比叡山焼き討ち3

 比叡山中腹にある日吉大社。この世界に来る前の日吉大社には行った事はないが確かこの世界に来る前の方は秀吉さんが再建したやつだったとかそんなだったような記憶がある。


 道中に結構な系列してる寺らしき社や本殿的なのはあったが人が居る気配がない・・・・むしろ手入れすらされていない感じすらする。


 通説で焼き討ちで皆殺しにしたとか言われてると思うけどやはり普段は生活に不便な叡山ではなく坂本の町で暮らしてたのか?


 コナユキと駆け、社の前に到着するとそこそこの僧兵と女子供が身を寄せ合っていた。まだ燃やしている事に気付いてないのか?


 「き、き、貴様は何者だ!?まさか織田の者とはーー」


 「織田家 家臣 大橋兵部少輔暁。この作戦を提案した人物だ」


 「このような事をして貴様は必ず地獄に落ちるぞ!」


 「地獄?結構。俺が地獄行きならお前達も間違いなく地獄行きだろうな。まず一つ言える事はお前は10秒後に死ぬ」


 「おい!学僧!児童僧!前に出ろ!あいつをここへ入らせるな!」


 おいおい・・・丁稚みたいな子供を盾にするってどんだけ腐り切ってるんだよ!?さすがにこの子達は助けてあげたいけど・・・。


 「一応聞くけど君達はさっき偉そうにしている糞坊主が何してるか知ってるわけ?」


 「香澄師は仏の道を照らしてくださるお方だ!お前の方こそ何をしてるか分かっているのか!?」


 「一人の師に盲目するのはよくないな。離れているから見にくいとは思うけどこれを見ろ!騒ぐのはなしだ!これを見てすぐに決めろ!これを見てもその香澄とかいう糞坊主に従うのであれば迷わずに俺はお前達を・・・・殺すぞ」


 どうせ作り物だ!とか言うだろうし遠目だからあまり見えないとは思うがタブレットで例の映像を見せる。



 『年増だが抱けぬ事はない!』


 「まさか!?これは慈海上人ですか!?」


 「おい!それはなんだ!?その中に見えるは人か!?」


 ヒューーン 


 「香澄ッッ!お前は動くな!!次に動けば斬るぞ!」


 俺は飛ぶ斬撃にて牽制し、続きを見せる。


 『どの家も布施と言うても最早一文たりとも残っておらん!だから女を貰ってきた!ほれ!例の場所に銭は隠しておけ!もし織田が攻めてきても熱(ほとぼり)冷めればその銭で再興だ!』


 「他にも色々あるが今はこれだけ。学僧と言ったよな?どちらが悪事を働いているか分かるだろう。すぐに返答しろ!織田に降るならばお前達は助けてやる!むしろ本当の仏の道に進めば良い!これから灰塵に帰す本殿や社は俺が再建してやる!」


 俺にさすがにそこまでの権限はないが子供はさすがに殺したくないため大ホラを吹いてしまう。


 カラン カラン ドンッ バタン


 「時折上人達が坂本に降り、酒を飲んでいるのは知っておりました。ですがそれも修行の一つと言われ・・・。女人禁制の比叡山に女が居る事も黙れと言われ・・・最早迷いません!」


 洗脳されてなくて良かったよ。これで俺に敵意があるなら本当に殺さないといけなかったからな。


 「クッ・・・もう良い!おい!武僧共!あいつを殺せ!」


 「学僧達!屈め!!!」


 パンッ パンッ パンッ パンッ パンッ


 「「「「キャァ〜ッ!!!!」」」」


 社の方から女子供の悲鳴が聞こえるが全員ではないとは思うがあいつらも同類だ。


 パンッ


 「グフッ・・・・」


 「わざとお前は動けないように足を撃った。慈海とかいう阿呆はどこに居る?」


 「こんな事してただで済むとはーー」


 パンッ


 「後、3回だな。右足、左足、右手、左手、最後は心の臓だ。言え!どこに居る?」


 「そこに座すは織田様の将ですか!?助かりました!!実はこの香澄上人に虐げられ命令されどうしよもなく・・・この坂本の町の女を治療しておりました!!!お助けください!」


 「せ、拙僧も香澄上人に逆らえず・・・今ここに信長様は見えぬ模様・・・どうかこれをお役立ていただきますれば、どうかお助けを・・・」


 「お、お前達も喜んでーー」


 「香澄!お前は偽物だ!我らを使い好き勝手した罰だ!」


 グサッ


 チッ。マジで腐ってる・・・こいつら映像で出てた奴じゃないか!しかも連れて来た女も攫って来た人達じゃないか!口封じに先に殺したか・・・けどこいつらも証拠はある。許さんぞ!


 俺の血管がブチ切れそうな時、裏の方から脱出する一向を見逃さない。


 ヒューーン バシュッ


 「ウギャァー!」


 「俺が一人だと侮るな!ここから逃げ通せると思ってか!?おい!学僧達!この人達にこの赤色の薬を塗ってあげてくれ!」


 本当は完全回復スプレーを使ってもよかったが見た感じ打撲跡や内出血してる箇所はあるがアカチンで治るように思うから数に限りがある完全回復スプレーは温存する事にした。病気は治らないが傷はやはりアカチン最強だ。


 しかしさすがに一人では心許ない。この二人は信長さんの前に連れて行こう。それまで許したふりをしてやろう。


 「さすがこの延暦寺僧兵の中にもまともな人が居ましたか・・・実は後続が遅れ手が足りません!手伝って貰えると助かります。信長様にあなた達の事を言いましょう!」


 「クフフ・・・いやこれは失礼。どうかこれは我らからのお気持ちです。お互いのためにもお納めください」


 渡された物は想像通り金塊だった。いったいどこでこんな物仕入れたのか・・・あるまじき行為だな。後で地獄を見せてやる。


 「き、傷が治ってきている!?これは何の薬ですか!?」


 「それは特別な調合をしている薬。万病に効く薬だ。えっとあなた達二人は・・・」


 「拙僧は素堂です」


 「拙僧は明慶と申します」


 「では素堂さんと明慶さんは色欲坊主の慰み者になっている女性や子供をここに。折檻され怪我などしてる方は治します」


 「うむ。連れて来ましょう」


 「それと慈海という人はどこに?」


 「え?それはさっきあなた様が鉄砲?で撃ちました方です」


 え!?さっきのが慈海だと!?尋問しないといけないのに俺は何をやっているんだ!?クソッ!カッコつけて1人でここに来たのに本当に手が足りないじゃないか!!!


 「拙僧が連れて来ましょう。慈海は上人の身分なのに里に降りては民達から布施の強要や女を貪りつくし、それだけでは飽き足らず顔が良い男の子をも手を出す色欲お化けでして・・・」


 「もう良い」


 「え?」


 「もう言わなくて良い。連れて来てくれ」




 「なっ!?言った通りだろう?やはり武家は銭や金に欲深いのだ!」


 「だが素堂?あの大橋だったか?彼奴に許された感じがしないのだが・・・それに慈海上人も鉄砲一発で死にはしないだろう?何かバラされると・・・」


 「明慶?少しは考えろ!喋る口がなければバラされまい?」


 「す、素堂と明慶か!?た、助けてくれ!肩を撃たれただけじゃ!早くワシを運んでくれ!逃げるぞ!」


 「あんたはやりすぎだ。俺はあんたのようにはならない」


 ドフッ 


 「おい?素堂?いくらなんでもやりすぎでは?」


 「顎を砕いただけじゃ。それにどうせ慈海上人は斬首されるであろう?」


 「ヒッ、ヒィ〜」


 「チッ。上人の嫁か。この女も不運な女よな。上人の事をずっと支えてきたというのにそこらへんの女を抱き、男児を抱き、よく我慢できるわな。おい!この事は黙っておけよ?せめてもの誼だ。一段落すれば平民として余生を過ごさせてやる!」


 「意外にも優しい一面もあるのだな?」


 「当たり前よ・・・いや待てよ・・・念には念をな?許せ」


 ドフッ


 「キッヒィヤァ〜!!」


 「チッ。静かにしろ!」


 ドゴンッ


 「明慶!?バレたか!?」


 「いや大丈夫だ!あの男はなんなのだ?抜けているのか鋭いのか分からん!」


 「ふん。金を受け取るくらいだ!ウスノロのバカであろう?それにしても朝倉も浅井もどこかに隠れて何をしておるのか。まさか逃げたわけはあるまいな!?」


 "暁君?あの2人の人間は他の人間に何かしてるよ?"


 "あぁ。見えないが分かっている。あいつらは俺の殿様に突き出す予定だ。それにあれは慈海って奴だろう?自業自得だ"


 "なんか暁君の事バカにしたような事も言ってるよ?わっちが懲らしめてあげようか?"


 "ふん。別にいいさ。後でどれだけ命乞いしても許さないから"


 "了解"




 「大殿様、覚恕様をお連れ致しました」


 「うむ。私は尾張 織田信長。あなた様が後奈良天皇 皇子 覚恕様ですか」


 「如何にも。大永5年延暦寺の子院曼殊院門跡慈運を師として得度し、天文6年に慈運師の死に伴い門跡と北野天満宮別当を相続し少し前よりここ延暦寺の天台座主として御飾りとされておる」


 「ははは。ご謙遜を。事ここに至りまして延暦寺の僧兵には目を瞑る事ができませんで。人攫い、布施の強要、中立の立場を取らないなどあまりに酷い。あなた様はその件に関係ないと思いますが?」


 「直接的には関係ない。むしろ悲観している。だが力もなにもない、あるのは血筋のみ。だがここは比叡山延暦寺。何人(なんぴと)たりとも手も足も出せぬ神聖な場所。拙僧は見ている事しかできず他の者と同類です」


 「それは帝の判断となりましょう。どうか渡りを付けていただいても?・・・少しお待ちを。おい!大橋はどうした?どこに居る?」


 「大殿様!暁様はやり残した事があると1人で日吉大社の方へ向かわれました!必ずこのツェッペリンは宇佐山に戻れと言われまして我は暁様の命令には逆らえなくーー」


 パチンッ!!


 「佐助!あんた何言ったか分かってるの!?何かあるとどうするのよ!?織田様!お許しください!私がすぐに呼び寄せてーー」


 「世話の焼ける兵部少輔だな。全軍に告ぐ!各自火の手に負けず日吉大社に居る大橋暁を救え!彼奴は1人延暦寺僧兵の悪事を許せぬと突っ走っておる!ここには正親町天皇・・・帝の弟、覚恕様も居られる!全軍奮戦せよ!」


 「大殿様・・・・」


 「佐助も大橋の家臣よのう。主君の命令は絶対とは一端の将だ。小雪?お主はこれを操縦して宇佐山に覚恕様をお届けせよ。お前の旦那はワシが責任を持って連れて帰る!」


 「え!?それはいくらなんでもーー」


 「大橋は今や織田家に必要な奴ぞ!彼奴をもし失えば足軽10000失うのと同じじゃ!犬!ワシの刀を持て!」


 「小雪すまん・・・・」


 「命令なら仕方ないけど今後は気をつけるのよ?今度同じ事すれば破壊するわよ?」


 「・・・・覚えておく」


 「まあいいわ。あんたが操縦しなさい。私も出るわ」


 「あっ、ちょ!おい!どうすりゃいいんだよ!?」


 「へっへっへっ!佐助は小雪様に怒られてるぅ〜!!」


 「おい!すず!笑い事ではないんだぞ!?暁様にもしものーー」


 「あるわけないでしょ!?あの暁様だよ?むしろこの比叡山が消えてなくなる方こそ心配よ?」


 「いやそうではあるが・・・あんなに小雪が怒るとは思ってなくてな?本当に暁様の妻になったのだなと思ってな?結婚か・・・どんな感じなんだろうな?」


 「ペッ!どうせ佐助は女なら誰でもいいんでしょ!?」


 「いや違う!女とはやはり細腰の女子がーー」


 「えぇ〜と・・・そもそもこれはなんなのかのう?鉄が浮いておるのかのう?」


 「すまん!すまん!これはグラーフツェッペリンと言ってだな?かつてドイツの科学を…………」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る