比叡山焼き討ち完

 「大橋様?申し訳ない。抵抗するもんだから仕方なく・・・」


 「モゴモゴモゴモゴ」


 「まあ自業自得だな。散々好き放題してきたんだろう?顎が砕け喋れまい?織田様に突き出してやろう。おい!お前達!この慈海と後1人逃げ出そうとした女が居ただろう?どこに居る?」


 「え!?そ、そ、そんな人は居ませんでした!!!」


 「ほう?オレが何も見えてないと嘘を言うか?」


 「すいません!!すぐに連れて来ます!!」


 別にこいつの嫁を助ける義理はないけどあのまま放置すれば死ぬだろうな。


 「つ、連れてきました!」


 「ほら?居るじゃないか。で?なんでこの女の人も口が砕けてんの?」


 「そ、それは・・・慈海上人のように抵抗され・・・」


 バタバタバタバタ


 喋りたくても痛くて喋れないし悔しいのか?


 「チッ。学僧?この女の人も治してあげて」


 「は、はい!」


 "暁君?30人くらいの人がこちらに向かって来ているよ?"


 "30人か・・・コナユキ?頼めるか?"


 "いいけど多分味方だと思うよ?"


 味方・・・・佐助は帰らなかったのか!?あれ程大丈夫って言ったのに。


 「ほう?ここに逃げておったのか。大橋!大丈夫か?」


 「え!?織田様!?何故にここに!?ここは危のうございます!早くツェッペリンにーー」


 「ふん。このような僧兵如きに遅れを取るワシではないぞ!!」


 「おう!暁!やってんな!!みんなを殺すとか言って結構な人を治療してるじゃないか!?」


 「信治様まで・・・」


 「暁様!!大丈夫ですか!?!?」


 「小雪・・・・」


 「もう終いじゃぁ〜!!!!!!」


 「逃げろ!!散り散りになって叡山を降りるのじゃ!!」


 「チッ。世話の焼ける糞坊主共めがッ!!おい!堀!犬!1人残らず引っ捕えよ!」


 「「はっ!!」」


 俺のためにと言えば自意識過剰かもしれないがまさか信長さん本人が駆け付けてくれるとは思わず少し嬉しかった。


 「戦車なる物を出しておらぬとはまだ余裕があったみたいじゃな?少し早かったか?」


 「いえいえ、助かりました!どうしても許せない人が居まして・・・・」


 「ほう?どいつじゃ?」


 「はっ。この顎が砕けた者です。それとそこの2人の僧・・・素堂と明慶という奴です」


 「拙僧は素堂と申します」


 「手前は明慶と申します」


 「なんじゃ?」


 「この度は自分達の手で始末はしましたが香澄上人と慈海上人に逆らえず民達に無法を冒してしまい自分を情けなく。つきましては自分の責務は仏の道に倣いーー」


 「えっと、織田様?仏の道にとか言ってますが私に命乞いをする折にこのような賄賂を送ってきましたよ」


 「「お、大橋殿!?」」


 「ふむ。ふむ。金塊か。何故このような場に金塊なんかがあるのだ?答えてみよ」


 ここからこちらが詰める番だ。何をしようが許さないからな。いや待てよ?どうせこのまま燃やしてしまえばみんなから強要して奪った金も燃えてしまうからな。回収して坂本の町の復興に使うか?


 俺は小雪に小声で話す。


 「小雪?ここには金とか銭がかなり蓄えられてるよね?」


 「・・・・・・・」


 「小雪!?聞いてる!?」


 「キスしてくれないと許しません!また勝手に抜け駆けしてどれ程心配したか・・・」


 「それはごめん!けど今はそれどころではーー」


 「キス・・・してください!」


 俺は少し離れた所に行き思いっきりキスをした。こんな姿見せればなんて言われるか・・・


 「え!?暁様!?なんでこんな時に!?」


 「だぁぁぁぁぁ〜!!!なんで千代女さんが居るの!?今のは見てない!見てない!!!」


 「はい!暁様!許します!夜は寝させませんよ!!それで貯め込んでいる物ですよね!?確かに至る所に貯め込んでいるかと思います!あっ、千代女嬢?今のは内緒よ?分かるわね?」


 「は、はい!」


 威圧を込めた問いかけかよ!?


 スパコンッ!


 「小雪!味方に威圧は使うなと言っただろ!千代女さんに謝れ!」


 「千代女嬢?ごめんなさい?」


 「え?あ、別に・・・こちらこそすいません」


 それから俺は冷や汗ダラダラの2人を尻目に信長さんを呼び、先程の事を言った。


 「確かにその銭や金までも殺すのは惜しいな。しかもそれを坂本の町の復興に使うとはこれではどちらが仏に仕える者か分からぬな。良きに計らえ。貴様に乗っかかってやろう」


 そこから悪徳商人みたいな問答が始まる。


 「素堂!明慶!お前達2人は僧侶の中で位はどのくらいだ!?」


 「はっ。法眼を司る坊官にございます」


 聞いてみたもののあまり分からなかった。


 「まあ分かった。で、俺に渡された金塊だが今しがた織田様に見せてしまったわけだ。なら織田様にも渡さないといけないよな?分かるな?」

 

 「そ、それは・・・」


 「す、すぐにお待ち致します!」


 「ふん。馬鹿共めが。そもそもそんなに蓄えておるのか?質素倹約ではないのか?チッ。煙が回ってきたか。堀!犬!逃げ出した奴は・・・」


 信長さんはそこで手を首に置き斬る動作をした。


 そこからは阿鼻叫喚だった。何人かは捕まえれなかった人も居ただろうがこの囲いから逃げれないだろう。六角の所が唯一の穴だろうけど。


 「おた、お助けを・・・」


 「許さないな。お前も弱い人間から吸い尽くしてきたんだろ?」


 グサッ


 「キャァーーーッ!!!」


 「喚くな!女!お前のその服は延暦寺に関わりある者として不釣り合いだ!そもそもなんでそのような服が持てるのだ?」


 「こ、こ、これは坂本の町の民の人達が道慶上人の妻に!といただいた物でして・・・・」


 「まあ嘘だな?じゃあな?」


 「おい!犬!その女は連れて行け!さっき保護した者達に聞けば分かるであろう?嘘を吐いておれば磔に致せ!」


 「御意」


 一応、ここに居る人達は忠実に任務をしてくれているんだな。ってか火の勢いが早いな。急がないと・・・。


 「お待たせ致しました!お持ちしました!」


 持って来たのは瓶に入った銭や金、銀なんかもあった。


 「もう良い。煙たくて敵わん!降りるぞ!おい!そこの2人!それを持って付いて参れ!まさかワシに献上する金、銀、銭がそれだけとは言わまい?」


 「こ、こ、これだけしか私達は持っていなく・・・」


 「私達は・・・か?なら他の生臭坊主も貯め込んでいるって事だな?まあ良い。燃えた後でも探せば見つかるであろうよ」


 いや本当に全部没収するつもりか?俺が提案した事だけどやると言えば本当にやる人なんだな。


 そこから俺たちは前田利家さんの案内の元、叡山を降りた。そして俺たちが通った後の唯一の道にも火が点けられ道が完璧に閉ざされた。


 俺はコナユキに乗ってるから問題ないが信長さんが徒歩というのはいけないと思いどうしようかと思っているとツェッペリンが現れる。


 「暁様!!大殿様!大丈夫ですか!?」


 拡声器から叫ばれる佐助の声だ。そのまま坂本の町上空からエレベーターが降ろされ乗り込む事となる。ちなみにだが慈海とその嫁は引き摺って連れて来ている。せめてもの情けでツェッペリンの中で顎だけは治してやろうかとも思っている。


 「こ、これがあの空を飛んでいた・・・・」


 「おい!素堂!お前の感想なんか聞きたくない!お前達はここまでだ!」


 「え!?それはどういうーー」


 ズシャッ ズシャッ


 俺が言い切る前に小雪が2人の首を落とした。


 「この2人は映像に映っていましたよね?何故生かされてるのか分からず我慢しておりましたが用済みなので始末しました」


 「お、おう。小雪すまない。ありがとう」


 そう言い、30人程の俺達はツェッペリンに乗り宇佐山に戻った。

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