魔改造 岐阜の町

 それから一ヶ月の間は色々忙しく動いていた。まず国友さんを慕い集ってきた人達だ。弟子入りしたいとかなりの人が来た。最初は俺が面接に似た事をしていたがキリがないので暇そうにしていた喜助と佐助にお願いしたのだ。


 「えぇ〜!我は戦う専門職だ!」


 「へぇ〜?そうやって言うんだ?国友さんは今やスプリングフィールドなんかも作っているぞ?喜助や佐助がアドバイスすればお前達の大好きなドイツの15センチカノン砲なんかも作れるかもな?」


 と、言えば速攻で陥落した。


 「ククク・・・我の頭脳を欲しがるか」


 「ククク・・・我が考えうる武器を作る者がいるのか」


 と黒歴史全開になりこの2人に任す事にした。


 続いて牧場の方は大杉さんが四苦八苦しながら頑張っていた。まず牧場を超絶拡張し、岐阜に居る全ての馬を俺達が面倒見る事になったのだ。


 馬の面倒見たりする事は下働き程ではないが格の低い人がする仕事らしいが俺達は進んで引き受けた。周りがなんと言おうが俺が気にしないからもあるが、天上天下唯我独尊な信長さんが俺の館にほぼ毎日出入りしているからだ。カレーを求めて。


 それはさておき、この牧場横に射撃演習場も作った。普段から鉄砲、大砲の音に慣れさせれば戦の時も敵の馬は驚くだろうが味方の馬は平常心で動けるようにだ。


 そして、鼻の良い羽柴さんは家臣の堀尾吉晴という人を寄越してきた。俺達を手伝いたいとの事で派遣されてきたため大杉さんの下についてもらっている。牛を〆る所は俺も見てはいないが、この人は嫌な顔せず自分の仕事を全うする人だ。


 学の方は小雪と俺。さきさん、黒夜叉隊、大杉さん達の畜産班、国友さん達 鍛治班 久兵衛さん達 給仕班なんかに教えている。とりわけ急いで覚えさせた事は12進法。


 まず数字の概念を覚えてもらわないと何も話ができないのだ。特に日にちと距離なんかは月の上弦、下弦で観測していたため俺は分からないから、とりあえず7月に入った時点で1日を始まりと、1日を24時間と制定した。

 これは信長も居る時に懇々と言い正確な日にち、時間を決めると間違いが怒らず作戦も間違いが起こらないと言いくるめた。


 「ややこしい!だがお前の言ってる事も分かる!おい!犬!貴様は分かるか?」


 「はい!この時計なる物が9なる数字を指しているため今は午前11時ですね!」


 とこのように9を指してるのに何で11時になるのか意味不明な回答したりと、最初は混乱していたが1週間もすれば信長が強権を発動して無理矢理『岐阜時間を標準時間と制定する!』と言い、目覚まし時計をインベントリーにあるだけ出して色々な人に渡した。

 ゲーム内で何に使うか分からない物がこんなに役に立つとは思わなかった。


 そして、セバスチャンだ。セバスチャンは今や俺より目立っているんじゃないかと思う。弟子の国友さんは主に銃火器を作っているが、セバスチャンはまだまだ戦の主力の槍や刀なんかを作っている。

 信長の刀をヒヒイロカネで鍛えた事で噂が噂を呼び色んな所から修理や打ち直し、受注が100件以上きているそうだ。


 「セバスチャン?大丈夫なのか!?」


 「大丈夫よぉ?暁ちゃんのようにあーしもこれが面白くて面白くて。色んな人の刀と会話するとその人の使い方が分かるのよ?」


 「へぇ〜。それは良かったよ。それにしても一番変わったのはセバスチャンだな」


 「そうかもしれないわ。暁ちゃんの横に居ないといけないとは思うしそれは変わらないわ。けどこの世界で好きな事好きなようにできるのがこんなに面白いとは思わなかったわ。ありがとうね?暁ちゃん」


 「あぁ。セバスチャンもこの世界で伝説の鍛治師として名を残せ。俺と違い寿命なんかないと思うが好きに生きろ」


 「ふふふ。そうさせてもらうわよ?暁ちゃん」


 こうやって人が来ると自然と寝泊まりする場所がいる。岐阜はかなりこの時代では栄えているが宿場町ではないため城下に宿屋なんかはない。飲み屋ぽい所が軒先を貸したりしてるくらいだ。だから俺は信長に宿屋を作ろうと提案した。


 作ると言ってもインベントリーに塩漬けになっているジオラマ家なんだが正直かなり残っている。てか、下級のジオラマ家なのでゲームで俺は使う事がなかったのだ。


 「ほう?すぐ家を出せるのか?宿もか?」


 「そうですね。建て直しなんかはできませんがそれなりの家ではあります」


 「よかろう!やってみせよ。だが、宿屋を始めとする人間はどうするのだ?」


 「そこは私の配下に初老の人が居たの覚えてますか?勘助って名前の人です。あの人が今人材を探してくれています」


 「全て大橋家で賄うという事か?」


 「いえ、織田様配下の方なんかも派遣していただければ助かります。むしろ織田様自身が経営してくれた方が助かります」


 「うむ・・・。奇妙!入ってまいれ!」


 おっ!?信長の子供か?初めて会うな。


 「失礼致しまする」


 「ワシの倅で、織田の世継ぎだ。挨拶せい!」


 「はっ。奇妙丸と申します。若輩者ですがよろしくお願いお頼み申す」


 「大橋兵部少輔暁です」


 「大橋左衛門尉小雪です」


 「うむ。奇妙!この2人は今後も織田に必要な者になる!まだまだ新参者だが侮るな!」


 「はっ!」


 いやめっちゃ素晴らしい子じゃない!?暗愚とか言われてたと思うけど全然そんな事ないと思うんだが!?


 「ワシが日の本は平らげる。そのワシの後に必要な者は戦の強い者ではない。此奴には銭の動き楽市楽座とは何かを教えねばならぬ。後は分かるな?」


 はい!ぜっんぜん分かりません!!


 「私達が奇妙様を補佐するとの事でお間違いないでしょうか?」


 「さすが小雪だ。貴様に過ぎたる者とは小雪の事だな」


 軽くディスってくるなよ!?ってか奇妙君の補佐か。宿屋を奇妙君の功績にするようにしようか。そして、浅井を殲滅した後に元服させるのかな?


 「精一杯補佐させていただきます」


 「足りない物があればその都度言え。それとワシの倅だと遠慮はするな!厳しくいけ!下がって良いぞ」


 とこのように日々忙しく過ぎた。ジオラマ家だが実際に使うのは宿屋としてだ。ジオラマ街ガチャというのでその昔当てた物だ。往来の人も奇妙君も国友さん達も驚いている。


 とりあえず場所としては俺の館は城から東側の何もない所に出し、更に東、東にと拡張して長良川手前まで拡張しているためこれ以上は無理だ。


 反対側に出してもいいが俺の館と形が違い、浮いてしまうため城下町の一番東側、俺の館に近い所に出した。


 「大橋様、この宿屋を私が差配してよろしいのですか!?」


 「そうですね。奇妙様が主となり運営します。基本は私と妻の小雪が補佐致します故ご安心を」


 「が、頑張ります」


 「そう気負わないでください。まずは座学、算数を教えましょう。それからです。それにまだ人も来ていないのでもう少し先になりますよ」


 勘助がどんな人連れてくるかは分からないが人が居ない事には始まらない。それに奇妙君も四則演算くらいは教えないと無理だ。


 それから1週間は俺の館に寝泊まりさせ色々教えた。2日目までは物珍しさに興奮したようであれこれ聞いてきたが3日目にもなると慣れたのか自分のやる事、勉強に集中し出した気もする。


 そして、それは突然告げられた。


 プルルルル


 『ワシだ。三好三人衆が懲りずに砦を築いておると情報を得た』


 いや横の館に居るんだから電話じゃなくてもよくないか!?しかも『ワシだ』って・・・言われなくても分かるから!!


 「はい。戦準備でしょうか?」


 『いやまだ早い。早いがワシは此奴等は許さぬ。好き勝手し、また京を混乱せしめんとしておる。国友銃の量産はできておるのだろう?』


 「単発銃なら相当数あります。連射銃は数丁程です」


 『相分かった。纏まればまた言う』


 史実通りだな。これは一度俺が力を見せる時じゃないか?とてつもない武器で攻めれば一度止まるのじゃないか?確かこの流れで森さんが・・・・いや。宇佐山は仮に起こっても俺が止めてやる。


 俺は多目的ルームに黒夜叉隊、小雪を集める。


 「下知があった。三好三人衆と言う阿呆がこのクソ忙しいやりたい事が山程ある時に攻める素振りがあるらしい。織田様もご立腹です」


 「殺っちゃいます?」


 「そうだな。少し大人しくし過ぎたな」


 「そうですね。暁様に恩を返さねばなりませんからな」


 いや好戦的だな!?頼もしいけどそんなに戦いたいか!?


 「摂津の野田と福島という場所に砦を築いているらしい。これはもう止められないと思う」


 確か史実でも既に完成してるだろうと思うし。然程脅威に感じないからな。それより宇佐山だ。


 「暁様?多分宇佐山ですね?」


 「さすが小雪。みんなも聞いてくれ。大事な事だ」


 俺はこれから近い内に起こるであろう戦の事を言った。俺がこれから行おうとする事は本来俺が知っている歴史と変わってしまい、前後不覚にはならないだろうが、歴史のアドバンテージは失われる事。それにより何が行われるか分からなくなる事を言った。


 「どんな事があろうとも黒夜叉隊は暁様の部隊です。それに我々もかなり鍛えております。セバスチャン様の飯でかなりの重い物を持てたり、走るのも早くなりました」


 「そうそう!すずは暁様のコレクションのウィンチェスターM70で200メートル先の的を当てれます!」


 え!?いつ持ち出したんだよ!?聞いてないぞ!?


 「それは誰が許可したのかな?すずちゃん?怒らないから言いなさい?」


 「あーしが許可したわよ?」


 いや、セバスチャンかよ!?


 「この、すず嬢と風華嬢は狙撃の腕があるわよ?あーしが訓練させたのよ?文句あるかしら?」


 「いやないですはい」


 「その2人にプレゼントよ?レミントンM700よ?これはウィンチェスターM70より精度、威力共に上昇しているわ。暁ちゃんをちゃんと守るのよ?」


 「わぁ〜!これで遠くから敵を狙撃できますね♪」


 「セバスチャン様!ありがとうございます!!!」


 すずちゃんに狙われる敵よ・・・可哀想に・・・嬉々としてスナイパーですか・・・。


 「さて・・・ここで俺の考え。他言無用で。野田、福島の砦はこの際放置。その手前の、榎並城、古橋城が先日三好三人衆により落とされた。それを俺達の隊で奪い返してみないか?」


 「摂津という事は平城・・・できぬ事もありませぬな。いやできますな」


 「とりあえず1日小雪と考えてみる。とりあえず動けるように秘密裏に装備を集めておいて。セバスチャンも、行軍飯やらを秘密裏に頼む」


 「分かったわよぉ」

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