配下になった六角左京大夫
「「え!?」」
「なんじゃ?死罪でも申しつけられたいのか?存外にワシは寛大だぞ?使える者は使う。ただそれだけの事。じゃが観音寺城は没収致す。良いな?」
「それは構わんが何をしろと?」
「此奴が持っておる兵器を織田では夢幻兵器と言うのじゃが恐ろしく強力な物が多くてな?開けた場所での戦なら使えるが森に篭られれば山火事どころではなくなるのだ」
「そんなの敵ならば関係ないのでは?」
「ふん。敵には火あぶりになろうがどうってことはないが攻めるという事は後にその地を治るという事じゃ。どこでも燃やしてしまえば後が大変じゃ」
そこから信長さんが鉄砲の弱点を言った。俺が出したAKはそれはそれは素晴らしい兵器だが、鉄の盾には弱いとの事。福島城で勝ちはしたが鉄盾に苦労したと。その時役にたったのが手榴弾だ。
「これは焙烙玉。これを矢尻に結び敵に射ると爆散するという寸法だ。それこそ鉄砲の弱点をも克服する兵器ぞ」
いやこの人すげーわ。勝手に手榴弾改造して弓矢爆弾作ってるんだが?
「それをワシが作れと申すのか?」
「クハハハハハ!違うわ!お前がその隊を作るのだ!この畿内はワシが掌握する。じゃがまだワシには敵が多い。お主の働き次第では織田の中であれば六角家を再興しても良い」
なんか六角には甘々な仕置きなんだな。
「いつワシが牙を出すか分からんぞ?」
「ふん。抜かせ!貴様が織田の中で大きくなりワシに牙を向けても些末な事。一瞬にして潰してやろう」
「・・・・分かり申した。近江守護の六角は潰れた。だが家は潰れぬ!織田家で再興致す」
「うむ。ワシが指揮してやってもよいがやりにくいであろう。この大橋の下に付け。最初はたまげるであろう。じゃが古き考えを一新するのも良い事ぞ?左京大夫殿?」
「その言い方はやめろ!分かり申した。粉骨砕身やりましょう」
「うむ。下がれ」
俺も下がるのかと思い退出しようとしたが違うらしい。
「お前も下がってどうするのだ!」
「すいません。それで今後どうしますか?」
「一度様子を見よう」
「織田様はそれだけで良いとお思いですか?」
「うん?小雪は何かあるのか?」
「いえ、織田様の采配に文句は言いません。ですが、せっかく私も暁様が揃っています。先のカメラにて叡山の若い女を見ましたか?あればどこかから無理矢理連れて来られた人だと私は思いますが」
「そうであろう。生臭坊主等が何かの担保に売られた娘子であろうな」
「私はあれは許せません。暁様もそう言っております」
いやいや可哀想だとは思うがそこまで俺は言ってないぞ!?小雪は何か考えがあるのか!?
「ほう?他人に然程目を向けぬ大橋がそのような事を?」
「焼き打ち・・・さっき出てきましたがどれ程考えておりますか?」
「必要であらば実行致すまで。まだ早い」
「いえ、焼き打ちは行うべきと進言致します。これより先ここ畿内は織田様が支配されます。東に西にちょうど良い狼煙だと思いませんか?」
「小雪・・・まさか・・・」
「はい!その時は私と暁様で行います。暁様は現在の叡山を分かっておりません」
「おい小雪?さっき映像で見たから分かってるぞ?」
「いいえ。分かっておりません。後でまた話します。どうか今は・・・」
「ふん。夫婦喧嘩は外でやれ!分かった。その折は、お前達に言おう。叡山を焼き打ちとは前代未聞であろうが歯向かう者は何人(なんぴと)たりとも許さぬ。腐った者は早々と根絶やしにせねば他が腐ってくる。まずは叡山の返答次第よ」
それから更に1週間が過ぎた。比叡山からの返答はなしだ。俺は黒夜叉隊のみんなと寛ぎまではいかないが労いをかけながら過ごしている。
宇佐山城で待ちになって日が経ったある日の夜、いつもなら望月さんや千代女さん、はたまた信治さんが部屋に来て話込んだりと小雪と話す機会がなく、やっとあの日の事を聞く日がやってきた。
「あの前の信長さんに言った事なんだけどどうしてそんなに焼き打ちをさせようと?それに俺が分かっていないとは?」
「そのままの意味です。これを見てください。これはこの1週間私が録画した映像です」
見せられた映像は鳥型カメラか虫型カメラかの録画映像だった。
「ちょうど叡山麓の坂本の町の映像です」
そこに映されていた映像は法衣を来た坊官が家に押し入り芋か干し柿かも分からない少量の食べ物を奪っている姿だった。
「おい!拙僧に文句があるのか!?」
「しかし、それがなくなれば私達は・・・」
「チッ。ならお前の体を貸せ!年増だが抱けぬ事はない!」
「おかあちゃん!!」
「あんた達は下がりなさい!」
「ほう?女のガキが居るのか。貰って行くぞ!拙僧達はお前達をも守ってやってるのだ!見てみろ!目と鼻の先で織田軍は攻めて来ぬではないか!あれは我らに畏怖しておるのだ!何人(なんぴと)たりとも比叡山に攻め込む事はできぬ!」
「はぁ〜!?この糞坊主舐めてんの!?小雪!この糞坊主の顔覚えておいて!絶対に殺す」
「分かりました。次はこちらを」
「あれは空を飛んでいた蜻蛉の神様だ!」
「うむ・・・だが神だろうがなんだろうが我らではなく織田に味方するとは・・・」
「おーい!帰ったぞ!織田は焼き打ちするとは言うておったが何にもしてこぬではないか?やはり口だけではないか?」
「おい!お前はなんでそんな呑気に考えていられる!?もしまたあの空の神が飛んでくればーー」
「ふん。その時はその時まで。だが生きるには銭がかかる。朝晩の説法唱えば構わん!ほら!お前にもこいつをやろう。拙僧が使った古だがまだ使える!出すもん出さぬと良い経を唱えれぬぞ?ははは!おう!お前も帰ったか!」
「どの家も布施と言うても最早一文たりとも残っておらん!だから女を貰ってきた!ほれ!例の場所に銭は隠しておけ!もし織田が攻めてきても熱(ほとぼ)り冷めればその銭で再興だ!」
「マジで腐ってんな。こんな奴らになら俺は躊躇せずに殺してしまいそうだ」
「一概には言えませんが大半の延暦寺の僧はこのような感じです。ただやはり何人か、本物の僧が居る事も事実。だから焼き打ちは私達がと織田様にお願いしたのです」
「間違っても殺さないようにと?」
「はい。その高潔な者達に延暦寺を継いでもらおうと私は考えております」
「分かった。なんか胸糞悪い。俺からも信長さんに行動を早くするように言う。あれは非常に不愉快だ!」
「分かりました。変な物見せてすいません。これが今の現実です。必ず痛い目を見せねばなりません」
「・・・・・・・」
「暁様?」
「すまん。そうだな。必ずな」
俺はさっきの女の子や既に捕らわれている人達を思い出しなんとかしてあげないとと思った。まったくの他人をここまで思うのはこの世界に来て初めてだ。
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