ははは!最高の劇(ショー)と思わんかね!?

 バッバッバッバッバッバッバッバッバッ


 「河尻様!敵に見立てた的が粉々に!」


 「ははは!これは素晴らしい!最高の劇と思わんかね!?」


 いやいやお前もムス○大佐かよ!?


 「精鋭と呼ばれるだけあって初めての銃でもみなさん的を狙うのが上手ですね?」


 「そうですな。我々は幾分、赤母衣衆より歳食っておりますがその分、他の鉄砲隊の奴よりは腕が達者だと自負しております」


 河尻が言った言葉は決して驕りではなく、本当の事だった。事実、30人全員に一人一つの的を用意し、約50メートル離れた場所から単発モードにして撃たせれば10発中1番命中率が悪い人でも7発は当てている。これには俺も小雪も脱帽である。


 「撃ち方覚えるのも早いし、分解も早いし教える事がないんですけど?」


 「ははは!そう言われなさんな!我らは若い者に負けたくないとそれはそれはもう朝から刀の鍛錬に始まり……角力やら……昼には………夜の座学………」


 この河尻秀隆って人は確か猛将だろう!?こんなにお喋り好きだったのか!?


 「河尻様!悪い癖が出ております!大橋殿も困っておいでです!」


 「おぉ!?すまぬ!歳を取れば話が長くなるのだ!許せ!」


 「はは。とりあえず時間ある時は極力撃ってください!後、分かっているとは思いますがーー」


 「大丈夫だ。この河尻秀隆・・・命を懸けて下賜していただいたこの銃は誰にも渡らぬように致すし味方にも秘密にしておく」


 「分かりました。弾は予備を含め相当数用意しておきます。気持ちいいからと連射しすぎないように!」


 「分かった。ではまたここを使わせてもらうとする!皆の者!大橋家に礼ッッッ!!!」


 「「「「ありがとうございました!!」」」」


 いや黒母衣衆は体育会系かよ!?気持ちいい挨拶だな!?


 それから次の日、本当に六角と柴田勝家、佐久間信盛と戦になったそうな。ただ、苦戦する事もなく撃破したと。その時の柴田勝家の働きが比類無き働きで敵の六角兵、甲賀兵、雑賀兵など単独で800は討ち取ったとも。


 「との事です!」


 ジュルジュルジュル〜


 「さすが情報通の半兵衛さんですね」


 「情報は大事ですからな。あっ、せばすちゃん殿?お代わり貰えますか?」


 この竹中半兵衛・・・別にいいんだけど本当に名軍師なのだろうか。館に来てクッソ甘いコーヒー飲んで俺とだべって・・・。


 ジュルジュルジュル〜


 「お土産はいかがでしたか?聞けばセバスチャンからも色々貰ったみたいで?」


 「そうそう!その事です!あんなに貰ってはお返しが大変で、いねと考えていたのです!生半可な物は暁殿は喜ばれぬと思い聞きに参ったのです!」


 「いやいやお返しとかいらないすよ?別に俺からすれば大した物ではないので。ただ、ニューナンブM60これだけは気をつけてくださいね?甲冑くらいなら多分貫きますので護身用にでも」


 「いやそういうわけには・・・」


 「では落ち着けばこの世界で生き抜くために色々してみたい事があります!そのお手伝いをお願いできますか?成功すれば織田様より金持ちになるかもしれませんよ?それに、中国・・・確か今は明だったかな?」


 「明がどうかされましたか?」


 「明の人間がよく日本の粗銅とか安値で買い取ってませんか?」


 「あぁ〜!なんか堺の方であの馬鹿達はただの廃棄されるような物を引き取ってくれ堺は助かっておると言われてますな!それが?」


 「馬鹿は堺の人達ですよ。日本の粗銅には金が含まれています。その抽出方法などを教え、この時代の人達で色々取り組んでもらいたいのです」


 「え!?そんな事が!?糞!明の野郎!許せん!」


 名軍師が聞いて呆れる。単純すぎだろ!?


 「俺がしてもいいけど正直俺は金すらも作れるからそういうことはこの日本の人が自分達で試行錯誤してするのが一番。失敗を分からず成功しか知らなければ何も生まれないのですよ」


 「ほうほう。ではその仕事に私をと?」


 「まあこれだけではありませんが戦がなくなれば武器や防具の需要は減り娯楽や食に傾きます。その時、武家は立ち行きがしんどくなるでしょうね。他にも食い扶持があれば良いと思いませんか?」


 「分かりました!いつになるかは分からぬが私が引き受けましょう」


 俺は本当は面倒臭いからこんな事するつもりはなかったが、セバスチャンも自分の事を考え家の横に小さな加工場を作り初めている。


 小雪は基本俺の意見を尊重しているがどうせなら俺の名前をこの世界線に残したいとの事で捨て子や口減らしなんかを引き取り教育をし、豊かな世界にしたいと言っているから俺もどうせなら何か一つ誇れる事をしようと思い考え立っただけだ。


 人はちゃんと一から育てないといけないが俺のインベントリーで眠っている数々のジオラマ模型街(産廃)を使える時が来るのかと少しワクワクしている自分も居る。まあ、まずは黒夜叉隊を一人前に育てよう。


 それから約1週間は各々が苦手とする訓練を集中して行った。けど1番頑張ってくれたのはなんと、セバスチャンだ。


 セバスチャンは日々の洗濯やら食事、掃除、簡易的に作った加工場にて黒夜叉隊に短刀を作ってくれていた。俺にすら内緒でだ。この加工場は俺すらあまり入られたくないみたいなので俺は入った事がない。ただ、煙突から物凄い煙が出てる時もある。


 燃料は松炭らしく錬成機でかなりの量を作っていた。松炭の原料はアカマツとナラという広葉樹で岐阜の山に普通にあるみたいで一人で取りに行っている。


 「さて・・・みんな戦車の扱い、銃の扱いは慣れたかな?」


 「「「はっ!!!」」」


 「戦車はまだ少し先の戦だけど例の作戦。長比、苅安尾城を落とすぞ!俺は今から織田様に伝えてくる!まず問題ないだろうと思う。出発は明日。今日はしっかり寝て明日に備えるように!!」


 俺は小雪と二手に分かれて作戦を遂行するが、振り分けは、


 《俺、すず、みお、千代女、黒川》


 《小雪、風華、望月、市華、彩葉》


少数精鋭だ。俺はしんどいのと、この時代ではチートがあるから参加しなかったが意味の分からない訓練もしていた。腕立て伏せや腹筋は当たり前。懸垂やら足にビート板を付け水の上を歩く訓練とかだ。俺が忍者とはと未来のイメージを言ってからこの訓練が始まった。


 最初俺は辞めさせようとしたがこの黒夜叉隊、主に女の子達は俺より小雪とセバスチャンに心酔してるようで必ずやり遂げると言い、風華ちゃんなんかは本当に水の上で歩けるようになったのだ。いや恐ろしい。ただ、使える技か?と言えば使えない。


 そんなこんなで城に登城し、小姓の堀さんに案内された。


 「入れ」


 「お久しぶりです」


 「おう。もうじきだ。柴田がやってくれた。して、何用じゃ?」


 「戦車兵の訓練、黒母衣衆の訓練全て完了致しました。連射できる銃は見ましたか?反応がなくて・・・」


 「なんじゃそれは?ワシは岐阜銃しか知らぬぞ?」


 え!?まさか河尻は信長にも秘密にしてるのか!?ダメだろ!?ほら見ろ!機嫌が悪い時の扇子パタンパタンしだしたじゃないか!!?


 「河尻を呼べ!今すぐじゃ!!」


 「お待たせ致しました。何用でしょうか?」


 「何用かじゃない!貴様ワシに隠してある物があるそうだな!?出せ!」


 「・・・・・・・」


 「聞こえないのか!?」


 いやなんで無言なの!?


 「これは大橋様と約束した物故、お館様にも言いませんでした。それでも出せと申すなら某はここで切腹致しまする。男の約束は絶対。某はそういう人間です故」


 いやマジでこの人なんなの!?そこまで頑なにならなくていいんだけど!?


 「河尻様!織田様には見せていいから!いや今すぐ見せてください!!!てっきり私は知ってるものかと!」


 「いやこれは失礼した。誰にもと言われたので某は誰にも、もちろん黒母衣衆全員も守っておりまする」


 いやなんとも・・・けどさすが黒母衣衆だ。


 「ふん。約束ならば仕方ない。少々癪に触るが秘密を守るとはそれくらいせねばならぬな。不問にする」


 「はっ。それでは・・・これになります」


 「ほう?変わった形だな?これも銃か?」


 それから城の庭に行き試し撃ちをしたがこれまたいつもと同じ驚きだ。


 「素晴らしい!また一段と強くなっておる!しかも弾込め作業がないとはこれは圧勝できるのではないか!!貴様はこれをこの黒母衣衆に教えたのか!?」


 「はい。一通りは全部教えました。むしろ最初から優秀だったので楽でした。これで万に一つもやられる事はないでしょう」


 「その事じゃが・・・貴様が言った貴様を前線に出す話はなしじゃ」


 え!?この人なに言ってんの!?俺が戦車出せば一撃で試合終了になるんだぞ!?いや、戦だった。


 「何か考えがありますか?」


 「これはワシの矜持だ。貴様はさぞワシに落胆するであろうが聞いてくれ。河尻?下がれ」


 信長が言ったのは義理だが兄としてのプライド。野良田の戦いで六角から独立した浅井長政は信長に例えられる事が多いらしい。それが気に食わないのと、真正面から相対して蹴散らせる自信。これがどうしても俺を最初から使う事を邪魔してしまうと。


 まあ、人は失敗して強くなるから強ち否定はできないな。まあ、史実でも負け戦じゃないし信長は信長の考えがあるからな。しょうがないか。


 「分かりました。まず大丈夫だと思いますがやられそうなら独断で俺が出ます。浅井と私は会った事ありませんがお二人にしか分からない事があるのだと思います。存分に」


 「すまぬ。つまらぬ理由でな」


 「男には絶対に引けない戦いがあるのは分かります。織田様には今なのですね」


 「ふん。小癪な物言いよ。だが的を射ている」


 「それと、長比、苅安尾城に私が部下の初陣をさせてやろうと思いますがよろしいですか?」


 「うん?そこは羽柴に調略を任そうと思っていたが?」


 「1日で私なら落とせます。お願いします」


 「ふん。本格的な戦は初めてじゃな?貴様が言い出した事ぞ。この意味を忘れるな。許す!」


 「はっ。ありがとうございます!」






 さて・・・彼奴がどのような戦をしどのように育てた者を使うのか見物致すか。万が一にでも彼奴が危うくなる事が・・・いやあのせんしゃなる物があればそれはないであろうな。あれはワシにですら攻略の糸口が見つからぬ。

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