8歳の子に心配される暁
12月31日の早朝から俺の館の前には長蛇の列の人人人。
目的は・・・近所の人達だ。近所と言っても岐阜の城下の人達だ。
「本年はお世話になりまして・・・勘助様に格別の配慮をいただき…」
「勘助様に教えていただきましたがテンサイなる物が砂糖の原料とは知らずしかも新しい染め物も買えるくらいになりました………」
「勘助様よりイチゴなる物を栽培する権利をいただき……」
「勘助様から紹介され大橋家の公共事業なるものに参加させていただき、朝も昼も夜も飯が出されてこんなに給金まで貰って……」
「勘助様に……」 「勘助様が……」
一応来た人みんなが挨拶したいと言うから俺とさきさん、小雪で対応しているがみんながみんな勘助が勘助がと勘助無双だ。いや凄いよ?こんな短期間でよく往来の人達を掌握したものだなと思う。
けど何で勘助が居ないんだよ!?何が『アッシはそんなの苦手でさぁ!暁様が対応お願いします』だ!
「これはそこの長良川で獲った鯉です。大橋様の口に合わぬかもしれませんがよければ・・・」
「ははは。ありがとうございます。いただきますね」
正直、鯉は食べる気はしないが貰った物を突き返すような無粋な事はしない。これは後でちゃんと食べよう。
「これはうちのが早朝獲ってきた鯉になります。どうぞ」
「セバスチャン様に教えてもらい作った仕掛けにて獲れた鯉になります」
何でみんな鯉鯉鯉なんだよ!?どうすんだよ!?
「よっ!大橋の兄ちゃん!!」
「おっ!久しぶりだな!金太郎!」
変な名前と言えば失礼だがこの金太郎君は8歳の俺の館に近い家の子だ。岐阜にこの館を出した時、既に父さん、母さんが病気で亡くなっていたらしくお婆ちゃんと住んでいた子だ。
特にこの子に限らず似たような環境の子はこの世界には多いが近所というのもあるから何かと目に掛けてあげてる子だ。
最初この子を見て思ったのが明らかに栄養失調。お婆さんも挨拶に行ったが死相が出てるレベルの栄養失調だったがセバスチャンに言い滋養のある食べ物を渡し、お婆さんには館のポッドに入ってもらい悪食をしていたせいか食道癌、胃癌と診断されたが治してあげて寿命まで生きてもらう事にした子達だ。
基本姉川とか京に行ったりとしていたから俺よりセバスチャンの方と仲が良かったりするのだ。俺も岐阜に居る時はゴムボールでドッチボール的なルールも何もない遊びをしてあげていたりはする。
「婆ちゃんが大橋の兄ちゃんにって!これ!」
「うん?鯉か!?」
「そうだぞ!婆ちゃんが兄ちゃんは忙しいから子がまだ出来ないから鯉を食べてもらえば男は強くなるんだって言ってたぞ!!」
「ブッ!!!それはなんだよ!?ってか婆ちゃんは俺の子供の事心配しているのか!?」
「あったりまえよ!この辺の人達みんな言ってるぞ!?こんなに大きい家に住み、お金もいっぱい持ってるのに子供が居ないって!」
だからみんな俺に鯉を持ってくるのか!?まさか俺が不能者と見られているのか!?8歳の子にすら心配されてしまうのか!?
「ゴホンッ・・・お婆さんに伝えなさい!子供はまだーー」
「金太郎君?ありがとうね?後で"絶対に"暁様に食べさせるからお婆さんにもありがとうって伝えてくれる?はい!飴玉よ?お婆さんにはこれを渡してあげなさい?皮を剥いて食べるように言うのよ?」
「金太郎君?私からもお渡ししますね?お餅だから喉に詰めないように食べてくださいね?」
「小雪姉ちゃんもさき姉ちゃんもありがとう!!!」
なんか2人の連携・・・小雪の絶対に食べさせるって・・・寒気がする・・・。
この日の夜ご飯・・・一年の締めの飯は鯉だった。紛れもなく鯉だけだった。鯉のあらい、塩焼き、西京焼き、昆布締めお吸い物、鯉の炊き込みご飯・・・鯉鯉鯉だ。
「おっ!?暁様はそんなに鯉ばかりどうされたのですか?そんなに鯉が好きでしたか!?」
「違う違う!近所のみんなに貰ったから捨てるわけにはいかないから食べるんだよ!ってか何で黒夜叉隊だけ、おせち食べてるんだよ!?」
「あーしが作ったからよ?弟子達も実家に帰したし、工場の火も落としたからする事がないのよ?だからおせち作ったの。暁ちゃんは鯉を食べて精力上げないとね?小雪嬢とさき嬢が待ってるわよ?」
はぁ〜。食べるしかないな。
この日一年の締めくくりの日にオレは暫く鯉は食べないと誓った。それくらい鯉を食べた気がする。
そして夜は例の如く・・・しかも今日に関しては2人同時にだ。辛い・・・・。ただ一つ、小雪に言われた事は『浅井、朝倉の問題が片付けば本当に考えてほしい』と言われた。まあ子供の事だろうな。
迎えた新年、一瞬ツェッペリンに乗り初日の出を見に行こうかと思ったが寒いのと昨夜の激戦にてヘトヘトになってるから辞めた。
「はぁ〜い!黒夜叉隊のみんな!?暁ちゃんも!ハッピーニューイヤー!」
パンッ パンッ
「おっ!?なんだ!?なんだ!?」
「銃声か!?」
「違うわよ?クラッカーよ?黒川きゅん?あなたには特別に作ったわよ?」
「あ、ありがとうございまする。これは?」
「見てのお楽しみよ?暁ちゃんをちゃんと守るのよ?」
「おーい?セバスチャン?何を渡したんだ?」
黒夜叉隊のみんなに渡した物はグロック19、まあ拳銃だ。インベントリーから出した物ではなく特別に作ったみたいで黒川さんのだけ特別仕様で持ち手の所にハートマークが刻印されていた。しかも赤色でだ。
「これを我らにいただけるのですか!?」
「当たり前よ?あなた達を見てたけどちゃんと暁ちゃんに従っているし信頼できると思ったからよ?望月さん?これからも暁ちゃんをよろしくね?」
「はっ!当たり前です!試射してもよろしいですか!?」
「いいわよ?弾は武器庫に入れてあるから好きなだけ撃つといいわよ?」
正月早々に俺の館の裏で銃大会が始まった。
「みんな出払ったし、俺も皆にお年玉的な事しないといけないな。シンプルにお金なんかどうかな?」
「純粋に喜ぶかとは思いますがやはり物の方が良くないですか?」
「う〜ん。小雪は何かいい案ある?」
「あまり暁様が女遊びとか飲みに行ったりしないから人間の男ならそれなりに溜まってるかもしれませんよ?」
「え!?」
「だって佐助にも以前、彩葉との事で注意してたでしょう?あれから黒夜叉隊は女遊びは厳禁みたいな風潮になってますからね?」
知らなかった。いやオレは2人が居るからこれ以上は無理だけど確かに黒川さんはまだ40代・・・望月さんは50代・・・望月さんはどうか分からないけど女遊びもしたいのか。
けど、黒夜叉隊はみんな一緒に住んでるからな。今からジオラマ家出してもいいけど、それで遊びなさい!って言っても無理だろうな。
これはまた近々考えよう。早く家を出してあげて好きなようにさせてあげようか。
「うん。ならとりあえず現金渡しておしゃれな普段着でも渡そう。小雪?何か適当に見繕ってくれない?」
「(クスッ)畏まりました」
俺はトリガーハッピーしている裏の射撃場に行き黒川さんと望月さんに声を掛けた。
「申し訳ないとは思いますが気がつきませんでした」
「え?なんですか?」
「いやその・・・ね?ここでは女の子達や千代女さんも居るから言いにくいけど・・・」
「あぁ〜!?暁様は新年早々何を企んでいるのですか!?」
「いや、違う!風華ちゃん!!これは違う!」
「へぇ〜?」
チッ。今言う事じゃなかったな。
「とにかく!近々皆に各々の家を出してあげるから戦や銃の事ばかりではなくちゃんとお金を使い遊びなさい!後で俺からお年玉あげるから集合!」
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