信長の嫉妬

 「で・・・貴様はワシに内緒で信治等と飲み食いしていたと言うのだな?ワシは貴様を案じて昨夜は何も指図せずにした訳だが・・・この落とし前はどうつけるつもりなのだ?」


 俺は何で詰められているのだろうか・・・。そう。どれもこれも信治さんがいけないのだ。


 結局、深酒をし過ぎて俺の館に泊まる事になったのだが早朝から、すずちゃんを連れて遠乗りをする・・・まあこの時代で言うドライブ的な事をしたいと言って小一時間程で帰って来て登城した後に信長さんに昨日のすき焼きを自慢したからだ。


 「すき焼きが食べたいのならば今すぐにお作りーー」


 「抜かせ!!ワシが食い物の事で怒っているようではないか!!?ワシは食い物なんかで怒る童ではないぞ!!」


 いやおもいっきり怒ってませんか!?


 「すいません。次からは織田様にもお伝えするように致しますので・・・」


 「ふん。まあ良い。以後気をつけよ。それでだ・・・。奇妙丸の事だがどんな感じだ?」


 俺は昨夜、黒川さんや信治さん達が酔い潰れてから奇妙君と話した事をそのまま伝えた。


 奇妙君が言ったのは近江の商人、堺の商人、伊勢の商人などかなりの人数が今は入り込んでいるみたいだ。


 浅井と敵対関係になり、近江からの商人は岐阜には来ていなかったらしいが織田軍優勢と見た商人の一部が浅井を見限りやってくるようになったと。


 「ほう?人の選別は大丈夫なのか?」


 「喜助を補佐に付けておりますのでまず問題ないかと」


 「うむ。一次産業だったか?それはどうじゃ?」


 漁業の方は勘助とあの女の人達に任せている。延縄や近場での流し刺し網漁を行い、館から那古屋に向かう時は館で作った氷を持ち、現地で氷が溶ければ簡単に硝石氷を作り今や岐阜に店を作り、交代で海に行く班と店で売る班に分かれ、生の魚を売っているまでになっている。


 そして、酪農の方だが大杉さんが本当によく頑張ってくれている。セバスチャンに特別に作って貰った極細の剣にて〆ているみたいだ。牛の交配に関しても魔改造した牧場に、これまたセバスチャン考案の『音楽を聴かせて育てるのがいいのよ?』との事でたまに琴なんかを弾いてるらしい。しかも弾いているのは大杉さんだ。


 「ならば順調に食肉の方の数も増えているのか?」


 「はい。かなり順調そうです。人を雇いたいそうですが中々適性の人が居ないそうで・・・」


 「ついこの間まで禁忌としていたからな。ワシは抵抗こそなくなりはしたが〆る作業は躊躇してしまうやもしれぬ。大杉とやらは竹中の配下だったよな?」


 「はい。竹中様が連れて来てくれた方です」


 「うむ。人員はワシが新たに補填致そう。大杉を労ってやれ!」


 「分かりました。次は飲食店の方ですが・・・」


 飲食店の方は簗田さんや市兵衛さんの独壇場だ。ジオラマのアイテムにて、出来た瞬間から老舗感満載の店作りにてメニューは様々な未来料理だ。これも勘助が入っており様々なアイテムを使っているとの事。


 まずはコンロなんだが、どういう原理か分からないし使えるのだからそういうことなんだろう。喜助やセバスチャンでも分からない4個口のコンロだ。ガスやなんかもない。けど何故か使えるのだ。


 このコンロにより調理時間が大幅にカットされ、これまた何故使えるか分からない巨大冷蔵庫をインベントリーから取り出し配置してあると聞いている。


 冷蔵庫に関しては、きょうさん達が交代で営業している魚家の事務所にも出しているらしい。数々の使えないアイテムが今やチートアイテムとなってるわけだ。しかもどれもこれもオーパーツだ。だって何故使えるかは俺にも分からないからだ。


 この世界線の未来ではどのように室町時代末期のここ岐阜や尾張の事が伝わるのだろうか。少し気になる。


 「ほう?確かに昨日見たが中々の盛況ぶりだったではないか?どれ。ワシも昼飯はそこに食べに行くとしようか。大橋も着いて参れ!」


 「え!?あ、はい!」


 「お主等だけ潤っても意味がない。他の者にも色々教えているのか?」


 「はい。元今川の倉屋孫八という方に色々算術などを教え、岐阜の農家の人達に私が出した数々の食物の種や苗を渡し育てております。米なんかも育て方が色々ありーー」


 「長い!簡潔に言え!」


 「すいません。私が来る前まで美濃改めここ岐阜は米は良くて15万石相当だと思いますが来年は100万石にはなるのではないでしょうか」


 「なに!?100万石だと!?」


 「はい。軽く見積もってもそのくらいは余裕で行くだろうと思います。ただし、いつかやはり不作の年も来るでしょう。さすがに天候は私もどうにもできないのでその折は50万石くらいに減ると思います。なので、蔵を用意し貯蓄米なんかを置いておけば良いかと」


 「素晴らしい!!!取らぬ狸の皮算用ではないがこれ程良い事があるか!米以外には何を育てておる?」


 「今後、他国に高く売れる砂糖の元となるサトウキビ、テンサイという食物を始め、果物類・・・リンゴ、ぶどう、なし、バナナ。ハウスにてマンゴーやドラゴンフルーツなど比較的亜熱帯で作られる果物も始めているそうです」


 「うん?知らぬ名の物ばかりだな。お前が監督しているわけではないのか?」


 「育てる食物は私が提案致しましたが育てている人員はさっき言った全て岐阜の農家の人達です。私達だけが育てても意味がないのです。私も不死ではないためいつか死にます。その時、誰も育て方を知らなければ私が居た意味がなくなりますので極力、農作物に関しては岐阜の人にお願いしています」


 「うむ。浅はかなワシを許せ。多少は皆に教えておるかとは思うたがまさか農作物全てとは思わなんだ。今度全部食べさせろ。して、兵器の方はどうだ?セバスチャンは何を作っているのだ?」


 「はい。今はここらへんの人達だけでも使える大砲を作っているそうです。既に試作もかなり作っているらしく河尻様なんかは早く試射したいそうで文も届いております」


 「ワシも見てみたい!近々準備できれば教えろ!」


 「分かりました。とにかく今は人が全然足りませんので大規模な新しい人をお願いします。まだまだ他にもやりたい事がありますがそれはまた追々言いますので」


 「うむ。向上心があるのは良い事だ。何もせずただ、日々を怠惰に過ごすのではなく失敗をも恐れず変わるのは良い事だ!褒美を渡そう。だが正直、貴様が喜びそうな物が分からぬ。何が良いか?」


 「え!?褒美くれるのですか!?ならお城を建てたーー」


 ゴツンッ!!


 「貴様に城を与えてどうする!?岐阜城をも凌駕する城を建ててしまうだろう!?」


 まあそのつもりだからな。けどあなたはそろそろ安土城を建てるだろ!?安土城は俺が魔改造してやるから俺も城が欲しい・・・。なんならこの岐阜城でもいいんだけど。


 「では織田様が新たに城を建ててからこの岐阜城を貰えませんか?」


 「貴様自分が何を言っておるのか分かっておるのか!?」


 「はい。私も馬鹿ではございません。既に新たな城を考えているって言ってましたよね?」


 「・・・・・・」


 「その新たに築城しようとしてる城は私が世界で1番の城に致しましょう。『日の本に織田在り!』と分かるような城にです」


 「よかろう!ワシが新たな城を築く時は貴様に縄奉行を任す。そして完成した城がワシの予想を超えておればこの岐阜城は貴様に譲ってやろう」


 「言いましたね!?絶対ですよ!?約束ですよ!!?」


 「くどい!男に二言はない!下がれ」


 よっしゃ!!言質は取ったぞ!魔改造の安土城を作ってやろう!たしか場所は六角さんの観音寺城付近だったよな!?それに本来なら丹羽さんが縄奉行だったと思うけど手柄は俺が貰うぞ!いや・・・丹羽さんも一緒に仕事をすればいいんだよな!?うん!そうしよう!

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