黒夜叉隊発足

 義弟も中々やる奴だ。この乱世にてワシを倒し名乗りを上げんとしておる。正面から相対するのが矜持じゃ。だが13段構えの11段まで破られると・・・。


 彼奴の方が優れた武を持ち策を持ち兵器も持っていよう。じゃがワシにもワシの矜持がある!何もかも彼奴に頼ってばかりじゃいかん!


 「誰ぞある!」


 「はっ!」


 「準備急げ!作戦は変わらぬ!」


 「御意」




 「ふぅ〜。疲れた!」


 「ほほほ。小雪?風呂とはこんなに良い物とは妾知らなかったぞ!」


 いっけね!濃姫様が居るの忘れてたわ!俺は思わず頭を下げた。


 「苦しゅうない!殿はお帰りになったのかえ?」


 「はい。考えを纏めると言って戻られました」


 「ほほほ。何を悩んでおられるのか。素直に良い物は褒め取り入ればいいだけの事。では、妾も帰るとしましょうかのう。大橋殿?邪魔をした。せばすちゃん?」


 「な〜に〜?濃姫ちゃん?」


 「ほほほ。妾は城の籠の鳥にていつ参れるか分からぬがまた来る故、次回は服飾の事なんぞ聞きたいのう」


 「畏まり〜!いつでもおいでくださ〜い!」


 やっぱ可哀想だな。もっと平和な時勢になれば自由に歩けるのかな?



 「フフフ。暁様お疲れ様でした!コーラです!」


 「うん!小雪ありがとう!多分オイ車の威力見たから俺達が姉川の前線になると思う。浅井に恨みはないけど瞬殺してやろうぜ!」


 「はい!巫女の人達はどう使われますか?」


 「そうだね。オイ車の砲撃手が足りないから人員を育ててほしい。それと何人か精鋭の人が来るみたいだからその人達にSTG44を渡し撃ち方とメンテナンスを教えようかと思う」


 「分かりました。では武器庫から準備しておきましょう。それと紙にも書いてメンテナンスを覚えさせましょう。史実では明日に野州河原にて六角が軍事行動し、柴田勝家と佐久間信盛がこれを撃退します」


 「へぇ〜!さすがだ。俺はその戦知らなかった」


 「ありがとうございます。続けますね。本来、京から織田様が帰る時も危なかったのです。朝倉本隊が近江まで出張ってきており南近江にて六角と挟撃を仕掛けて来る筈が暁様がこの世界に来たせいかは分かりませんがあの山道。千草超えで岐阜に帰りました」


 「そうだったんだ。なんも敵は見当たらなかったな」


 「本来ならあの二日後に岐阜に到着する予定でした。そして、浅井朝倉軍は赤坂周辺を放火し、国境の長比、苅安尾城というところで強固な陣を構築し待ち構えます。ですがこれは堀秀村、樋口直房を竹中様や木下様に調略され難なく陥落します」


 「うん。続けて」


 「その後織田様はすぐに長比に出陣したりと進軍します。ここでストップします。話は戻りこの調略で寝返る堀秀村です」


 「うん。確か秀吉の与力だが秀吉より所領が多く信長も改易の機会を窺っていた?とかだったよね」


 「御名答。羽柴様と竹中様の手柄は他で立ててもらいましょう。我らがこの二つの城を強奪します。巫女村の人達にもちょうどよい初陣です」


 「分かった。力技で行くか搦め手を使うかだけどどうする?」


 「まずは私達の装備に慣れてもらわないといけません」


 「まあ迫撃砲で蹴散らした後VXガスでも撒けば瞬殺だけどさすがにそれは酷いからな」


 「フフフ。ゲームみたいな考えになっていますよ!そうですね・・・迫撃砲は有りです!混乱に乗じて、スモークグレネードを投擲し巫女村の者にはデジタルスコープを装備させ銃で城内を一掃してもらいましょうか!」


 「オッケー!苅安尾城の方はどうする?別行動するか?」


 「そうですね。このくらいの規模の城で苦戦するような人達ではないでしょう。二方面同時作戦と致しましょう」


 「分かった。概要は俺が伝える。それと新しい部隊の名前を考える。そうだな・・・ゲームで俺が使ってた名前の部隊、黒夜叉隊なんかどうだ?」


 「え?黒歴史ですか?」


 いやいや真顔で言うなよ!?別にいいだろ!?男は誰だってカッコイイ名前に憧れるんだよ!!


 「(クスッ!)冗談ですよ!それにしましょう!全国に黒夜叉隊の名前を轟かせるのです!!」


 その後俺は特に何も仕事の指示を出していない元巫女村の子達を集める。


 「ある程度はこの館に慣れたかな?」


 「はい!ご飯は美味しくしゃんぷーなる物とあんな真っ白な石鹸で体を洗えるのは極楽です!」


 「そうです!何故湯が出るかは分かりませぬがここは甲斐とは大違いです!」


 「良かった良かった。俺は臭いのは嫌いだから風呂は咳病や何かしらの事がない限りは基本夜に入るように!それで・・・巫女村の人達と呼ぶのは面倒だしもう織田の人達だからあなた達に新しい部隊の名前を授けようと思う。黒夜叉隊。あなた達はこれから黒夜叉隊です」


 「「「おぉーーーー!!!」」」


 おっ!?反応は上々だな!?


 「そして明日から短期集中で訓練をしてもらおうと思う。大人の女性の・・・」


 「ふきと申します」


 「私は楓と申します」


 「ふきさんと楓さんね。あなた達はセバスチャンに付き学んで欲しい。医術の事、銭の事、自分達にできる範囲でいい。できなくても追い出したりしないし失敗しても怒らないから。料理なんか覚えてくれるとありがたい。あり得ないくらい給金を貰い俺が使わないと経済が停滞してはいけないからね?ははは」


 「「・・・・・・・」」


 なんだ!?この空気は!?ここはお前如きの銭で経済は変わらないだろ!ってツッコむところだろ!?


 「暁ちゃん?根本的に銭経済が分かってないと思うのぉ」


 「そうか。いや変な事言ってしまった。じゃあセバスチャン?この二人の事任せていいか?」


 「いいわよ?それとあーしも織田きゅんに頼まれた刀鍛治なんかもあるからね。加工場や服飾関連なんかもしてみたいからインベントリーの権限くれないかしら?」


 「そうだった!悪い!悪い!はい!今権限譲渡したからこれでアクセスできるぞ」


 「暁ちゃん?ありがとうね!あーしも色々自由になり自分のやりたい事が分かったわ」


 「へぇ〜!それはなんだ?」


 「あーしは大橋家で日の本一の鍛治師になるわ!」


 「はは!既に日の本一だと思うぞ!けどいい傾向だ!やりたい事あるなら色々してくれ!銭もたんまりあるから!二人をよろしく!」


 それから残りの人達を庭に連れて行き、小雪の班と俺の班に分ける。


 「まずはこの銃の撃ち方を見てほしい!ここが安全バー!これがここにある時は撃てないから!これを下げてマガジンを入れ、これをスライドさせる!そして相手に向けて撃つ!」


 ババババババババ!


 「ちょ、ちょっとお待ちください!少々分からぬ言葉がありまして、安全バーとはなんですか!?」


 あぁ〜!そこからかよ!いや、これは俺のせいだな。

それからまずは言葉を覚えてもらいたいが時間がないためこの銃に限り先に言葉を覚えてもらう事にした。


 1時間程経てばみんな分解して掃除して弾込めまでは難なく覚えてくれた。初めて見て触ったはずなのに優秀だな。いや初めてだからすぐにできるのか?


 「終わり!」


 ピッ!


 「風華が1番!56秒!」


 「もう!黒川きゅん!何やってるのよ!あーしのキスが足りないのぉ!?」


 「ま、間に合っております!黒川終わり!!」


 ピッ!


 「黒川さん1分15秒!」


 「終わり!」「完成しました!」「終わりました!」


 「よし!みんな1分30秒程だね!まあ早さは競ってないから別にいいんだけどね」


 「暁ちゃん?じゃあ何でこんな事させてるの?」


 うん?何でだろう?それはなんとなくだ!


 「なんとなく?銃に慣れてもらわないといけないし。まあ次は射撃に移ろう!小雪お願いできるか?俺は今からさきさんを迎えに行ってくる」


 「あぁ〜朽木さきね!分かりました!気を付けてくださいね!」


 俺は夕方すぎに岐阜を原付で出発して朽木館に向かった。何事もなく到着し迎えられる。


 「おぉ!大橋殿か!もう迎えに来られたのか!?先触れでも出してもらえればーー」


 「すいません。色々やる事が多くて今しか時間が取れなくて。あっ、作法もへったくれもありませんが結納のつもりです。銭しかありませんが役立てていただければ」


 「うん!?こんなにも!?この間まで何もないと言われていたではないか!?実はどこぞの国の子息か!?」


 「ははは!織田様に目を掛けていただいてるだけですよ!今は官位も従五位下 兵部少輔です」


 「いつのまにやら・・・大した男だ。さき?入りなさい」


 「はい・・・・」


 久々に見たさきさんはまた一段と美しく色鮮やかな着物を着て登場した。急いで準備したのか少し髪が乱れているような気はするがよく見ないと分からない程度だ。


 「大橋殿は今や織田家で重要な役割を担っているそうだ。小雪殿と上手くやるのだぞ?」


 「はい。本日はありがとうございます。朽木さき本日より大橋さきになりますがいつまでも朽木の事は忘れません」


 「うむ。良い!良い!吹けば飛ぶような朽木と違い織田は巨大だ。朽木谷からさきの幸せを願っているぞ。では大橋殿?さきをよろしく、お願い申し上げます」


 「はい。必ず幸せにします。それと私の新しく創設した部隊があります。行軍演習を兼ねて、落ち着けば岐阜の品や土産を持ってきます。それに今度私の館においでください。歓待致します」


 社交辞令ではなく本当の誘いの言葉を言い岐阜に戻る。そんなに遠くないし来ようと思えば来れるはずだ。帰りは装甲車に乗り帰る。綺麗な着物だし跨らすのは悪いし。


 道中この前ではあり得ないくらい密着してきた。どうも装甲車が怖いみたいだ。


 「暁さま・・・・目が開けられません・・・」


 「ははは!大丈夫だよ!まず館に着けば念の為医療カプセルに入り健康診断して美味しい物食べよう!きっとビックリするよ!」


 「は、は、はい!」


 小雪も愛おしいが違う愛おしさがあるな。いかん!いかん!こんな時なのに愚息が・・・。うん!今日は抱こう!

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