置しているのだ。


 効果がいつ切れるかはゲーム内では病気などの蔓延具合で判断するしかないが運営が作ったルールを突いたアイテムの使い方だ。


 初心者が初めて自分の領土を持つ時にお試しで使いやすくするためこの値段設定にしたのだと思う。


 「うん?なんだこれは?」


 「これを新たに築城する城下に埋めて下さい。これを織田様に託します」


 「埋める?埋めるとどうなるのだ?」


 「はい。簡単に説明致します」


 俺は全自動街システム君の効能を言い暫くは効果が保つと言った。ゲーム内では時間経過が違うけど一回で1年は保ってたから同じだと思う。その事も伝えた。


 「やはり家の端々で臭う事がありませんでしたか?」


 「うむ。だからワシは尾張の時から糞尿は一塊りにし有効活用しようと火薬にする方法を見つけ今もそれはしておる」


 「あっ、忘れてました。火薬の製造はもっと効率的な方法がありますのでまた教えますね」


 ゴツンッ!!!


 「そんな大事な事は早くに言え!ワシが非効率に見えるではないか!」


 新年早々拳骨かよ!?そりゃ確かに伝えるのを忘れてたのは悪いけど。


 「すいません。今後糞尿は綺麗にし、町ももっと清潔に致します。それがその効能のある玉です」


 「うむ。だが何故8つもあるのだ?」


 「え?だってこれから治る土地が増えるでしょう?その町々に必要かなと思いました」


 「ふん。大橋は・・・いや何でもない。これはありがたく貰っておく。また使う時に言う。間違えがないように使いたい」


 「分かりました」


 「それと配下の倉屋やセバスチャンにも伝えたがパアデレも来る事になっておる」


 「パアデレ・・・ルイスフロイスさんとかオルガンティーノって方ですか?」


 「ほう?未来でも名前が残る奴か。フロイスが来る。中々に話の分かる奴でな?無理な布教をするのではなく民草の目線に落としデウスの教えを説いておる」


 「分かりました。正直外国の宗教は詳しくありませんので挨拶程度に・・・」


 「ほう?貴様にも苦手な事があるのだな?良きに計らえ。下がって良いぞ」


 ルイスフロイスか。まあ歴史でよく聞く宣教師だよな。あそこの宗教は狂ってるからな。まあ人柄を見てからだな。とりあえず母国はポルトガルだったよな?挨拶だけポルトガル語で言おうか。

 

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