許さない。比叡山延暦寺
次の日さっそく俺は信長さんに進言した。
「織田様も見れば分かります。あのような奴らが仏を語るとは言語道断。あれこそ根斬りに致しましょう」
「それが延暦寺だ。時の支配者、帝がかつて従わせるため幾度となく戦ったが何度も追い返している。それが武装坊主延暦寺の僧兵だ」
「そんなのおかしいです。俺は許せません。返答も遅い黙殺している。これは焼き打ちに値すると進言致します」
「ほう?大橋が珍しく好戦的な。貴様は叡山焼き打ち・・・神をも恐れぬと申すか?」
「何が神ですか?ならあの女や子供を助けてみせろ!と言いたい!姿形のない偶像を信仰しその神の名を騙り弱者救済を教えとする教義を反故にし、人の人権を奪う者は生きる価値なし」
「・・・・・・皆を集めよ。小雪だけ残れ」
初めて俺だけ退出を促された。小雪に何を言うんだろうか。
「大橋は・・・未来では、あのような女を攫った話などないのか?」
「ありません。少なからず未来の日の本では人身売買は行われてはいないでしょう」
「だからあんなに怒るのか。神なんかはどうだ?」
「信仰している人も居ます。ですがその神を見た者が居るとは聞いた事ありません。死んだ先に天国、地獄があるかは私も分かりませんが少なからず今やるべき事は叡山に捕らわれて男の慰みになっている女、男の子を解放し助けてあげる事と思います」
「小雪も・・・神は恐れぬか?」
「もしこの事で神が現れ私に罰を与えるというのならば私はその神を斬りましょう。あのような狼藉を放置する神なんかが居るならば居ない方が良いです」
「・・・・分かった。ワシよりもお主等二人の方が覚悟を致しておるという事だな」
「この先、各地の諸将は敵味方と確実に別れるでしょう。延暦寺の内情を知らない者は確実に敵となるでしょう。ですが少なからず暁様と配下は常にお側に居ります」
「うむ。相分かった」
数分後、宇佐山城に詰めている主要な人達が集まった。
「延暦寺からの返答はない。通告通り焼き打ちを致す。詳しい事は尾張、岐阜より皆が集まってから申す。気を抜くな!」
それからの動きは早かった。明智光秀、柴田勝家、佐久間信盛と後世に名前が残っている人達が集まって来た。
羽柴さんは横山城に詰めていて、越前に向かう陸路と海路を封鎖しているため来て居ない。本願寺も挙兵はしたが何も音沙汰なく静かだ。
秋が去り本格的な冬に入る12月2日、狭い宇佐山城にたくさんの織田の兵が集結しているのを見てか延暦寺と堅田の坊官達から黄金が入った木箱が届けられた。文と使者も一緒にだ。
「これはなんのつもりだ?」
案内された使者は信長がわざとかどうかは分からないが歴戦の猛者が揃っている部屋に案内させ問答している。もちろん俺も居る。
「返答が遅れて申し訳ありません・・・黄金を贈ります故に・・・攻撃を・・・辞めていただきたく・・・」
「それは先に何回も文に書いてある。浅井、朝倉を追い出せばと。だがお前達は自分達は飽くまで攻められないとふんぞり返っておったがワシの本気度合いを見てこのような事を?」
「い、いえ!決してそのような事ではーー」
「抜かせ!今更止まれぬッッ!仏の教えを破り好き勝手しておる事は周知の事実である!帰って皆に伝えるが良い。浅井も朝倉も全てを灰塵に帰すとな。腐ったものをそのままにすれば全てが腐ってしまう」
「・・・・・・・・そのような事すれば天罰が降るぞ!!」
ここで俺は我慢できなくなり立ち上がってしまう。明智が咎めて来たが信長が明智を手で制す。
「天罰が降る?寝言は寝て言え!さっき織田様も言ったがお前等の狼藉は許せん!お前等こそ天罰が降る方だろうが!確か比叡山の主は正親町天皇の弟だったよな?」
「そ、そうだ!だからそのような事をすれば帝に弓引く行為とーー」
「その弟の覚恕って人だったか?まさか帝の親族が乱暴狼藉をするとは思えん!」
これは事前に小雪と虫型カメラで偵察済みだ。確かに覚恕って人が比叡山の主で名前としてはトップだが延暦寺の山門衆、上人に幽閉とまではいかないが、比叡山奥地の坊舎の端に厳重に警備されているところに居る。
この覚恕と言う人はキッチリ早朝に起き、経を唱え坊舎にて奉公してる丁稚達にも優しくしている人とも調査済みだ。
「当たり前だ!覚恕様は我らに教えをーー」
「だからお前達とは違うと何回も言ってるだろう!もういい!こっちは証拠だってある!この証拠を見せたところでお前達は偽物だとかなんか言って認めないだろう。だが俺はお前達と違う。誠に仏に仕える僧侶まで命は奪わん」
「大橋。落ち着け。もう良い」
気が付けば俺はこの使者に抜刀しかけであった。信長の前であり得ない行為だが許してくれた。
「この大橋暁・・・なかなかに苛烈な性格だが無闇に敵を倒す奴でもない。その此奴がここまで貴様等生臭坊主に怒っている。最早遅い。黄金なんぞ要らん!貴様等は根斬りぞ!」
ヒューン ドンッ
信長がそう言うとヒヒイロカネのセバスチャンが鍛えた刀で俺が以前教えた飛ぶ斬撃を使者の横を掠めるように放った。
「ひっ、ひぃ〜!!」
「ふん。大橋程ではないがワシも胸糞が悪くなってきた。叡山を完全に包囲する。誰一人として逃すな!誠に仏に仕える者となんらかの形で捕らわれている者は助ける!この事で賄賂を受け取り逃がした者が居ると分かれば誰であろうと一族郎党根斬りと心得よ」
「「「「はっ」」」」
長かった宇佐山詰めが終わる・・・。未来でも信長が行った事でも有名な比叡山焼き打ちだ。プロセスは違うだろう。だがこれは絶対に行わないといけない事だ。
ただ一つ・・・覚恕さんって人は助けてあげないともし流れ矢とか焼け死んだりすれば織田は朝敵になってしまうからな。度肝を抜き一目で織田と分かり対象を救出できる物は・・・やはりあれしかないか!?
「小雪?久しぶりにあれを使おうと思う」
「なんですか?」
「ヒンデンブルク級、ドイツの科学の結晶グラーフツェッペリンだ!」
「まさか!?」
このグラーフツェッペリンとは簡単に言えば飛行船だ。戦闘機、はたまた宇宙光線なんかが飛び交うゲームでの戦場ではあまりに遅く、的になるだけの飛行船だ。だがPvPでは暗黙のルールがあった。
それはこの飛行船はゲーム内では救助艇として使うプレイヤーが多くこの飛行船には攻撃をしてはいけないという暗黙のルールだ。
この飛行船は本物は見た事もないし分からないが仕様上本当に救助艇として使えるってのもあるが耐久値だけは高く味方の何かに秀でてる能力を持つNPCを助ける時に使うプレイヤーが多かった。
「あぁ!そのまさかだ!覚恕さんを助けようかと思う。恐らく比叡山焼き打ちは外野から見ればやはり許し難い事だろうけどそれを覚恕さんにどうにかしてもらおう。証拠を見せ、正親町天皇の元へ届けよう」
「(クスッ)まさかリアルでも救助艇として使えるとは思いませんでした!どうせならばこの焼き打ちは他国にも知れ渡るのですから派手にいきませんか?飛行船に織田木瓜紋でも描いて一目で織田と分かるようにはいかがですか?」
「おっ!それはいいな!よし!そうしよう!」
グラーフツェッペリン・・・1937年5月6日にアメリカ合衆国ニュージャージー州マンチェスター・タウンシップにあるレイクハースト海軍飛行場で発生した、ドイツの硬式飛行船・LZ129 ヒンデンブルク号の爆発、炎上事故を起こした機体だ。
ゲーム内の区分としては戦闘機の部類に入るが武装兵器は皆無。
全長235m超超弩級の飛行船だ。『歴史を感じる空浪漫』と題するガチャにて実装。やはりデカさこそパワー。パワーこそ正義と勘違いした俺はこのガチャを回しすぐに当たった機体だ。
そして、すぐに現実という超えられない壁にぶち当たる。
「おい!如月!これなんの兵装もないんだが!?」
「え〜?バグじゃないの?」
「ちょっと待って!説明見てみる!」
・この20世紀の世界を揺るがせた大事故の一つとして知られているヒンデンブルク号爆発事故。その機体をあなたの元に!
《耐久値、全航空機トップ!》
《好きなペイント可!》
《機内に好きな家具を配置可!》
さぁ!この飛行船にて戦国の空を飛ぼう!
※武器兵装装備不可
「はぁ!?これなんも装備できないんだけど!?」
「ぷっ。はい!どんまい!せっかく珍しく早目に当たったのに残念ですね!間違いなく経験値ボックス乙!ってチャットに書かれるよ!」
ゲームではなんのために生まれたか分からない機体だが俺はかなり改造して使っていた。武器兵装がなにもない飛行船だがデカさだけはずば抜けている!ゲームでも戦国の空を飛ぼうと運営が言っていた言葉だが現実の戦国の空で飛ぶ事になるとは・・・。
俺は宇佐山城一階の広場にてツェッペリンをインベントリーからだした。多分ここなら大丈夫なはずだ。
「出でよ!ツェッペリン!!!」
取り出した瞬間その大きさに俺自身圧倒された。取り出した瞬間城の兵や青地さんなんかは目を見開いている。信長さんは『何事か!?』と叫びながら飛び出して来た。
「大橋!!それはなんだッッッ!!!?なんでもっと早くに出さないのだ!!!!」
と嬉々とした声を掛けられた。
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