勝ち鬨を上げよ!
着陸して機体をインベントリーに収納した。皆がすぐに近寄ってきた。気付けば佐助達も居た。
「お!暁様!A-10サンダーボルトを出したのですね!あの勇姿はカッコ良かったですぜ!」
「暁様!お帰りなさい!戦果の方は・・・いえ。なんでもありません。ご無事で帰って来て何よりです」
「うん。小雪?佐助?ただいま。一応戦果の方は大だと思う。こんな圧倒的なまでの力があるのだから敵は今度こそ為す術なくだったと思う」
「おう!暁!帰ったか!っておい!元気ねーじゃねーか!?どうした?」
「いえ、すいません。また後程二人の時にでも。とにかく・・・少数は残っているかもですが敵は比叡山の方へ逃げていきました」
「・・・分かった。城に戻ろうか」
「おい!朝倉はどうなった!?教えろ!どうなったのだ!?」
「逃げたよ。半分は撃ち殺したけど」
「貴様は鬼か!?半分も殺しただと!?」
「暁様?聞かなくて良いかと」
「小雪?大丈夫。ありがとう」
「ふん。女に心配される男に我らが負けただと!?信じられぬ!」
俺はこの一言にキレそうになった。男尊女卑な世界。それは分かってはいるが他人に小雪を馬鹿にされるのは許せない。
俺は思わず朝倉景隆を蹴ってしまった。
「グハッ・・・。ふん!大方、お前の嘘も入っているだろう!半分もやられるはずがない!どうせワシは斬首だ!殺れ!」
その言い方にセバスチャンに改造してもらった太郎太刀を抜いてしまった。
「おい!暁!落ち着け!この者は兄者に出さねばならん!何に怒っているかは分からないがまずは刀を置け!」
「そうです!暁様!こんなつまらぬ者なんか斬らなくとも良いかと思います!」
「暁様!そんな怖い顔しないでください!」
「後は森隊の皆に任せて城に戻りましょう!?」
「こんな激情家な奴に我らは負けたのか・・・だが・・・」
「貴様!暁様のお情けで生かしておるものを偉そうにーー」
「佐助?やめておけ。帰ろう。信治様?我が儘言ってすいません。お願いします」
「うむ。おい!森隊の・・・お前は井戸だったな?」
「はっ。覚えていただきありがとうございます」
「お前が責任を持ちこの者を連れて参れ!じきに兄者も来るであろう!勝ち鬨を上げよ!我らの勝ちじゃ!」
「「「えいっ!えいっ!おぉぉーーー!」」」
「「「えいっ!えいっ!おぉぉーーー!!」」」
俺は晴れない気持ちで城に戻った。勝ちは勝ちだがなんだかスッキリしない。
この日の夜に一応警戒できる人数だけ残し主要な人だけで夜飯を食べるようになったが皆と俺は対照的だ。
「ははは!まことめでたい!まだ停戦したわけではないが愉快!愉快!何倍もの敵を追い返したぞ!」
「そうじゃ!さあ皆今日は飲めや!!ははは!」
「可成?悪いな。少し暁と席を外す」
「うん?あぁ分かりました」
俺は信治さんに促され城の2階の何もない部屋に連れて行かれた。
「ずっと元気がないが何かまずい事でもあったのか?」
「すいません。なんて言えばいいか分かりませんが・・・」
俺はサンダーボルトに乗り攻撃した事を細かく言った。敵が為す術なく俺にやられる一方的な攻撃を前に俺の方を向き祈る奴すらも居たが無慈悲に俺はその人達を殺した事。これが許されるか分からない事も。
「他にやり方があったのかもしれません。もちろん躊躇すればこちらがやられるかもしれないというのはあります。けどこれは違うような・・・虐殺のように思い・・・」
「そんな事か。優しいな。だがその感情は正しい。何も思わず我らに歯向かう者全てを殺せばそれは独裁者となり近習には咎める者を置かなくなり破滅となるであろう」
「いやそこまではーー」
「聞けッッ!!!大切な事だ!俺が他人からヘコヘコされるのが嫌いな理由がそれだ!言いたい事は言えば良い!俺にだって間違いはある!兄者にだってだ!だが兄者は近寄らせない畏怖を発しておる!俺が再三に渡り注意しているのだがな」
この人と信長さんが話してるところは見た事ないけど中々に凄い人だな。
「まあ兄者の事はさて置き、このまま逃げる者を暁が持っているまだ見ぬ兵器で殺すと言うのなら俺はお前を殴ってでも止めよう。回りの者は暁に恐怖し従いはするであろうがそんなものは長続きせぬ。つまらぬ世になるだけじゃ」
「つまらぬ世ですか?」
「兄者は日の本を統べる方。恐怖に塗れた世界なんぞ見たくはない!この辺は羽柴殿と俺の意見が合うのだ。今度ゆっくり話そうぜ?まあ、暁が悩んでる一方的な殺しの事はそんな深く考えるなよ?」
「そう言われましても・・・・」
それから信治さんは嬉しい事を言ってくれた。実はこの信治さんも森さんから史実では亡くなる事を聞いていたらしくそれを俺が止めた形になったわけだ。
やはり権力者の人でもあるから中々本音を言える人が居ないが俺とは話やすくこの人の死生観なんかも言っていた。
「死ぬのは怖くないが無駄死にはしたくない。ましてや敵の手に掛かり死ぬのは御免だ!だが暁が出す色々な兵器、飯、すずという女子を見て死ぬのが惜しくは思う」
「え!?そんなにですか!?」
「あぁ。これは、皆そうだと思うぞ?まあそんな事は良い。朝倉の仕置きは兄者が決める事ではあるがそもそも再三の将軍の要請を無視し名門だかなんだか知らぬが言う事を聞かなかったのは朝倉の方だからな。暁が一方的に敵を殺した事は俺のような織田の血が流れてるならば手放しで喜びたいくらいだ」
「何でですか?」
「岐阜に帰り兄者から朝倉からの書状を見せてもらえ。織田を田舎大名だ、田舎侍だ、運が良かっただけで実の実(じつのみ)もない男だと散々馬鹿にしてきた奴等だからな」
意外な事実だ。無視していただけじゃないんだな。
まあ、そんなに落ち込む程ではないが今後余程の事がない限りサンダーボルトは封印だ。抑止力として飛ばすくらいにしよう。圧倒的な戦力、兵器を見せ戦う前に勝敗を決める作戦でこれからいこう。
「とりあえず・・・俺は本来の歴史からあなた達を救いました。今後俺の知る歴史とは変わっていく事でしょう。信治様?色々ありがとうございます」
「ははは!調子は少し出たようだな?さぁ、戻って酒を飲もうぜ!梅酒を俺も飲んでみたいのだ!あっ、可成には内緒だぞ?」
本当にこの人は嫌いになれないな。信長さんより話しやすい人だ。
この日は皆で飲み明かした。部屋に小雪と2人きりなった時、小雪は俺に何も聞いて来なかったが察してくれているとは思う。寝る前に一つ二つだけ質問をした。
「小雪?俺はやりすぎたと思うか?」
「いいえ。どちらともいえません。必要な事だったと私は思います」
「そうか。完璧に歴史を変えた。信長さん本隊が到着する前に浅井、朝倉軍を追い払った。秋山の軍は見当たらなかったがこれからどうなるか予想もつかない。だけど、もし俺がまた同じように圧倒的な兵器で虐殺紛いの事をしようとすれば・・・止めてくれるか?」
「はい。もしその必要に迫られた時今度は暁様1人で実行はさせません。お側に居なくてすいません。私はいつでも暁様に着いていきます」
「はは。ありがとうな?けどダメな事はダメと言ってくれよ?」
暁様をこんなに考えさせる程、敵は弱かったのね。けどもう暁様を悩ませる事はさせない!私が必要な殺しは引き受ける。秋山・・・攻撃して来ないから手は出していませんが後方からずっとこちらを窺っているようですね。
隙あらば出張ってくる気はしましたがサンダーボルトを見ても信濃まで帰らないと・・・。意外に肝が大きい人間か、はたまたただの馬鹿な人間か。明日挨拶でもしてこようかしら?
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