わざとに穴を作った東の道

 宇佐山城に戻った俺達はひとまず城に入る事にした。治療していた人達は堀さんに任せ俺は佐助に状況を聞く。


 「覚恕さんはどうした?」


 「はい。宇佐山の兵に渡し奥の間に案内されているかと」


 「分かった。それで浅井、朝倉の兵が見当たらないけどどこに行ったと思う?」


 「どうせ東の道から抜けたと思う。我は六角は信用ならぬと最初から思っています!」


 「私もこの件に関しては六角が逃がしたとしか思えません。鳥型カメラにて追跡しましょうか?」


 「いやいい。別に然程脅威でもないし、多分だけど信長さんもわざと六角を配置したのだと思う。忠誠心を測るのもあるし会った事はないけど浅井は義理ではあるけど弟だし、妹の市の事もあるだろう?少し甘くなってるのじゃないかな?分からないけど」


 「まあ確かに今更何もできやしないでしょう。一つ疑問は本願寺ですね。挙兵したはいいが何もしないとは不自然・・・」


 「まあそう言ってもあそこも僧兵だろ?大した事ないだろう」


 まずはツェッペリンをインベントリーに戻し俺は城に入る。まだ主要な人は戦闘中とあり城の中は閑散としている。それでも、城代の各務さん筆頭に士気は凄く高い。


 そして奥の間にて信長さんと覚恕さんの会談が始まる。俺は今回は呼ばれなかったため、黒夜叉隊の皆と話をしている。


 「で、ですね!?暁様が駆けて行かれた後、佐助は小雪様に思いっきりビンタされてたのですよ!」


 「おい!すず!それは秘密と言ったじゃないか!我が左手の一撃を喰らいたいのか!?」


 「へぇ〜?佐助は私にそんな事言うんだ?彩葉に言おうっかなぁ〜?」


 「あっ、ちょっ!それはダメだ!待て!」


 「ふっ。佐助?随分と仲良くなってるじゃないか?すずちゃん?佐助はこう見えて正義感がある奴だからこれからも仲良くしてやってくれ!な?小雪?」


 「(クスッ)そうそう。佐助は臭い言葉を言う男だし本能に忠実だけどやる時はやる男だから皆を守ってくれるわよ?」


 「ちょ!暁様までそれはなしですよ!?」


 「「「ははは!」」」


 随分と皆と仲良くなったもんだよ。アンドロイドだと思ってたが皆感情があり仲間と思い俺は小雪とこんな仲だし、ゲームでは戦闘狂の佐助が人間の高校生くらいの女の子達とパーティーを組み任務をこなしてくれている。


 今のこの感じ嫌いじゃないな。最初は千代女さんから命を狙われたのだったよな?懐かしく感じる。


 「なにかまた表情が優しくなりましたね?」


 「うん?そうか?いや最初千代女さんから命狙われたのに今は仲間だもんなと思ってね?」


 「暁様!?その節はすいません!恥ずかしい過去です!」


 「千代女さんもそんな表情になるんだ?基本的に無表情だから心配してたよ?」


 「いやあれは巫女の訓練で・・・・」


 「そういえば武田の秋山はどうなってるんだろう?」


 「さあどうでしょう?あれだけ私が脅しをかけたからすぐには動けないのじゃないでしょうか?」


 秋山の事を話出した時に六角さんの配下の人が慌てて城に入って来た。俺はたまたま城横の広場で黒夜叉隊の人達と居たからすぐに分かったが腕から血が出ている。


 「その方は山岡だったか?どうしたのだ!?」


 「も、申し訳ございません!東の北近江に続く道・・・突破されてしまいました・・・」


 「は!?なんだと!?して貴様はノコノコ帰ってきたのか!?」


 まあそうだろうな。兵もそんなに渡してなかったみたいだしわざと東のあの道だけ穴があるような布陣だったしな。


 「申し訳ございません。どうか殿だけは・・・殿は未だ奮戦しておられます!ですが叡山に逃げ込んだ浅井、朝倉の兵が多く・・・こちらは寡兵にて・・・」


 「もう良い!その方も東道に戻れ!お館様には伝えておく!チッ!使えぬ六角兵めが!」


 あの城門兵の人の言い方はないのじゃないかな?さすがに可哀想だ。


 「小雪?治療してあげて」


 「お!?我らはまた出陣で!?」


 「いや黒川さんは戦い足りないのかな?」


 「はい!!!!!!武功が些か足りないかと」


 いやいや足りなくないわけないから!十分だから!


 「えぇ〜!?なら選抜組にはすずも行きたいです!」


 「おい!すず!卑怯だ!暁様!?私も選抜組に!必ずや名のある浅井か朝倉の将の首を持ってきますよ!で、抹茶キャラメルフラペチーノが飲みたいです!」


 いや俺の隊はどんだけだよ!?バトルジャンキーの集まりか!?


 「多分だけど六角さんのところはわざとだと思う。織田様に俺にすら分からない考えがあるのだと思う。それとフラペチーノは岐阜に帰れば渡してあげるから我慢して?」


 「やったぁ♪約束ですよ!!?」


 「おい!?風華も卑怯だ!暁様!某はハチミツ漬けサツマイモが食べたいです!」


 「分かった!分かった!皆好きな物渡してあげるから帰ってから言ってくれ!」


 「「「オォォォォーーーーー!!!」」」


 いや戦の始まりみたいな掛け声だな!?



 「其方は・・・・」


 「大橋兵部少輔暁様が妻。私は大橋左衛門尉小雪よ。今からあなたの傷を治すわ。見せてくださる?」


 「いやそんな畏れ多い。このような擦り傷紐で縛っておけばすぐに治る!」


 「・・・う〜ん。刃渡り30センチ前後の槍により10センチ程刺され、捻らた傷ね?皮膚が抉れてるわよ?かなり痛いでしょう?少し染みるわよ?暁様?アカチンを使ってもよろしいですか?」


 「うん。早く治してあげて?」


 「あっ、大橋殿!?そのような・・・クッ・・・奥方殿!?ワシにそのような治療は・・グハッ!!くぅぅぅぅ〜!!!」


 「つべこべ言わない!暁様が良いって言ったから良いの!はい!治療は終わり!大橋家に伝わる秘伝の薬、アカチンを塗ってあげたから直に治るわよ?さて・・・何があったか聞かせてくださる?」


 この山岡景隆って人は六角義賢さんに古くから仕える人で今回、東の道の封鎖を信長さんに言われた時並々ならぬ決意を以って任務にあたっていたそうな。


 それと振り分けられた兵が40名足らずと明らかに兵が少ないと分かってはいたが六角家の織田への忠誠を測られている事も承知の上で了承した任務だから誰1人通さまいと六角自身もかなり意気込んでいたそうだ。


 だが俺達が任務を開始し始めた時、浅井、朝倉の兵が一挙に六角が守る、北近江に続く道へと傾れ込んだそうだ。


 六角さんは得意の足止め作戦、落とし穴や天然の盾なんかを作り道を封鎖していたらしいが元支配下に居た浅井の挑発に乗ってしまい突破されたと。


 「士気は明らかにこちらが高かったのです!ですがさすがに兵が少なく・・・・いやこんな事言ってる暇はないのです!早く戻らねば・・・」


 「佐助?行ってあげて。すずちゃん?風華ちゃんも行ってあげて!佐助は六角さんの怪我がアカチンで治るレベルならアカチンを使って、無理そうなら例のスプレーを」


 「御意。おい!山岡とやら!我を案内致せ!」


 「あっ、わざわざ浅井、朝倉を追わなくていいから!」


 さすがに俺は疲れたからまだ動き足りなさそうな3人を見送った。信長さんは会談中だからすぐには来ないだろう。


 「小雪?なんでわざとに兵を少なくしたと思う?」


 「この叡山の始末・・・覚恕様を通して帝に言い、全ての元凶を浅井、朝倉のせいにして浅井、朝倉の討伐の勅命を得るためにと思います」


 うん。俺もそう考えていたがこれ以外あり得ないだろう。


 「俺もそう思う。まあ、あわよくば本願寺も解体まではいかなくとも縮小できれば織田家からすれば御の字だろうな。まあ本人から聞こう。正直信長さんは六角さんが死のうが生きていようが関係ないようにも思うけど」


 うん?待てよ?六角を許した・・・敵だった者も許し、織田の将として使う・・・そして帝の弟をも助ける・・・勅命にて討伐・・・畿内は織田が制したものではないのかな?このまま織田家に従う家も出てくるのじゃないか!?

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