腐ってる比叡山 延暦寺

 この日の昼前に信長さんは到着した。えらくご機嫌だ。


 「大軍と聞いておったがよく守り抜き、且つ敵を追い払った!よくやった!!」


 「はっ。大橋殿の夢幻兵器が見事に刺さったと思われます」


 「うむ。可成!主要な者を集めよ!迅速に行動致す!」


 森さんの出迎えで織田本隊が宇佐山に到着して俺も含め森さんや信治さん、青地さんなど他にも初めて見た人達も集合した。


 「まずは御苦労!ようやった!各地で離反する動きがあったがとりあえずは問題ない。其奴らは後々に処理する!今は浅井と朝倉だ!叡山に逃げ込んだか」


 「はっ。某の配下も確認しております」


 「おい!大橋!例のなんとかかめらとかいう物で見れないか?」


 「了解しました」


 「兄者!暁が準備してる間に伝える事がある!!」


 「信治か。どうした?またワシに小言を言うのか?」


 「違う違う!実はな…………」


 はぁ〜。空を飛んだ自慢か。後で乗らせろとか言うんだろうな。とりあえず比叡山に鳥型カメラを飛ばして・・・


 「織田様!準備ーー」


 「なんじゃと!?おい!ワシを出し抜いて空を飛んだだと!?信治めが!!!おい!大橋!!!この後ワシにもそのこぶらとかいう物に乗らせろ!目に物見せてやる!!」


 いやいや目に物見せてやる!って誰に見せるんだよ!?


 「はっ。構いません。カメラ映りました。このタブレットをご覧ください」


 オレは信長さんの隣に行き操作しながら見せた。


 「確かに浅井、朝倉、それと六角の旗印があるな。比叡山は奴らの肩を持つか。おい!堀!叡山に文を出せ!」


 「はっ。なんと書きましょう!?」


 「織田につくならば織田領の荘園を回復してやる。それと、それができないなら中立を保て!もしそれすらもできないのであれば焼き討ちにしてやると書け!」

 

 「や、焼き討ちですか!? かの場所は朝廷、帝(みかど)ですら手を出せない神聖な場所。そのような事は・・・」


 「おい。堀?ワシに意見を言うのか?可成!信治!言ってやれ!」


 「堀殿?本来であれば我らは死んでいたらしい。この大橋殿の機転により命がここにある。それに我らは損耗すら皆無だったが本願寺の蜂起により延暦寺の坊官までも立ち上がったのだ。だが生きている。まだお館様のために奉公できるのだ」


 「ワシも可成と共に大橋が宇佐山に参ると言った時、何故かと思うた。その時は本願寺や浅井、朝倉が連携するとは思わなかったからだ。だがそれも事実となった。これが大橋ではなく丹羽やサルからの言であれば退けていたであろう。もし大橋が居なければワシ等が討死したのも頷ける。夢幻兵器がなければあの大軍は退けられん」


 確かにオレがここに来なかったら皆死んでいたかもしれない・・・というか死んでいたんだよな。オレは空から難なく攻撃できたけど本当はヘリなんかないのだからな。


 「堀さん?見てください。この麓から続く場所を」


 そう言ってオレはカメラを比叡山にある家や古びた寺社を映した。


 「な、なんと!?何故女人が居るのだ!?ここは聖域ではなかったのか!?」


 「ふん。分かっておらぬな。此奴らは宗教と言う傘を被り好き放題しておる!自分達の我を通すために、殺生を禁じるのが仏教の教えであるのに、延暦寺は僧兵を蓄えるという矛盾を犯しておる!銭を蓄え女を漁り肉を食らう」


 半信半疑だったし、この映像では肉を食ってるところは確認できないが女が死んだような顔になっているのは分かる。しかも栄養失調か!?ってくらい細い若い女の子だ。


 「分かりました。そのように文を届けます」


 それからは大変だった。信長の空を飛びたいという事でだ。圧倒的不利な状況から圧勝となり浮かれていたのだろう。捕まえた朝倉景隆は交渉に使えるとの事で宇佐山城の牢屋に入れられている。


 サンダーボルトは一人乗りなためオレはCH47チヌークを出した。


 「おい!暁!何でもう一つへりこぷたーを持っているんだよ!これで兄者も空を知ってしまうだろ!?それに俺が乗ったこぶらよりそれの方がかなり大きいではないか!?」


 「え、いや・・・そう言われましても・・・」


 「ふん。信治めが!ワシに勝とうなんぞ1000000年早いわ!貴様はそこで指咥えて待っておれ!」


 このCH-47チヌークとは攻撃ヘリではなく輸送ヘリの区分だ。ゲームでは兵糧を運んだり、オートモードで戦をしていた人員や物資を瞬時に運べる課金者なら皆持っていたヘリだ。


 何故このような輸送ヘリを出したかと言うと、青地さんや、はたまた各務さん、森さんまでも乗ってみたいオーラが出ていたからだ。


 「さて・・・私がこの大型ヘリを出した意味を教えましょう。乗りたい人!皆乗せます!!!」


 「「「「「オォォォォーーーーー!!!」」」」」


 「チッ。ワシと信治だけが空を知るであろうと思っておったが仕方あるまい。森!青地!各務!堀!犬!河尻!お前らだけだ!」


 「と、殿!!!ワシは!?ワシは乗らないのでありますか!?」


 「太田はこのワシの勇姿を貴様の好きな書物にでも書いておれ!」


 「あのう・・・言いにくいのですがまだまだ乗れますよ?」


 「ふん。今ワシが名前を呼んだ者!お前達の下の者2名ずつ選抜しろ!早く致せ!」


 「小雪も乗ってくれるか?」


 「クスッ!畏まりました。なんか世界戦を思い出しますね?」


 「あぁ。確かに雰囲気似てるかもな。大型アップデート5日にして削除されたっけな」


 世界戦とはその名前の通り。フリーシナリオでの世界をかけた戦いだ。事前に好きな国を選びリアルタイム時間で戦闘を行い各地へ攻め込む戦の事だ。


 事前に好きな国を選ぶと言っても基本的にこのゲームをしていた者は日本史が好きな奴ばかり。参加者の92%が日本を選ぶという圧倒的な戦略だった。しかもその日本軍の中には圧倒的猛者(廃課金者)しか持つ事が許されない原子力潜水艦を持っている者も居たのだ。


 オレはって?オレは当たらなかったんだよ!その副産物で漁船を大量に持っている。


 「負けるはずもない戦でしたね?あの時出撃前のチャット欄がこんな感じでしたね」


 「そうだな。運営は長い時間世界戦をしてもらうつもりだったがリアルタイム1時間で日本が世界制覇してしまったからな」


 「はい。それでリセットして更に国選びをプレイヤーにさせて5日戦った結果、最終的に日本を選ぶプレイヤーが98%になりましたからね」


 そう。この世界戦アップデートは大失敗だったと思う。日に日に繰り返される戦。どんどん日本が強くなるのだ。結果、日本以外を選ぶプレイヤーが居なくなったのだ。それでこのアップデートは無かった事にされたのだ。


 「懐かしいな。まあとりあえず乗ろう!」


 「クスッ!了解しました!」


 「織田様!コックピット・・・この前方には私と後一人しか乗れません。どうぞ、前に」


 「うむ!ワシが乗るほかあるまい!皆の者!小雪の言う事を聞くのだぞ!!」


 「おい!青地?どうしたのだ?具合でも悪いのか?」


 「ななななんともない!こ、これは武者震いだ!」


 いや猛将な雰囲気・・・実際かなりの猛将だが空が怖いのか!?


 「ヒッヒィ〜!!」


 いや皆の舎弟の人達もブルッてるのかよ!?


 「フッ フッ テスッ・・・みなさん聞こえますね?今から飛び立ちます。小雪?開閉ボタンとか皆が押さないように気をつけてな?」


 「了解しました!」


 ヒューーーーーーーーーーーーーー


 飛び上がった瞬間、信長さんは歓喜で我を忘れているくらい喜んでいる。


 森さんは腕を組んで黙っている。各務さん利家さんは窓を見ながら目を見開いている。堀さん河尻さんはキャッキャしている。


 青地さんは・・・目を瞑り何か呟いていた。


 「南無阿弥陀南無阿弥陀南無阿弥陀南無阿弥陀」


 いやいやこえーよ!!!これは然う然う落ちたりしねーよ!!


 さて・・・織田家、家臣を乗せた遊覧飛行はどうなる事やら・・・

 

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