小雪と暁の懸念

 「ただいま〜!」


 「あら?暁ちゃん?お帰り〜!小雪嬢も佐助もお帰り〜!」


 「暁様お帰りなさいませ」


 「うん。さきさん久しぶりだね。とりあえず風呂!風呂に入る!」


 「わ、私がお背中お流し致します!!」


 帰ってきてそうそう、さきさんからの誘いに見える。まあ嫌がる事ではないけど。


 そのまま風呂に直行し、さきさんに体中隅々まで洗ってもらいベッドにダイブだ。まあ例の如く夫婦のお勤めは果たしたわけだが。


 そのまま、今回の戦の事や帝と会った事、正確には俺は会ってはいないけど。まあ、その事や今後していく事を伝える。


 「ではしばらくはこちらでゆっくりされるのですか!?」

 

 「う〜ん。まあすぐに戦にはならないだろうけど、来年すぐくらいに将軍が馬鹿な事するかもしれないかな?けど多分問題はそこじゃないんだよ」


 「そこじゃない?」


 「うん。完膚無きまでに叩いたから恐らく大丈夫だと思うけど俺達がまた京に出張っている時に浅井、朝倉、本願寺が和睦を破り攻めてくるかもしれないからね。なんなら武田も一緒に来るかもしれないし、1番怖いのはその武田なんだ」


 コンコン


 「小雪です。構いませんか?」


 「いいよ」


 「スッキリしましたか?いっぱい出ましたか?」


 「ブッ!!!直に聞いてくるな!!ほっといてくれよ!!」


 「いけません!暁様の体調に関わる事です!さきさん?暁様はいっぱい出ていましたか?」


 「えっと・・・その・・・はい。たくさん・・・」


 「ではまだ余力がありそうなので次は私もお願いしますね?」


 いやマジかよ・・・ってか、さきさんも何言ってんだよ!?


 「まあとにかく、しばらくはここに居るから安心してくれ」


 「武田がどうとか言ってませんでしたか?」


 「あぁ。ないとは思うけど武田、上杉は犬猿の仲だけど、もしかするとね・・・2人が同盟して織田に立ち向かってくるかもしれない。鳥型カメラで頻繁にお互いの伝令役が行き来してるのを確認しているんだ」


 「まさか・・・」


 「さきさん?この事はまだ内緒よ?織田様にも言ってないのだから。暁様は武田と上杉の同盟を今の所40%くらいと見ているわ」


 「よんじゅっぱーせんと?」


 「悪いわね。4割くらいの事よ?私は更に北条なんかも加わってくると見ているの。ただ、北条も加わるのは1割もないかもしれないわね。ただの懸念の一つよ」


 「もしそれが本当ならば・・・・」


 「安心しなさい?織田は私達が居る限り負けはしないわ。ただ、徳川様が危ないわね。どちらにしても道順として三河を通るでしょう。上杉は義を重んじる人。北条は領土に固執する人。武田は自尊心の高い人。織田という外敵が現れ、将軍の号令に上杉が呼応。一時的に武田と同盟。織田から技術を習い徐々に大きくなっている徳川。それを危険視する北条」


 小雪は最悪の想定まで考えてはいるがさすがにそこまではならないだろう。基本この時代の武将は我が儘だ。足並みが揃うはずがない。だけど油断は禁物。


 「とにかく、さきさんは安心してこの館を仕切ってほしい。負ける事は万が一にもないから」


 「分かりました。実はセバスチャン様から暁様が居ない間に色々料理を教わったのです!今夜は私が作ってもよろしいですか!?」


 「さき?それはだめよ?今から私が暁様から寵愛を受けるからその後にしなさい?」


 クッ・・・・回避失敗か!?


 




 中々に激戦だった・・・。俺は早く終わらせたかったが、小雪が今までの我慢が爆発したのか中々終わらせてくれなかったのだ。まあ嫌な事ではなかったがさすがに疲れた。というか少し痛い・・・。


 「ふぅ〜。小雪勘弁してくれ・・・もう無理だ!」


 「ウフフ。ありがとうございました!ご馳走様でした!また2日後よろしくお願いしますね?さて・・・ご飯の前に一度、奇妙様にもご挨拶に行きませんか?喜助にも会っておかないといけないですし」


 「あぁ。そうだな。分かった」


 「失礼します。戻ってから半日と少々経ってしまい申し訳ありません」


 「うむ!大橋殿が居ない間に色々学びましたよ!喜助に聞き、数字の事、南蛮の言葉や文字、長さを測る単位や重さなどもです」


 「ははは。覚えると便利ですからね。それで、商売の方はいかがですか?まだ私も聞いていないのですよ」


 「喜助とセバスチャン殿の助言にて中々に上手く・・・いや正直絶好調と言っても過言ではないかと。暫し長くなりますが日を改めますか?」


 「奇妙様は織田様と城に戻らなくてもいいのですか?」


 「実は戻ってきた直後・・・大橋殿が風呂に入っている間に父上が来て『戦の事より経済を覚えろ』と言われました。なので帰りません」


 「そうですか。分かりました。ではよければ夜飯一緒にどうです?その時に話でもしながら食べませんか?」


 「うむ。お願いする」


 少し会ってない間に垢抜けた感じがする。どんな勉強をしたか分からないしセバスチャンにも聞いてないから分からないけど徐々に片鱗を見せて来ているのか?凡庸な子かと思ってたけどとんでもない器の子だったか!?




 「ははは!暁様!久しぶりの飯は美味いですな!?さすが奥方殿が作ったすきやきなる物だ!!」


 「いや黒川さんは陣中でも敵陣手前でもどこでも食べてたでしょ!?」


 「そうでしたか!?ははは!これは誠に美味い!酒も飲みすぎてしまうぞ!」


 いやたくさん食べるのは構わないけど黒夜叉隊の人達はどうしたんだ!?そりゃすき焼きは俺もかなりの好物だけどガッツキ過ぎじゃね!?望月さんなんか青筋立てながら食べてるぞ!?


 「あ、あのう・・・お肉は畜産班の人がまだまだあるからと・・・」


 「お!?さすが奥方殿!いただきます!おい!黒川!それはワシの肉だろうが!!あっ!千代女まで!?」


 いい雰囲気だ。奇妙丸君が気にするなと言ってくれたからいつも通りな感じだ。


 「こんな中ではとても話せる感じがしませんね。すいません」


 「いえいえ。家族のようで某は羨ましく思いますよ」


 「暁ちゃん?ちょこっと優男だけど偉そうな人が来たわよ?」


 「うん?こんな夜に誰だ?」


 「おーい!こっちか?入るぞ!美味そうな匂いが漂っておるが・・・なんじゃそれは!?」


 「あっ、信治様!?どうされましたか!?野府に帰られたのでは!?」


 「うん?あぁ。帰ったぞ?そしてまた外出してここに来たのだ!色々世話になったから例の汁粉を土産として持って来たのだが爺が歳のせいか遅いのだ!だが・・・汁粉よりそれが美味そうだ」


 「叔父上・・・この度はーー」


 「おう!奇妙も居たのか!そういえば暁に世話になっていると兄者が言っておったが誠だったのだな!たくさん食べさせてもらえよ?はよう元服してお前も空を見てみろ!空を飛べば我らが如何に小さいかが分かるぞ!ははは!」


 「さきさん?挨拶を。信治様?側室のさきさんです」


 「朽木元綱が妹、さきと申します。お初にお目にーー」


 「あぁ!良い!良い!俺はそんな大した男ではない!暁をよろしくな?」


 「さきさん?信治様はいつもあんな感じだから。信治様の飯も用意してくれる?それと遅れてくる人の分もね」


 「畏まりました」


 なんかプチ宴会になりそうな気はするけどみんなで食べるか!

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