帝と謁見

 京までは正直20分くらいで到着した。まあ近くだしな。比叡山は綺麗な山火事になっていた。どういう訳かあれだけ燃えていた炎は既に鎮火しかけてはいたが。


 「本当に空は良いのう。移動がこれ程楽になるとは。いやそれにしてもこの、こうちゃなる物は美味い」


 「香りのある茶みたいな物です。職業と言っていいかは分かりませんが、宗教上で食せるか分からないですしなんなら私からお渡しするのは失礼かもしれませんがよければこれを」


 「なんですかな?」


 「ちょっとした南蛮菓子のクッキーという物です」


 「南蛮菓子とな?ではこれをわが兄上に渡せば良いのだな?」


 「えぇ。織田様と昨夜お話したと思いますので私からは以上になります」


 「うむ。確と承った」


 そのまま俺は操縦し、本当に将軍が居る、二条御所という場所の上空に来た。地上ではかなりの人だかりができている。なんなら古臭い甲冑を着た人達がこちらに向かってなんか言ってるような気もする。


 「織田様これを」


 「うむ。聞け!この空を飛ぶのは織田家所有のツェッペリンなる物ぞ!帝の弟君の覚恕様も居られる!下に降りる故に道を開けい!」


 短く力強く有無を問わさない口上だな。信長さんらしいな。





 「しょ、しょ、将軍!!一大事にございます!!」


 「なんじゃ!騒々しい!して、外の音はなんぞ?御供衆の訓練の音か?」


 「お、お、織田家の空飛ぶ鉄が現れました!」


 「は?」


 



 「ふん。壮観じゃな。将軍の兵共が慌てふためいておる!覚恕様どうぞお先に」


 「うむ。大橋殿?神のみぞ許される空の行脚・・・まあ短時間ではあったが感謝致す。そして比叡山の事・・・延暦寺の事、誠に申し訳ない」


 「いえ。私は大丈夫です」


 「覚恕様?手前は将軍が座す所に居ります。くれぐれも帝によろしくお願いします」


 それから続々とエレベーターで降りる。最後に俺も降りてインベントリーにツェッペリンを収納する。


 「き、消えたぞ!?」


 「ど、どこに行った!?」


 まあ驚くよな。俺ですらびっくりだからな。あの我が儘将軍はなんて言うかだな。ってかそろそろ歴史の事象的に織田家と正式に対立する頃じゃないかな?難癖付けられても俺には論破王の竹中半兵衛さんが居るから問題ないな。


 「ほほほほ!!!我こそは空を支配する織田家の忠実なる家臣 竹中半兵衛重治ぞ!!ほほほほほ!!」


 佐助病が移ったように思うが大丈夫か!?あんな人を親友とは言いたくないぞ!?


 「の、信長!!!な、なんたる事をしているのだ!!!」


 「元気そうですなによりですな?少しばかり場所が欲しかった故に庭を借りましたぞ?暫し場所を貸していただきたい。おい!皆の者上がれ!」


 「な、何を勝手に!!?おい!貴様等!ここがどこか分かっておるのか!?」

 

 将軍義昭がピーピー喚いているが信長さんは気にせずに上がる。


 「大橋!小雪!構わん!上がれ!他の者はそこで待っていろ!あぁ〜。崩して構わん!座っていろ!」


 「との事だから望月さん?楽にしててかまわないから!何かあれば言うから!」


 「御意」


 将軍の兵の人達が恨めしそうに見ているが正直黒夜叉隊の方がカッコよくて強そうに見える。


 「信長!!何をしているのか分かっているのか!?」


 「そんな叫ばなくても聞こえております。ここに来た事はさっき言ったでしょう?それとも比叡山の事ですか?」


 「そ、そうじゃ!比叡山は何人たりとも手が出せぬーー」


 「ワシは出しましたが?守護不入を盾にし、仏の教えを謳いながらその教えと反対の事をする坊主共を処断したまで」


 「な、なんじゃと!?おぉ〜・・・畏れ多い・・・」


 「「「「「将軍ッッ!!!!」」」」」


 「将軍は知っておいでですか?腐った物をそのままにしておけば他も腐ってしまうことを。坂本の町で女や子供を攫い、布施の強要、食べ物の強奪。そんな事をする者を放っておけば腐るのは必定」


 「だがそれを織田家がするとは・・・本来ならば麿を通してーー」


 「我らの行動が筒抜けであった!!それはどこからか調べれば分かるが将軍はお望みかッ!?」


 「・・・・・・・」


 まあ信長さんも確信があるのだろう。確かに朝倉達と将軍は繋がりがあるからな。けど表向きはまだ協力関係なんだな。


 「信長!!!お前という奴はッッ!!!」


 「チッ。ただの官位が高い御供衆如きに呼び捨てにされる覚えはないがな?まあ兎に角、この事は織田家に一任してもらう。全ての坊主を処断するわけではない。十分な詮議を重ねておる。それに中立を保った聖衆来迎寺に関しては手を出しておらぬ。ワシは理解ある者だからな」


 「ワシは許さぬ!今に見ておれ!!」


 「ふん。お好きなようにすれば良い」


 その後は暫く無言の状態が続き俺と小雪も一言も喋らず待っていたら如何にもって感じの人が来た。


 「織田様居られますか!?」


 「ワシだ」


 「天朝様がお呼びです。お召しや作法は不要との事でございますれば・・・どうぞ御輿にお乗りください」


 「いや自分の足で向かう。それはワシ一人でか?」


 「いや、天朝様が言われておるのは織田様と左衛門尉様との事です」


 え!?小雪かよ!?俺じゃないのか!?チッ。さすがに自意識過剰だったか!?まあ良いか。佐助なら帝の前でも大物言いそうだが小雪なら大丈夫だろう。


 「ほう?分かった。大橋!お前は待機しておれ!小雪!行くぞ!」


 「はい。暁様?行って参ります」


 「うん。まあ粗相のないように。二条様に土産も渡せよ?」


 「ぐぬぬぬぬ。武家の頭の麿を差し置いて帝と謁見だと!?舐め腐りおって!!!」


 「えっと・・・将軍様?あまり偉そうに言うつもりはありまーー」


 「誰が直答を許した!貴様は誰が喋っていいと言った!?」


 こいつは誰だよ!?将軍の腰巾着か!?喋る事すら許しがいるのかよ?腹が立つな。しかも義昭も俺は眼中になしか。見向きもしないな。


 「ふははは!将軍は貴様如き目にも入らぬようだ!で・・・いつまでこの神聖な将軍の座す場所に居るのだ?即刻立ち去れッッ!!!!」


 腹は立つがいつか絶対にこいつを土下座させてやる!この屈辱忘れんぞ!


 俺は無言で二条御所から出て、黒夜叉隊と京の道を歩いた。


 「サイテー!!なに!?あの将軍は!?大殿のおかげで京に返り咲いたのにその態度はよくないと思う!」


 「そうよ!そうよ!暁様!?ここは我らが二条御所を落としてみましょうか!?」


 「いや、すずちゃんも風華ちゃんも落ち着いて!腹は立つけどそれはまたの機会で!今、織田様と小雪が帝と謁見してるはずだからどうなるかはその後!」


 「では私が京の町娘に扮して二条御所に押し入り撹乱致しましょうか?二条御所に詰める男達ならすぐに垂らし込めるでしょう。さっきの待機中も私達の尻ばかり見られていました」


 俺が出した服はthe忍者!って感じの服だからか体のラインが見える服だけどそんなにお尻を見たり・・・いや確かに言われて見れば・・・・有りだな。


 「暁様・・・・?」


 「あっ、いやごめん!確かに色っぽいなと思ってしまった。ごめんごめん!特に千代女さんとかかなり似合ってるな?と思ってしまった」


 「え!?似合ってる・・・・暁様は私が1番と!?」


 「え?あ、うん。千代女さんが俺はいいかな?」


 「ははは!千代女!良かったな!暁様?我が娘ながら少々婚期は遅れましたがまだ子が為せる体でございますれば。さき様、小雪様とお休みの時にでも相手してくだされば・・・側室でかまいません故」


 は!?なんでそうなってんの!?純粋に良いなと思っただけで飛躍しなくていいから!それに普段クールの巫女の訓練でポーカーフェイスの千代女さんまでその気の顔になるなよ!?なんで無言なんだよ!?


 「よろしくお願い申し上げます」


 「え!?いや、その・・・つもりじゃなく・・・」


 「え!?ははは!暁様ったら・・・やはり冗談でしたね?私なんかより素敵な奥方様が2人も居るし、こんな肉付きの良い浅黒い女なんか・・」


 いやむしろ健康的で好きだが!?抱いてと言われれば土下座レベルだが!?


 「あっ!泣ーかしたー!泣ーかしたー!小雪様にー言ってやろー!!」


 その歌はなんだよ!?この時代から子供時代に言うような語源があったのか!?


 「すずちゃん!タイム!タイム!これはそんなつもりじゃないのだ!」


 「暁様?この件は小雪様が戻られればじっくりと」


 いや望月さんもこえーよ!?家臣の顔から父親の顔になってるじゃん!?

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